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表参道で働くシニアのブログ

瀬田貞二『絵本論』のオススメ絵本 その1

『絵本論』の「1-1 絵本に出会う」と「1-2 絵と物語」ではエッセイの内容に合わせて絵本がちょこちょこ登場するというかんじで、なかなか腰を据えて論じられているものは多くありません。ここではそのなかでも、挿絵や口絵で紹介されているものを中心にピックアップしました。

それではまずは古典中の古典からいってみましょう。

三びきのこぶた ―― イギリスの昔話

スタンダードな昔話だけに脚色も挿絵もさまざまに出版されているが、物語の本質を見失った「子どもだまし」も多い。

三匹は、遊び半分ではなくて、本気で自前で暮らしていかなければならなかったのです。そしてこれは、食うか食われるかという、子どもにとって切実なすごい冒険にみちた物語に展開していく、シリアスな契機をはらんで語りはじめられているのです。

そしてレズリー・ブルックの挿絵によるもの(1904年刊行)が優れているとして紹介。

金のがちょうのほん (世界傑作童話シリーズ)

金のがちょうのほん (世界傑作童話シリーズ)

この本には「三びきのくま」「三びきのこぶた」「金のがちょう」「親ゆびトム」の4作を収録。

もりのなか / マリー・ホール・エッツ

フランスの児童文学者ルネ・ギヨーの言葉

子どもは、大人たちのなかにはいっていくよりも、ずっとずっと、動物のなかにはいっていくほうが、安心がいく

の実証のような美しい絵本(1944年刊行)。

もりのなか (世界傑作絵本シリーズ)

もりのなか (世界傑作絵本シリーズ)

類似の本として『がんばれさるのさらんくん』(1958)、『ぞうのババール―こどものころのおはなし (評論社の児童図書館・絵本の部屋―ぞうのババール 1)』、『ひとまねこざるときいろいぼうし (岩波の子どもの本)』(おさるのジョージ)などが挙げられています。

もじゃもじゃペーター / ハインリッヒ・ホフマン ほか

子どものための絵本の歴史は19世紀後半になってはじまった。その初期の歴史を振り返って、まずドイツ人医師が自分の子どものために手作りした本(翌1845年に出版)を紹介。

もじゃもじゃペーター (ほるぷクラシック絵本)

もじゃもじゃペーター (ほるぷクラシック絵本)

そして19世紀イギリス絵本の巨匠ランドルフ・コールデコットの代表作『ジャックが建てた家』。

現代絵本の扉をひらく コールデコットの絵本

現代絵本の扉をひらく コールデコットの絵本

  • 作者: ランドルフコールデコット,Randolph Caldecott,Brian Alderson,吉田新一,正置友子,辻村益朗,板東悠美子
  • 出版社/メーカー: 福音館書店
  • 発売日: 2001/05/25
  • メディア: 大型本
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これはそれを含む復刻全集。

かもさんおとおり / ロバート・マックロスキー ほか

アメリカで1938年に設立されたコールデコット賞の受賞作を、作者の言葉を添えて紹介。

1942年に受賞したロバート・マックロスキーの『かもさんおとおり (世界傑作絵本シリーズ)』。

1942年に受賞したバージニア・リー・バートン。

ちいさいおうち

ちいさいおうち

1948年のロジャー・デュボアザン『しろいゆき あかるいゆき』。

1955年のマーシャ・ブラウン『シンデレラ―ちいさいガラスのくつのはなし (世界傑作絵本シリーズ―アメリカの絵本)』。

参考 : コールデコット賞受賞作品リスト - やまねこ翻訳クラブ

三びきのやぎのがらがらどん / マーシャ・ブラウン

19世紀なかばにグリムに刺激されたアスビョルンセンとモーによる『ノルウェー昔話集』の一篇。

ノルウェーの土地と人情をまざまざとあらわしている珠玉篇です。(中略) 昔話でおなじみの三のくり返しになっていますが、くり返しのたびごとに緊張を強めるようにたくみに構成されています。

三びきのやぎのがらがらどん (世界傑作絵本シリーズ)

三びきのやぎのがらがらどん (世界傑作絵本シリーズ)

だいくとおにろく

今度は日本の昔話に題材を取った絵本から。

だいくとおにろく

だいくとおにろく

文学の髄の髄、核そのものが裸で、名の知れぬ庶民芸術家のあいだからほとばしりでたものが昔話 (中略) 単純で明快で一本気で直裁で、事柄だけを自然に劇的にのべ、リズムと生き生きしたういういしさにみちている昔話

ねむりひめ / フェリクス・ホフマン

グリム童話の素晴らしい構成を持つ物語「ねむりひめ」を、その構成を活かして絵本にした好例。

いかによい絵本が、よい物語の力をいかすものか

ねむりひめ (世界傑作絵本シリーズ)

ねむりひめ (世界傑作絵本シリーズ)

沈静なその構図法と色感とあいまって、この堂々とした昔話の語り口にふさわしい美しい抑制