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表参道で働くシニアのブログ

1週間にロートレックを3回見た ― 「パリ♥グラフィック」「北斎とジャポニスム」「ゴッホ展」

11月の第4週から週末にかけて、芸術の秋というわけでもないけど美術展をいくつか回って、そのすべてにロートレックが出てたのがおもしろかった。

23日(勤労感謝の日)に丸の内に「ロートレックと版画・ポスター」展。

パリ♥グラフィック ロートレックとアートになった版画・ポスター展

土日は上野で、北斎展とゴッホ展。どれもそれほど混雑していなくて作品もゆっくり見れたのでよかった。

北斎とジャポニスム HOKUSAIが西洋に与えた衝撃
ゴッホ展 巡りゆく日本の夢

タイトルからわかるように下の2展はともに19世紀後半のパリにおけるジャポニスム(Japonisme)をテーマにしてて、ゴッホ展には「神奈川沖浪裏」など北斎作品が並んでいたし、北斎展にもゴッホの作品が展示されていた。

数十年前の日本の浮世絵がどのように広まって流通したのか、その受容の過程にも両方の展示でフォーカスがあたっていて、林忠正やサミュエル・ビングといった美術商の役割までが紹介されていて勉強になった。

どれかの説明書きだったかに、パリで浮世絵がもてはやされているという風潮に、狩野派・アズ・ナンバーワンなアーネスト・フェノロサが噛み付いたと書いてあったのもよかった。

ロートレックの作品としては、北斎展には最初の大判ポスター「ムーラン・ルージュ」が、ゴッホ展に「ディヴァン・ジャポネ」があり、もちろんロートレック展には両方があるうえ、ゴッホの浮世絵コレクションまで展示されている(ファン・ゴッホ美術館との共同企画によるもの)

やはりジャポニスムの影響をうけた作家として知られるひとなので、全体的にその雰囲気があり、また関連して展示されるナビ派の作品、たとえばピエール・ボナール「小さな洗濯屋」は北斎展にもあった。気に入った作品だったのでまた見れて嬉しかった。

ロートレックと浮世絵というなら「アリスティド・ブリュアン、 彼のキャバレーにて」。これがロートレック展で2番目の部屋に他の大判ポスターとともに撮影可で展示されていてなかなかに壮観。最後まで回ったあとで戻ってきて、最終入場後のだれもいなくなったところをひとりで眺めていた。

Henri de Toulouse-Lautrec 003

北斎展はとにかく作品数が多く、ほとんどで北斎漫画などとの構図の比較がされているので、ぼーっと回ると見比べて「確かに同じだねえ」って終わりみたいになりそう。

北斎の作品はさすがに富嶽三十六景からも有名どころ「神奈川沖浪裏」「凱風快晴」「山下白雨」などなど並んでいたけど、全体の情報量が多くてそれどころではない。そんななかでモネがやっぱりなんか好きだなとおもった。

ほかにはアルベルト・エーデルフェルト「夕暮れのカウコラの尾根」が印象に残った。ジャポニスムあんま関係なさそうだけど。

Albert Edelfelt - Kaukola Ridge at Sunset - Google Art Project

ゴッホ展で面白かったのは、絵が持つ距離感というか、どう鑑賞されるかにあわせた力強さみたいなものをかんじた。

渓斎英泉「雲龍打掛の花魁」を模写したゴッホの作品がオリジナルと並んでいて、ほぼ同寸で模写してあって同じくらいの花魁が2人いるのだけど、英泉の浮世絵はぐっと近づいて着物の柄だとか花魁のかんざしだとかの細部を見ないと面白くない。

一方でゴッホの絵は近寄ると筆遣いばかりでなんだかわかんなくて、離れると良くなる。どんどん離れると印象が変わる。浮世絵を離れてみても輪郭ばかりでよくわからない。ただ、印象派との技法の違いというだけでなく、鑑賞者と一種のコミュニケーションがあるようにおもえて面白かったのだ。

Van Gogh - la courtisane

ゴッホ展の出口で、今日のチケットを北斎展に持ってくと割引になるよって書いてあって、しかも相互割引だったのを後から知って、あらーってなった。大人気の「怖い絵」展とゴッホ展も相互割引だそうなので、怖い絵を見たひとはその半券をもってゴッホ展へ、そのまた半券もって北斎に行くとよさそう。

ゴッホ展 巡りゆく日本の夢 - チケット情報

ところで、上野の2つの展示では、おそらくどちらもほんとはこの2作を並べて展示したかったのではないかなあとおもった。

The Great Wave off Kanagawa
VanGogh-starry night ballance1

※画像のリンク先はすべてウィキメディア・コモンズ