2020年は展示を見たらすみやかにブログを更新しようとおもってるんだけど、なかなか思ったようにはならない。1月後半に見た展示をまとめて紹介します。
- 写真家ソール・ライター展Ⅱ(Bunkamura ザ・ミュージアム)
- サラ・ベルナールの世界展(渋谷区立松濤美術館)
- ニューヨーク・アートシーン(埼玉県立近代美術館)
- 山沢栄子 私の現代/中野正貴写真展「東京」(東京都写真美術館)
- 奈良原一高のスペイン 約束の旅(世田谷美術館)
- 肉筆浮世絵名作展(太田記念美術館)
- 対で見る絵画(根津美術館)
- ハマスホイとデンマーク絵画(東京都美術館)
- そのほか「ゴッホ展」「加藤泉」など
写真家ソール・ライター展Ⅱ(Bunkamura ザ・ミュージアム)
Bunkamuraで2回目のソール・ライター展。3年前はなぜ行かなかったんだろう。とあとになって残念な思いをしてたので、今回は意気込んで早めに見てきた。良かったー。きれいな写真だった。都会の良いところ、人が大勢いて、動きがあって、自由で、孤独で。
ニューヨークが生んだ伝説の写真家 永遠のソール・ライター | Bunkamura
ソール・ライターはもともと画家志望で、ナビ派のピエール・ボナールが好きだったということが解説に書いてあって、それで大いに「なるほど」となった。
構図などに浮世絵の影響が見られたりするのは、つまり「日本かぶれのナビ」の影響だったんだなとおもった。
ピエール・ボナールに《小さな洗濯女》という版画作品があって、スナップショットっぽくてとにかく好きなんだけど、これがソール・ライターの写真になにか雰囲気が近いなとおもったのだ。
サラ・ベルナールの世界展(渋谷区立松濤美術館)
確か横須賀美術館でやってて、それで遠いなーとおもったんだったけど、渋谷に来たのでソール・ライター展の前に寄ってきた。
去年の夏からミュシャの《ジスモンダ》を何回見ただろう。このポスターをミュシャに作らせたとき、ベルナールは50歳だったらしい。そんなベテランだったのかと意外におもったけど、考えてみたら座長公演なんだからそりゃそうか。
サラ・ベルナール自身が作成したブロンズ像が出ていて、それが「キメラ」になった自分自身。このひとはいったい自分をどう見てたのだろう? と不思議なきもちになった。
ニューヨーク・アートシーン(埼玉県立近代美術館)
リニューアル休館中の滋賀県立近代美術館を中心に、高松市美術館、和歌山県立近代美術館、国立国際美術館、大阪中之島美術館などのコレクションによってニューヨークのアート史を抽象表現主義以降からニュー・ペインティングまで俯瞰する展示。意外に展示替えがあって、見てきたのは後期日程。
ひとくちに現代美術といっても、作風はさまざまなんだなということはわかるが、ひとつひとつがコンセプチュアルなので、見なれない作家だとまずそこを頭に入れてから見たいということになるので、けっこうたいへんだった。
ちょっと素人には手に余るというか、ここで以前に見た「インポッシブル・アーキテクチャー」もそんなかんじだったなあ。
ミニマルアートとかをひと通り見たあとでバーネット・ニューマンとかマーク・ロスコをあらためて見ると、たくさん描いててすごいなという気持ちになる。なんか感覚がおかしい。
コインロッカーに宮島達男の作品が無造作に収納されてるのよい。
山沢栄子 私の現代/中野正貴写真展「東京」(東京都写真美術館)
TOPの展示を2つまとめて見た。
山沢栄子の実験的な80年代の作品。こういう作風で撮るようになったのは50を超えてからだというのもおもしろかった。1961年の写真集『遠近』がよかった。オリジナルがないらしく、写真集を分解して展示してたのかな。
無人な東京の写真はもう有名でとくに説明も必要ないようなきがする。撮影可で、写真の写真を撮るの、なんかおもしろい。
奈良原一高のスペイン 約束の旅(世田谷美術館)
見てきて、ほんとにすぐ後に訃報が流れていて驚いた。スペインの街の日常的な風景がよかったなあ。わりと後半にあるような。
肉筆浮世絵名作展(太田記念美術館)
豪華でよかった。岩佐又兵衛や河鍋暁斎まで出ていて、サービスがよい。
▶ 開館40周年記念 太田記念美術館所蔵 肉筆浮世絵名品展 ―歌麿・北斎・応為 | 太田記念美術館 Ota Memorial Museum of Art
小林清親がおもいのほかよかったけど、お栄こと葛飾応為《吉原格子先之図》がやっぱりすごかった。ひとつだけ違うコンセプトで書かれているというかんじがする。
与謝蕪村《夜色楼台図》やエドワード・ホッパー《ナイトホークス》と並ぶ、世界新三大夜景図としたい個人的に。
対で見る絵画(根津美術館)
二幅対の掛け軸や一双の屏風といった単体でも組み合わせでも鑑賞できる日本画の企画展。三幅対、四幅対、五幅対の軸も出ていた。
墨が荒ぶる雪村周継《龍虎図屏風》と、華やかで美しい《吉野龍田図屏風》という好対照の大作の屏風が出ていて、これがよかった。ほかに尾形光琳《夏草図屏風》、狩野山雪《梟鶏図》などがみどころ。
ハマスホイとデンマーク絵画(東京都美術館)
ヴィルヘルム・ハマスホイの作品は国立西洋美術館がひとつ所蔵していて、常設展で見かけるたびに静寂すぎるその雰囲気が気になっていた。そういう絵がまとまって見られてよかった。
19世紀後半には、フランスのバルビゾン派、オランダのハーグ派、ロシアの移動派といった戸外制作によるリアリズムを追求したサークルがあるけれど、デンマークにもスケーイン派というのがあったというのは知らなかった。
チラシにも使われている《背を向けた若い女性のいる室内》、《イーダ・ハマスホイの肖像》などがよかった。
ハマスホイのほかには、わざわざ写真のピンぼけのように描いてあるユーリウス・ポウルスン《夕暮れ》が美しいが、この美しさは伝統的な絵画にはない世界なのではないかとおもった。