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表参道で働くシニアのブログ

読んだ - 思考する機械コンピュータ/ダニエル ヒリス 著、倉骨彰 訳

面白かった。んでもって意外と読みやすい。サクサクと2日くらいで読めた。2日間でコンピュータサイエンスの基礎が勉強できていいのかしら。みたいな。

思考する機械コンピュータ (サイエンス・マスターズ)

思考する機械コンピュータ (サイエンス・マスターズ)

でもやっぱりぜんぶが理解できたわけじゃなくって、とくに2章で出てきた「一斉射撃問題」の状態遷移がよくわからない。検索してみるとWikipediaにある「Firing squad synchronization problem」の項目が解なのかな? これ見てもなんだかよくわかんないんですけど…

気になったところ

論理演算の基礎を説明する第1章でこう書かれている。

便宜上、ビットは1と0で表現されているのでビットパターンを数字と考える人が多い。そのために「コンピュータは数字を使ってすべてを処理する」などと言ったりする。(中略)もしもビットによって伝達される情報を(1と0ではなく)XとYで便宜上表現することになっていれば、人々は「コンピュータは文字を使ってすべてを処理する」と言ったりするかもしれない

驚異的にサイズを小さくできることを除けば、コンピュータチップの作成にシリコン・テクノジーを使わなければならない特別な理由は存在しない。(中略)私は、流体コンピュータを組み立てたことはない。しかし友達と共同で棒と糸が部品のコンピュータを作成したことがある

これは論理演算そのものを理解する上ではあまり本スジではないだろうけど、個人的にはかなりグッと来た。このあたりを突き詰めていくと、コンピュータの根幹をなしている考え方は、私たちがいま現在コンピュータというものや「デジタル」という言葉などに対して抱いているような印象は本質ではないというような気がしてくる。「デジタル」とはなんであって「アナログ」とはなんなのか、ということを考えたりしたくなる言葉だ。
あと、本書は第6章で符号化について説明するまでは、情報科学の入門書なんだけど、第7章でいきなり並列コンピューティングの話にとんでるところがすごいと思った。つまり自分の好きな話をしたいってことなんだけどw そして8章で人工知能に突入し、最終章にはこのような刺激的な発言をしている。

人類は知性がどういうものかを理解できる前に人工知能を作ることができるようになり、しかもそれは、我々自身がよく理解できない複雑な要素の相互作用の結果から創発的に誕生する

脳はひじょうに複雑なだけでなく、その構造が工学的に設計された計算機のそれとはっきり異なる。この違いを認識することは重要である。だからといって人間の脳の機能を実現できるマシンが絶対に設計できないということではない。しかし。この違いがあるので、階層的に設計されたマシンを分解して理解するのと同じ方法で、人間の脳の働きを理解することはできない、ということである。
脳の機能がその構造とほとんど同じくらい複雑であり、十分な説明がむずかしいものであるならば、それは我々が理解できるようなものではない、ということになる。

本書はコンピューティングが何かということをその基本原理から説き起こした入門書という体を装いながら、その実はコンピューティングの限界(脳の機能と構造を設計することはできない)までを見通し露呈させた恐るべき本であるとともに、その限界は別な新しいコンピューティング技術によって乗り越えられるだろうと予測する(理解できないし設計もできないんだけど、実現・実装することはできるだろう……ってなにそれ!)とんでもない頭のひっくり返るような一冊だとおもった。

書評リンク

有名な本なのでいろんなひとが書評を書いてる。リンク貼っておく