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表参道で働くシニアのブログ

「リツイート」は「Re: Tweet」じゃない

先日のエントリotsuneさんがツイートしてくれたおかげで、はてなブックマークとかリツイート(→backtype)で広まっていろいろなコメントを読むことができたんだけど、そのなかで気になったことが2つあった。

1つは、Twitterの画面で「XXX宛」をクリックすると返信元の発言に飛べるということを知らないひとがけっこういるってこと。これは文字が薄くて主張が弱いせいか見過ごされがちで、高木浩光さんも最近まで気付かなかったというし、ぼくもやはりしばらくして気がついたおぼえがある。でも、これがあるから「@返信」の意味があるという、重要な機能だ。

もう1つは、「リツイート」を「Re: Tweet」のことだとおもってるひともけっこういるということ。この「Re:」というのは、メールで返信を書いたときに件名に自動で挿入される記号のことで、つまり「リツイート」は「リ:ツイート(Re: Tweet)=返信ツイート」だという誤解がけっこうあるらしい。

※ちなみにメールの「Re:」は返信(reply)の頭文字ではなく、ラテン語由来のビジネスレター慣用句で「〜の件について」という意味なのでRFC5322 3.6.5、二重の誤解になっている。

リツイートの「リ」はリブログの「リ」

otsuneさんがはてブコメで「本来の発祥は(中略)reblog.orgのreなんだけどね」と言っているように、リツイート(Retweet)という言葉は、twitterと並んで語られることも多いtumblrでも使われている「リブログ(Reblog)」のツイート(tweet)版とみることができる。

この場合の「Re」はふつうに繰り返しを意味する接頭辞の「re-」ってことになるだろう。リブログやリツイートの文脈では、同じコンテンツを再掲・再発信して、重要な情報を共有したり拡散することを目的としている。あえてメールの件名に付ける記号になぞらえるなら、むしろ「Fw:」のほうが近いかもしれない。

※追記:リブログについては後で書いた「ぼくがTumblrについて知っているいくつかのこと」を参照

「リツイート」と「リ:ツイート」

しかし実際のところ、RTという記号は現状で「コメント付きリツイート(ReTweet)」と同じくらい「引用付き返信(Re: Tweet=リ:ツイート)」の用途で使われている。TLによっては「リ:ツイート」のほうが「リツイート」より多いことさえある。

「リツイート」と「リ:ツイート(引用付き返信)」は同じようなものに思えるかもしれないけど、コメントと元発言の主従が逆転していることに注意してほしい。

RTのもともとの意味である「リツイート」では、元発言がそのまま広まって周知されることが重要だと考える(重要度:コメント<元発言)。一方で、いま多く使われている会話型のRT(リ:ツイート)では、元発言へのコメントやツッコミの比重が高くなっているようにおもえる(重要度:コメント>元発言)。

もちろんハッキリと二分できるわけではなくて、公式RTに極めて近いコメント無しRTから、完全に会話してる多重RTまで、さまざまなRTが混在しているけど、大雑把にまとめれば「リツイート」と「引用付き返信(リ:ツイート)」があって、リツイートの記号(RT)が「リ:ツイート(引用付き返信)」にも流用されているのがTwitterコミュニケーションの現状だと言えるのではないだろうか。

たぶんTwitterには何かが欠けている

いまTwitterでは、コミュニケーションの取り方として次の3つがサポートされている。

返信
行頭から「@ユーザー名」ではじまる返信。in_reply_to_status_idで元発言とリンクされている。タイムラインでの閲覧範囲が狭くなる。
リツイート(公式)
元発言をそのままの形で再ツイートする。元発言へのリンクや、リツイートした人の一覧などがいっしょに表示される。
ハッシュタグ
#ではじまる任意の文字列。同じ話題について語っているツイートの集まり。

そして、いま盛んに行われている引用付き返信(リ:ツイート)による会話は、上記3つのいずれでもなく、まったく別のコミュニケーションのあり方が実は暗に求められていて、その機能が欠けているがゆえに、非公式RTで代用されているのではないか、ということをしばらく前から考えている。

欠けているのは、いくつかのクライアントが実装した「QT(Quoat Tweet)」かもしれないし、前回のダイアリーでotsuneさんがコメントしてくれたツリー表示という見せ方かもしれない。そういったことをひっくるめて「(あるひとつの発言に起因する)ひと連なりのスレッド的な発言群」を認識する機能が足りてないのではないか、と考えたりしている。

ともあれ、いますごいイキオイで流行っているTwitterでみんながすごいイキオイで書き込みまくっているコミュニケーションのあり方は、いまのTwitterに用意されている機能・やり方から、はみ出している。Twitterが想定していない形で、Twitterはものすごく使われていて、流行っていて、その想定外のコミュニケーション手法がデファクトスタンダードになっているようにおもうのだ。

参考資料

Retweetが日本で話題になりはじめたのは、Googleトレンドによると2009年8月ごろだけど、米国ではその半年前くらいから話題になってたようだ。試しに日本でRTが多用されはじめる前に書かれたReteetへの言及記事を集めてみた。

【追記】リンク先の消失が多かったのでまとめ直しました(2020年7月11日)