Subscribed unsubscribe Subscribe Subscribe

in between days

表参道で働くシニアのブログ

話題の電書「45歳からのアニメ入門」の編集をしたので、電書の編集ってどういうかんじでやったのかをまとめておくよ

安田理央さんが電書「45歳からのアニメ入門」を田口こくまろさんとの共著でキンドルから個人出版されました。おめでとうございます!

って他人行儀に書いてますが、じつは自分も関係者でありまして、クレジットにあるように編集を担当しました。

紙の書籍と違って、電書で、とくにKDPの個人出版となると、編集者が介在するなんてことはまあふつうはないでしょうし、どこに頼んでいいんだかわかんないし、コスト的にもペイしそうもないし、そもそも電書で編集って何するの? みたいな感じだろうとおもうので、せっかくの機会にどういうことをやったのかまとめておくことにします。

はじまりとかツールとか

安田さんが45歳からのアニメ入門をブログに書いてたのは今年の2月から3月にかけてで、編集作業を開始したのは4月7日。電書が出たのは8月7日なので、ちょうど4ヶ月かかりました。ただ、本業もあって安田本の作業は休日だけだったので、圧縮すれば0.5人月くらいかもしれません。

安田さんは電書を個人で何度か出したことあるけど、今回は試しに編集を他人に任せてみたかったみたいで白羽の矢が立ったもよおです。「電書にしたいんだけど、編集してくんないかな?」って相談を受けたときは、すごく嬉しかったです。

でも、電書をいちから作った経験はなくて、いろいろ試行錯誤したところはあります。けっきょくepubファイルを作ればよいんだなと合点して、epubのオーサリングツールいろいろあるみたいですけど、手軽さを優先して、「電書ちゃんのでんでんコンバーター」を利用しました。

EPUBを作成するウェブサービス作ったよ - 電書ちゃんねる

でんでんコンバーターの良いところは、テキストエディタさえあればMarkdownライクな簡易記法で編集できることで、たいへん助かりました。電書ちゃんねる さん、ありがとうございます。

編集ってなにしたの?

実際に、何をどうしたのか? 編集って作業はいろいろなレイヤーの作業がありますが、今回はもともとテキストがあって、それをフォーマット変換してるだけですから、やってるのはテキストエディタで文章に手を入れるということだけをしました。

どういったことをどれほど手を入れたのかは、もとの原稿がぜんぶブログで読めますし、編集結果はお手元の(まだお持ちでない方は下記リンクから入手した)電書ファイルを開いていただければ簡単にご確認いただけます。

45歳からのアニメ入門

45歳からのアニメ入門

それでは「構成」「校正」「電書化」の3つに分けてまとめてみます。

構成を整える

  1. ブログから該当のエントリーをコピペで保存し、順番に並べる
    • 4万字くらいだったので、紙の書籍にはちょっと足らないけど、電書にはちょうどいいくらいだったかもしれません
  2. 構成を考える
    • 通して読んで、話の流れがおかしいところはないか
    • 田口さんのブログとの掛け合いになるので、お互いが言ってることの順番は合ってるか、どこに入れるのが適切か?
    • 田口さんのエントリに、安田さんが追記で返事してる箇所の処理はどうするか?(どう処理したかは実際に電書を読んでご確認ください)
  3. 見出しを立てる
    • もともと付いてる見出しを変えたりもしてます
    • 例えば第一回、もともとは「「謎の彼女X」「まどか☆マギカ」「とある科学の超電磁砲」「とらドラ!」」という作品名の列挙になっていて、そもそもこの連載は作品名が見出しになってることが多かったんですが、初っ端からタイトル名だと読者は文脈がわからないだろうということもあり、ここは章の内容から「またアニメが好きになりたい」というタイトルに付け直しています。
    • 代わりに「まどか☆マギカ」「とある科学の超電磁砲」「とらドラ!」それぞれを使って、もともとなかった中見出し(なかみだし)を立ててます。その際に、作品名がどういう文脈で出てくるのかがわかるように少し言葉を足してます。
    • 田口さんのほうはそもそも「安田さんのアニメ修行+連番」というだけのシンプルなものだったので、なんかそれぞれ考えてます。
    • 中見出しは、けっこう立ててます。
    • 「付記 私が「謎の彼女X」にハマった理由」にも中見出し立ててますが、本文とは違う雰囲気で立ててます。本文は必要以上に説明するかんじですが、付記の見出しは思わせぶりにしてます。それぞれの文体にあわせてます。
    • 見直すと、これまんまやん、みたいなのもあってもうひと踏ん張りほしかったかんじでした(ふつうに本を作ってたときにも踏ん張りきれないことけっこうあったなあ)
  4. ブログならではの話法を修正
    • たとえば「昨日書いたように」などの表現は、電書にまとまってみると変なので、「前の章で書いたように」や「前述したように」に変更する。あるいはカットしてしまっても違和感なければカット。時制には注意。
    • などなどです

