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表参道で働くシニアのブログ

「読むだけで学べる!文章力が劇的に向上する超良質記事まとめ10選。」って記事のリードが言いたかったことは、こういうことではないか? っていう書きなおし案を書いた

今月頭に出た文章術まとめの記事が、はてなブックマークをかなり集めていて、気になったので後で読むリストに入れてたのを、先ほどようやく読んだ。

読むだけで学べる!文章力が劇的に向上する超良質記事まとめ10選。 | SIROKグロースハックブログ

ところが、ブックマークコメントでも「人気コメント」(人気コメントへのパーマリンクほしいすね。ハッシュのアンカーでいいので)を見てみると、だいたいピックアップされてる超良質記事の内容じゃなくて、書き出しの段落に注目が集中していて、確かにこれは文章力の向上をうたう記事のリードとしては少々不用意だったのではなかろうかというコメントに首肯せざるをえない。

サービスを運営していると、最適な文章を書く事も多いです。分かりやすい文章を書く事でユーザーに対する理解が深まり、結果的にグロースに繋がります。

わかるようでいてよくわからないところがあって、「最適な文章を書くこと」が多いのであれば、もうその人は最適な文章が書ける文章力があるのであって、いまさら劇的な向上を求める必要はないだろう。また、運営している人が文章を書いたら、ユーザーに対する理解が深まる、というのも状況がよくわからない。ユーザーのペルソナ分析でもしているのなら別だが、そういったレポートに特化した文章術というわけではなさそうである。

リードを書きなおしてみた

といったことなどをふまえて、このリードが本来言いたかったのはこれではないか? ということを勝手に推測してみたのが以下の文章なのだが、果たしてどうだろう?

サービスの運営者は、最適な文章を書かねばならないことも多いです。説明が分かりやすければ、サービスに対するユーザーの理解が深まり、結果的にサービスの成長につながります。

これが正解かどうかはわからないし、ひとによってはまた違った文章にたどりつくだろうが、できるだけ元の文の構成や言葉を残すように心がけた(「多いです」もあえて残した)。

なぜこう書きなおしたのか

参考までに、自分がなぜこう書きなおしたのかをまとめておく。どこに着目したのかというサンプルとして読んでもらえれば、文章について考えるヒントにもなるのではないだろうか(反面教師的な意味であっても何かしらお役に立てば幸いである)。

  • まず、1文目には主語がない。いや、主語はとくになくてもいいし、ここは「サービスを運営している」人が主語であることはだいたいわかる。だいたいわかるのだが、この文ひいては原稿自体がだれに向けられたものかを明確にするためにも、「サービスの運営者」という主語を立てたほうがよいのではないか
  • 1文目の述部には、前述のような不明点があるが、おそらく「書くこと」自体ではなく「書くことを求められる状況」が多いのではないだろうか。つまり、助動詞や補助動詞的なものがひとつ抜けているのではないかということである
  • 「ユーザーに対する理解」というのは、動作の主客が逆転してしまってるのではないだろうか。元のまま読むと、サービスの運営者がユーザーを理解する、といった構成に読めるが、おそらくサービスの運営者が書いた文章はユーザーに読んでもらうためのものであろうから、次には(文章を読んだ)ユーザーがサービスを理解する、という状況を想定するのが自然だろう
    • ただし、さらにもう一歩進めて、ユーザーに理解してもらうような文章を書くことで、読み手の気持ちになって書くということが実践できるので、読み手すなわちユーザーに対する理解が深まる、ということを言いたいのかもしれない。ただ、そういうことを言いたいのであれば、さらにもう1文は説明を付け足さなければ、説明したい状況の構造が複雑なので伝わらないだろう
  • 「分かりやすい文章を書く事で」は、ひっくり返して「文章がわかりやすければ」とした。さらに、「文章」という言葉はこの段落に何度も登場するので、「説明」と言い換えた。同じ語句の繰り返しを避け、ちょっとした意味の違いに応じた類語を探すように心がけろ、と教えられたもので
  • 「グロース」という言葉は、業界の人にのみ向けているならばよいだろうが、本記事のようにより広い読者が読むであろうときには、より一般的な同義語「成長」に置き換えたほうがよいだろう。あわせて、何が成長するのかを補った
    • なお、おそらくこの「グロース」という言葉は、単に「成長」を英語にしただけではなくて、「グロースハック」という文脈での「グロース」つまり「サービスの成長」という目的語を含意しているのであろう(ただ、そういう用法自体が、ある業界に閉じた用法であり、一般的ではないように思う)

もう少し手を入れたい気はしないではないけど(たとえば「最適な文章」の前に「いろいろな状況に応じて」といった言葉を補いたくなる)、まあ際限なくやりがちなのでとりあえずここで止めておく。あとどのあたりがいじれるかは、これを読んでる方の宿題というか、暇つぶしにおまかせしたいというかんじであります。

おまけ

文章力を向上させるために私が実践したのは、ただひたすら推敲することです。同じ文章を10通りにも20通りにも書き直し、ニュアンスの違いを感じとり、体で覚える。ただし、劇的な効果はまったくもって保証しない。20年をもってこの程度のものである。

たのしい編集 本づくりの基礎技術─編集、DTP、校正、装幀

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日本語の作文技術 (朝日文庫)

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