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表参道で働くシニアのブログ

若尾裕「親のための新しい音楽の教科書」と萩原健太「ボブ・ディランは何を歌ってきたのか」読んだ

親のための新しい音楽の教科書

親のための新しい音楽の教科書

日本の音楽、というと主語が大きくなってしまうので自分の音楽ということにするけど、自分の音楽のあり方、音楽との関わり方が、非常に不自然で不健康なものに思えていて、それはなぜなんだろう? というのがずっと自分のなかで疑念としてある。そういった疑問を持ちはじめたのは、いまでも理由はしっかり覚えてるけど、じゃがたらの江戸アケミの「お前はお前の踊りを踊れ」という言葉を下敷きにした、ソウル・フラワー・ユニオンの「お前の村の踊りを踊れ」という曲、青年期のいろいろなものに強く影響をうけやすい時期にリアルタイムで聞いて、おお! と盛り上がったのはいいけど、いったい自分にとっての「お前の踊り」や「村の踊り」とはなにか? ということを見つめなおすと、まったくよくわからないからだった。

じゃがたらSFUがプレイしていたファンクミュージックは間違いなく自分にとって、そこで得られた新しい音楽、吸収したい音楽であって、自分のものだといえるようなものではまったくなかった。かといって、地元の民謡は歌えと言われても歌えない(盆踊りで子どもがみんな帰ったころにおっさんやじいさんが謡い出す地元の踊りがあって、拍子が奇数拍になる箇所がフイにあって子どもにはとても踊れなかった)。じゃあ、子供のころから親しんできた唱歌や童謡か? それとも歌謡曲か? それを自分の踊りと言うのはかなりダサさがある。

冒頭でつい主語を大きく書いたのは、それは自分だけの個人的な音楽体験によるものというより、学校教育で唱歌を学び、家にあっては歌謡曲を耳にし、思春期になれば欧米の影響を受けたロック・ポップスに傾倒する、という平均的な日本人が経るであろう音楽遍歴の先にあるもので、つまり一般的な日本人には「自分の踊り」や「村の踊り」といえるものは無いのではないか? ノー・ルーツミュージック、バット・ライフなのではないか?

テレビの海外取材番組などで、現地の人に何か歌ってというと、その民族固有の歌であったり、地元で歌い継がれた民謡であったり、宗教的な音楽だったりを歌ってくれることがある。もちろんテレビなんだから歌えるひとを選んで歌ってもらっているんだろうけど、でももし逆の立場で自分がその場に居合わせたとしたら、何が歌われたなら「ああ、いまここで自分たちの歌が歌われているなあ」と盛り上がることができるだろう? よくわからない。

まえがきが長くなったけど、この本は、そういったノー・ルーツ状態がどうやって生まれたのかという自分の疑問に、主に音楽教育という分野から示唆を与えてくれる本、というか日本の音楽教育のそういった側面での不思議さ、不可解さ、良かれとやっていたことが実はそうでもない、ただ「歌うのが恥ずかしい」という、人前で歌うの恐怖症(カラオケなど恥ずかしいことをしてもよいこになっている場所を除く)の人を増やしているだけかもしれない、といった側面をクローズアップしてくれる、とてもよい本だった。

日本の音楽といったときに、だいたい3つの層があって、ひとつは古来から日本人が持っている音楽感覚(5音音階、ハーモニーの弱さ、不等拍なリズムなど)があり、この本でも取り上げられているような明治初期に教育用の音楽として輸入されて西洋クラシックがあり、やがてレコードや映画などを通じて欧米から娯楽としてポップスが持ち込まれるわけだけど、とくに戦後になって黒人音楽の影響下にあるハネたリズムが特徴的なロック・ポップスの影響力が増してくる。

そうなると、日本の音楽教育について、あるいは唱歌・童謡について書くにも、それ以前の日本人の古謡であるとか現在のポップスについての視野を欠くわけにはいかないのではとおもうだけど、その全体像がつかめるような本がやはりなかなか難しいなかで、この本は教育の音楽を中心にしながら各方面に目配せがされているのもよかった。

400ページ近くをボブ・ディラン論だけで書き通すという労作。デビューからのディランの音楽遍歴をアルバムごとに時期をまとめて紹介し、そのときにディランが何を考えていて作品に結実したのか、何の影響を受けたのか、何に悩んでいたのかを考察する。読後感としてわかることは、この偉大なシンガーソングライターであっても、ひたすらに試行錯誤し、なにかを模索しつづける期間が続く。自信に満ちてリリースされた作品のほうが少ないのではないかと思わせられる。そして、そういった長い長い逡巡を経た今のディランがいかにカッコいいか。とにかくカッコいい。ひたすらカッコいい。聴け! といったメッセージを得ましたので今のディラン聴こう! という気分にさせられる本でした。

Bootleg Series 11:..

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君と踊りあかそう日の出を見るまで

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