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表参道で働くシニアのブログ

円環(ループ)するリズムパターンの教材動画がおもしろくて、アプリとかでおんなじことできると楽しそう

「すごいプレゼン」として知られるTED関連のプロジェクトに、学習教材のムービーを投稿できるTED-Edというのがあるそうで、リズムの繰り返しとパターンについておもしろい動画が投稿されていた。

日本語TED新着: リズムを視覚化する別の方法 - ジョン・ヴァーニー
A different way to visualize rhythm - John Varney | TED-Ed

リズムを記述するのに、五線譜のような譜面ではなく、ループすることを前提に円環させればもっとわかりやすく学習できる、という動画のようだ(日本語字幕があるのでまず見てみてください)。

円のうえにリズムを取るというイメージそのものはとくに珍しくなさそうだけど、いろいろなリズムパターンを紹介しながら同心円の円環を増やしていくあたりでワクワクしてきて、後半で円環をグルグルっと回して似てるけど違うパターンを比較してるあたりまでくると、これはもう初めて見たぞってかんじでかなり気分が上がる。

見てるだけじゃなくて、自分でも実際にグルグル回しながらリズムパターンを作ったり比べたりしたくなってしまう。音楽の機材に詳しい知り合いによると、こういうインターフェースのシンセサイザーなどはあるらしい。だけどそれは自分にはちょっと大掛かりなので、スマホのアプリとかで円環のループを作れるとすごくおもしろそうだ。

Androidのアプリストアでは見つけられなかったけど、もっと探せばあるのかもしれない。いろいろやって試して考えてみたくなる動画だった。

ループするリズムとループしない音楽

ところで、どんな音楽でもこの円環でぜんぶ説明できる、というわけでもなさそうだ、というちょっと余談めいたい話がしたい。というのは、この動画では世界各地の伝統音楽が登場しているけど、日本の伝統音楽はちょっと違うのではという話を以前書いたことがある。

ほかに参考になりそうな記事を検索していたら、能についての文章をみかけた。

ひとくさりは4拍といっても、これが均等な時間分割ではないので、一般的な4拍子とはとても思えない。能の1拍は伸縮するのである。(略)重要なのは、鼓が打たれるまでの間合い、そして鼓が打たれてから次の拍に移行するまでの余韻である。他のパーカッションのように時間の刻み方の変化や正確さではない。無音の時間の長短に、むしろ洗練さが要求される。したがって、パターンの反復という一般的なリズムの感覚ではとらえきれない。

日本人とインド人のリズム感覚 - HIROS' WEB

よく「日本人はリズム感覚がよくない」とか、農耕民族だからビートが跳ねないで踏み込むとか表拍を取るということが言われているけど、そもそも均等に分割できる円環がループする感覚を持ち合わせておらず、音が鳴ったら拍があり、鳴らないときにはがある。

洋楽っぽい等拍のリズムは後天的に学習しないといけないから、さっきのリズムを視覚化する動画にあった「弱いオフビート」や「アクセントのバックビート」までは気が回らなくて、さっきの能の文章にもあった強弱のないリズムになるのだろう。

演歌の手拍子を思い浮かべてみればよく分かる。手拍子は強弱のない、いち、に、いち、に、と続くだけのリズムである。

さっきの動画に 強弱のない、いち、に、いち、に、と続くだけのリズム を配置するならどうなるだろう? 円の上下左右に同じ大きさの丸が並ぶのだろうか。

テレビで音楽番組を見てると、最近はロックバンドでもちょっとBPM高めな四つ打ちの曲が増えたんじゃないかとおもってて、それはけっきょく円環するリズムを跡付けでちゃんと身につけるのはけっこうコストが高いので、90年代あたりにはかなり高コストなクラブサウンドも流行りかけたけど、けっきょく強弱のない同じ手拍子が続くリズムが学習効率的にもちょうどいいかんじに落ち着いたんでは? という話を実は少し前に書いている。

「コールのビート」っていうのは完全に造語なんだけど、ようは「強弱のない、いち、に、いち、に、と続くだけのリズム」のことで、たとえば「うりゃ、おい、うりゃ、おい」でノッたときにいちばん気持よく楽しめる曲ってかんじです。

以上、かなり長い余談でした。まあ自分が書いてきた記事をひとつの脈絡のなかでまとめてみたくて、ちょうどいい機会だったので。すいません。

あと念のために書くと、これはアーティストが曲をどういうリズムで作っているか、ではなくてリスナーがどういうリズムで楽しんでいるかという話であって、本来は強弱ビートあっても、ないものとしても楽しめるようになってそうかどうか、というかんじです。

付記 この教材動画について

教材の作者のプロフィールがTED-Edに見当たらなかったけど(しっかり探せばあるのかな?)、検索してみると、どうやらオーストラリアのブリスベン在住のコントラバス奏者の方のようだ。

John Varney | Music Australia

音楽の博士号とともに応用数学の理学士をもち、作曲や編曲の仕事だけでなく音楽民族学者としても活動しているらしい。民族学的な視点はこの動画にも活かされてそうだ。

実はギズモードが去年のうちに記事にしてて200ブックマーク以上ついてるので、ひょっとしたらもう見たひとも多いかもしれない。ブコメによるとNHKの坂本龍一の講座にも出てきてたらしい。

五線譜ではなく「円」でリズムを視覚化すると? : ギズモード・ジャパン

TED-Edでは、2014年のベストレッスンの1つに選ばれている。

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