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表参道で働くシニアのブログ

NONFIX「信仰と医学の狭間 ルルド」を見た

先週のフジテレビのドキュメンタリー番組「NONFIX」で、フランス南西部「ルルドの泉」で知られるキリスト教の聖地ルルドの話をやってたのがすごく面白かった。信仰(巡礼)と医学の狭間というより信仰も医学も含めた社会というか「町」のあり方が気になりました。

ルルドは病気平癒にご利益のある聖地ということで土産物屋が軒を連ねる門前町でもあるんだけど、とにかくその規模がでかい。そして、ふつうの観光客だけでなく、必死の覚悟で巡礼に訪れる重病人や障害者を積極的に受け入れている町の姿勢がおもしろい。毎日、ヨーロッパ中、世界中から病人とボランティアが山のようにやってくる。乗り物を降りてくるのが車椅子なのはまだ普通で、移動できる簡易ベッドに横たわった寝たきりにちかいひとたちが何百人も大聖堂のミサに集まってくるシーンはちょっと圧巻だった。

だからルルドは信仰だけでなく医療の現場でもある。だから「信仰と医学の狭間」というサブタイトルなんだろうけど、それに加えて、医療から広がった社会的な活動が行われているところもさらに興味深かった。ガンについて考える会議や、障害者が自分の体験を小中学生に語る催しがBOFっぽく開催されている。いかにも現代の若者風の女子高生がボランティア活動を通して変わっていく様子や、各地から集まってきた医者が「治癒とは何か?」について議論するアカデミックな場面も紹介される。

ここではもう、奇跡による治癒がほんとうにあるかどうかはある意味では関係なくなってるな、と感じた。同じ病気に悩むひとたちが語り合ったり、障害者をもったひととボランティアやティーンエイジャーとふれあうことでお互いに何かを得ていく。そういったコミュニケーションの場、共有の悩みを持った人たちの共感を生む社会的な場所という役割がかなり大きい。

番組のまとめに医療局長が語った言葉が

ひとは直るように出来ている/医学は後からついてくる

という東洋医学っぽさすら感じるものだったのも印象的でした。

番組の内容から少し離れると、数多くの病人や障害者を受け入れることによる経済的な効果はどのくらいなんだろうということも気になった。そういったサポートが必要なひとたちのために、年間十万人のボランティアが集まってくるという。人が集まれば町の飲食店や商店も潤うだろうし、経済も回っていくだろう。

聖地という観光資源だけでなく、病院や療養所という生産的なイメージからはほど遠い施設とサービスを充実させることで町が活気づくという逆転の発想のような循環が生まれていたりするんじゃないだろうか、と見ていて思った。極端に言えば「医療で町おこし」みたいな。そのあたりの経済的な側面は番組では語られなかったけど、実際のところはあってもおかしくないなあと思った。