校正・校閲とか

  1. 用字用語の統一
    • ふつうに記者ハンドブック片手に一括置換
    • すすめる/勧める/奨める など話者と文脈で敢えて統一してない箇所などもありました
  2. 文章としての体裁
    • Fbからの引用部分などは句読点がそもそも無かったりする。接続が変だったり、助詞が欠けてたりするのを補う
  3. 固有名詞の確認
    • 「とらどら」「トラドラ」「とらドラ」どれが正しいか? ってアニメファンの方なら聞くまでもないだろってかんじでしょうが、では最後の感嘆符は「!」でしょうか「!!」でしょうか? それとも付かない? じゃあ「おちんこ」の最後の感嘆符は? みたいなのを調べて、本文中の登場箇所をぜんぶチェックする。作品名がアルファベットなら、原稿にカタカナで書いてあるのをアルファベットに。「おちんこ」みたいな略称があるアニメは、正式名称より略称が先に書かれてないかをチェック。ただし、何箇所か貼ってあるチャット(状態のFbのコメントのコピペ)の中など、文脈によってはOKにする。などなど

epub的なもの

  1. でんでんマークダウンの文法にしたがってマークアップ
    • コンバーターにかけてみて変だったら修正
    • 縦書きなので縦中横はけっこう使った
    • あとはリスト(箇条書き)とか定義リストとか脚注とか
    • Fbからの抜き書き部分は引用
  2. コンバーターがやってくれないところは手でepub開いてエディタで修正するなど(epubの中身はXHTMLCSSをZIPで固めたもの)
    • 見出し中の縦中横が目次に拾われると縦中横の指定がなくなってた
    • 縦中横が連続してると上手く処理されないかんじだった

まとめ、というか確認したいんだけど、電書に編集って必要かな?

こう書き出してみると意外とたくさんのことをやってるようですが、紙の編集者ならふつうにやってることでしょう。原稿が事前に揃った段階からスタートしてて企画も決まってたので、原稿の催促とかそういった作業がないだけ楽だったかもしれません。

でも、こういった作業って、どれほど本の売上に寄与してるかってわからないですよね。この本はよく編集されてるから買った! みたいな意見って見かけたことないし(逆はまあたまにあるかな、買ったら誤字たくさんあったみたいなレビューはAmazonで時折り目にするか)。

ときどき思うのです。編集されているかされていないか、ふつうの人はきっと見分けがつかないだろう。本を読んでて、おーこれはよく編集されているなーなんて言ってるの、だいたい同業者です。仲間内だけで、編集されているかされていないかを確認しあってるだけなのです。

ふつうの人に見分けが付かない作業を必死になってやっているのは、これはまったくの無駄ではないのか? ときどき思うのです。世の中にとくに必要とされていないどうでもいいことに時間と手間を欠けているだけなのではないか? 編集って、出版社を中心とする出版システムにいまは組み込まれているから存在しうるけど、それが瓦解すれば河原で石を売ってるのとどっこいどっこいなんじゃなかろうかと。

でまあ、それにもかかわらず、今回は頭にも書いたように0.5人月くらいの編集コストをかけてしまっているわけです。

こういった作業、あなたが電書を出すときに、コスト分のお金を支払ってでも、やってほしいとおもいますか? おもいませんか? というのが自分がいまいちばん気になっていることなのです。

だって、どう考えたって出版業界は今後縮小していくだけだし、編集者として食べていける人も減っていくでしょう。一方で、KDPのような個人がブログなりを電書化していくという小規模出版の市場は増えていきそうな気配がしています。

この個人出版のところに食い込めないと、編集という職種そのものがこの世から消えてなくなってしまうかもしれない。いや、それでもいいっちゃあいいのです。ガス灯の煤を掃除する職業のひとが、昔はいたけど今はいないように、時代の変遷で消えていく職種というのはある、それは寂しいけど仕方がないことです。それにまあ、ぼくいま書籍の編集を職業にしてないですし……。

だから改めて確認したいのは、編集という作業、編集者という職種は、電書の個人出版においても、必要な作業、必要な人材、必要なコストだと思いますか? そうでもないでしょうか? つまり需要はどれほどあるのか? ということを確認したいし、いまは見込めないとしても、せめて売り込みを頑張ればこれから換気できる需要なのかどうか。

もっというなら、これだけの作業に、いったいいくら払ってもいいでしょう? 電書だけの出版、いまそんなに儲かるものでもありません。1つ数百円のmobiをKDPで売って、せいぜい数百部といったところでしょう。そのうちどれほどを編集費として避けるか? 固定で払うのか、レベニューシェアか?

今回は最初から「たくさん売れて儲かったら」という約束でしたので、いくらかのギャラにはなるかとおもいますが、作業量と見合うかは難しいでしょう。でも、自分でもこのコンテンツが電書になってると面白いとおもうし、あとまあ勉強にもなるのでというので引き受けたわけですけど、よっぽどでないとこれを趣味でやれるひと、そんなにいないんじゃないかな。

編集という職能、職種、職業、いままでは出版社に附属するものとして、出版を構成する部分として、否応なく付いてきたわけです。しかし、個人出版によってそれが選択できるようになっているいま、この職能だけで独り立ちできるかどうかは難しいだろう、という岐路に立たされているようにおもいます。