in between days

表参道で働くシニアのブログ

音楽の聴き方

岡田暁生『音楽の聴き方』とそのなかでも参考文献で挙げられてた村上春樹『意味がなければスイングはない』を読了。

音楽の聴き方―聴く型と趣味を語る言葉 (中公新書)

音楽の聴き方―聴く型と趣味を語る言葉 (中公新書)

意味がなければスイングはない

意味がなければスイングはない

『音楽の聴き方』はものすごく示唆に富んだ本で、ぼくはとくにクラシック音楽の聴き手ではなく、日本のロックだったりを中心に聞いているから、この本に出てくる音楽家にほとんど馴染みはないんだけど、それでも十分に面白かった。考え方の本だからだとおもう。音楽について語るということについて語るという難しい題材に正面から取り組んでここまでまとめあげたなんてほんとすばらしい。
よく「ジャンルなんか関係ない、聴いてグッと感じた音楽を聴けばいいんだ」っていう紋切り型の言い方があるけれど、ぼくはずっとそれに違和感を覚えてた。音楽に「ジャンル」がなく、考えることもしなければ、ぼくたちは自分が感じた音楽の素晴らしさをまったく知らない人に伝えることはできないのではないか。感じ方の異なるひとが音楽について語った言葉を読んだり聞いたりして「音楽の感じ方の幅」そのものを広げながら、そうやってぼくらは音楽を聴いてきたはずで、そうでなければそもそも感じ方の同じひととしか音楽について語り合うことはできないし、感じ方が違うひととはまったくのディスコミュニケーションから一歩も進まないということになってしまう。音楽セクトを宣言したいならそれでもいいのかもしれないけど、やはりそれでは寂しい。村上春樹の本はまさに感じ方の違うひとに向けて普通の生活のなかでは容易には感じ難いであろう音楽(ウディ・ガスリーとか)にどう感じたのかを考え、そして語るという本であって、ぼくはこれを読んでルービンシュタインのCDを借りてきた。

文献ガイド

『音楽の聴き方』には参考文献がたくさん挙げられているのでリストアップしておく。いわゆるクラシック音楽についての本が多いがそこから少しはみ出したかんじがするところがいい。

モーツァルト書簡全集〈1〉幼少年期の旅行から

モーツァルト書簡全集〈1〉幼少年期の旅行から

ハイドンのエステルハージソナタを読む

ハイドンのエステルハージソナタを読む

音楽と音楽家 (岩波文庫 青 502-1)

音楽と音楽家 (岩波文庫 青 502-1)

音楽美論 (名著/古典籍文庫―岩波文庫復刻版)

音楽美論 (名著/古典籍文庫―岩波文庫復刻版)

音楽の体験

音楽の体験

奏でることの力

奏でることの力

音を投げる―作曲思想の射程

音を投げる―作曲思想の射程

ジャン・コクトー全集 第4巻 評論 1

ジャン・コクトー全集 第4巻 評論 1

ストラヴィンスキー自伝―付・その生涯と作品 (1972年)

ストラヴィンスキー自伝―付・その生涯と作品 (1972年)

小説家の休暇 (新潮文庫)

小説家の休暇 (新潮文庫)

音楽社会学序説 (平凡社ライブラリー)

音楽社会学序説 (平凡社ライブラリー)

楽興の時

楽興の時

古楽とは何か―言語としての音楽

古楽とは何か―言語としての音楽

ブーレーズ作曲家論選 (ちくま学芸文庫)

ブーレーズ作曲家論選 (ちくま学芸文庫)

世界の調律 サウンドスケープとはなにか (平凡社ライブラリー)

世界の調律 サウンドスケープとはなにか (平凡社ライブラリー)

サウンド・エシックス―これからの「音楽文化論」入門 (平凡社新書)

サウンド・エシックス―これからの「音楽文化論」入門 (平凡社新書)

トランス・イタリア・エクスプレス (1985年) (水星文庫)

トランス・イタリア・エクスプレス (1985年) (水星文庫)

意味がなければスイングはない (文春文庫)

意味がなければスイングはない (文春文庫)

音楽の根源にあるもの (平凡社ライブラリー)

音楽の根源にあるもの (平凡社ライブラリー)

第三の意味―映像と演劇と音楽と

第三の意味―映像と演劇と音楽と

西洋音楽史 (1972年)

西洋音楽史 (1972年)

バレンボイム音楽論──対話と共存のフーガ

バレンボイム音楽論──対話と共存のフーガ

片山杜秀の本(1)音盤考現学 (片山杜秀の本 1)

片山杜秀の本(1)音盤考現学 (片山杜秀の本 1)