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『花鳥・山水画を読み解く』を読んだ

宮崎法子『花鳥・山水画を読み解く-中国絵画の意味』(2003年、角川叢書)

花鳥・山水画を読み解く?中国絵画の意味

花鳥・山水画を読み解く?中国絵画の意味

中国の古代から六朝、唐、五代、そして宋を中心に、元、明清と流れを追って、山水画や花鳥画の画題がどのように選ばれたか? つまり何がなんのために書かれたか? を考察していて、とてもおもしろかった。

日本絵画との関連では、たとえば若冲が動植綵絵で描いた画題、鳳凰や鶴はもとより、鶏、草虫、蓮池水禽図、藻魚図まで多くがもともと中国の吉祥の画題であったようだ(動植綵絵が釈迦三尊図の周りに掛けられるものとするとすべてが吉祥の図案なのかもしれない)。

中国では調度品と同じように王朝(あるいは政権)が変わると掛け替えられ、ともすると捨てられていた絵画が、日本に渡ってきたものについてはやたらとありがたがれて保存されたため、中国絵画の研究に必要な資料が日本に多いという話もおもしろかった。

文化の面では宋代から導入された科挙により士大夫の文化が独自に深められたことがあり、その影響を日本の水墨画や茶の湯、そのほか禅を中心とした文化に影響を与えている。これを逆に日本側から見たをいえるのが、山口晃『ヘンな日本美術史』で、たまたま同じ時期に読んだのでつながりが出てきておもしろかった。日本人はそういって入ってきたものを、自分たちの気持ち良いように長年かけて改良してしまう、今でいうなら「ガラパゴス」ということなのだろうけど、それが文化の独自性につながっているということだろう。

ヘンな日本美術史

ヘンな日本美術史

絵画や美術とは関係ないけれど、士農工商の「士」はそもそも士大夫の士であって官僚のことだというのはおもしろかった。それを「武士」の「士」であると言い換えたのもなかなか乱暴でおもしろい。いったん王朝が収まると数百年は続くという安定的な体制は、社会を官僚が支えるという文民支配を基本とする考え方があったのだろう、それを考えるならいまの中国も社会主義という概念を皇帝とする官僚王朝がまだ続いているのだと言えたりもするのかもしれない。