杏里のデビュー曲「オリビアを聴きながら」といえば、シンガーソングライターの尾崎亜美が手掛けたシティポップ歌謡の名曲として、多くの歌手に歌われてきたカバーの定番曲です。
最近もテレビ番組「あざとくて何が悪いの?」のあざとカラオケでアイドル歌手の井上玲音があざとかわいくカバーして話題になってましたね。見ましたか? 見てないひとのために公式が動画を公開しているのでまず見てみましょう。かわいいですねー。
さて本題に入りますが、とてもたくさんカバーされていて、いろいろなひとがオリビアを聴きながら歌っているわけですが、オリビア以外を聴きながら歌っているひとはいないのでしょうか? ということで調べてみました。その前に、そもそもオリビアって誰なんでしょう?
オリビア……? いったい何トンジョンなんだ……?
はい。オーストラリア出身のポップス歌手、オリビア・ニュートン=ジョン(Olivia Newton-John)さんです。「オリビアを聴きながら」の歌詞に登場する英語のフレーズとほぼ同じ「Making a Good Thing Better」という曲があり、1977年リリースのアルバム『きらめく光のように(Making a Good Thing Better)』に収録されています。
「オリビアを聴きながら」は1978年リリースですからタイミング的にもちょうどいい。このアルバムがレコードプレイヤーのターンテーブルに乗っていた、というシチューションなんでしょうね。
ジャニスってイアン? それともジョプリン?
「オリビアを聴きながら」は今やカバーの定番曲なのでYouTubeで検索してもSpotifyで検索しても「聴きながら」なのはオリビア・ニュートン=ジョンばっかりなんですが、まれに他の音楽家を聴いてるひともいました。まずはこちら!
俳優でフォーク歌手の荒木一郎「ジャニスを聞きながら」。1975年のシングルB面曲で、同年のアルバムにも収録されています。オリビアより3年早い!
ジャニスといえば元祖女性ロックシンガー、ジャニス・ジョプリンがまず思い浮かびますが、この穏やかな曲調はむしろジャニス・イアンかもしれないですね。
「ジャニスを聴きながら」には、あおい輝彦によるカバーもあります。1977年のシングルで、これもオリビアに先行しています。
人としてオーティス・レディングを聴く
続いてフォークグループの海援隊による「オーティスを聞きながら」。1982年の解散前ラストアルバム『だからひとりになる』収録。ボーカルが武田鉄矢ではなく千葉和臣さんということもあって意外とシティポップです。聴いてるのはオーティス・レディングでしょう。亡くなって15年後です。
聞きながら違いっぽいけれども
フォークバンドのアリス「遠くで汽笛を聞きながら」。1976年のシングルなので、これもオリビアに先行しています。ちょっと聞きながらの趣旨が違う気もしますけども。
オリビア vs シルヴィア
高井康生によるソロユニットAhh! Folly Jet(アー! フォリィジェット)が2000年にリリースしたミニアルバム『Abandoned Songs From The Limbo』より「シルヴィアを聴きながら」。
聴いてたのは決してロス・インディオス&シルビア「別れても好きな人」でなく、シルヴィア・ロビンソン(Sylvia Robinson)「Pillow Talk」だそうで、2017年のインタビューによると、なんと「オリビア〜」へのアンサーソングなんだそうです!*1
──シルヴィアの「ピロー・トーク」(1973年)も7インチで持ってきていただいてます。
高井 僕の曲「シルヴィアを聴きながら」の“シルヴィア”は彼女のことです。「オリビアを聴きながら」へのアンサーソングのつもりでした。恋人と別れた翌日、お茶を飲みながらオリビア・ニュートン・ジョンを聴いてるって曲なんだけど、一方その頃、そのフラれた男はシルヴィア・ロビンソンを聴きながら痛飲していた、という曲なんです。
謎多きAhh!FollyJetの過去と現在を紐解く 高井康生インタビュー
オール・プラチナムやシュガーヒルのレーベルオーナーでもあった黒人ソウルシンガーを、いかにも白人ポップス歌手というオリビア・ニュートン=ジョンにあててくるあたりなかなか凝っています。ヴィアとビアで韻も踏んでる。
オリビア以外どんどん聴いてこうぜー!
どーんと時代は飛んで、2012年に公開された映画『TIGER & BUNNY -The Beginning-』の主題歌「リニアブルーを聴きながら」。ロックグループUNISON SQUARE GARDENのメジャー7枚目のシングル。「リニアブルー」にとくに意味はないそうです。じゃあ何を聴いてんのか……。
勝手な印象ですが、ユニゾン・スクエア・ガーデンってアニソンのタイアップが多い気がしますが実際どうなんでしょう。
BORO「ニニロッソを聴きながら」。2009年リリースのデビュー30周年記念アルバム『不老不死な物語』収録。ニニ・ロッソ(Nini Rosso)はイタリアのトランペット演奏家で、1964年に「夜空のトランペット(Il silenzio)」というヒット曲で知られています。
可愛かずみ「星の歌を聴きながら」。1984年のファーストアルバム「天使のデザート」に収録。
渡辺満里奈「バラードを聞きながら」。1987年のセカンドアルバム「EVERGREEN」収録。ジャンル名になっちゃってけっこうくくりが広い。
西城秀樹「スタンダードを聴きながら」。1988年のアルバム『33才』に収録。やはりジャンル名。
八代亜紀「昭和の歌など聴きながら」。2008年のシングル。ジャンル名の決定版というか、昭和演歌の大御所がこういうタイトルの曲をリリースするのは、ちょっと自己言及っぽさありますね。聴いているのは「なみだ恋」か「おんな港町」か「舟唄」か、はたまた「雨の慕情」か。
タイトルでは聴いていませんが、キング・オブ・ロックンロール、忌野清志郎のラストアルバム『夢助』収録の「激しい雨」には「RCサクセションがきこえる」という有名なフレーズがありますね。
聴きながら奏でるピアノ曲
ピアニストの西村由紀江による「オルゴールを聴きながら」。1990年リリースのアルバム『風色の夢』に収録。ヤマハ音楽教室の教材として人気のピアノ曲だそうです。
ピアノ教室で人気の『オルゴールを聴きながら』、作曲者の西村由紀江が動画でレクチャー|音楽っていいなぁ、を毎日に。| Webマガジン「ONTOMO」
ラバウル小唄をめぐる物語
中谷まり「ラバウル小唄を聴きながら」。歌い手さんのブログによると2010年の新曲だそうです。
「ラバウル小唄」は日本の戦時歌謡で、オリジナルは1940年リリースの「南洋航路」。歌手は新田八郎。なんと父親の歌を聴いていたという物語ですごい!。
以上、けっこういろいろな音楽を聴きながら歌っているひとがいることがわかりました! みなさんも何か聴きながら歌ってるひとを見かけたら教えてください。
いろんなオリビアを聴きながら
おまけとして、いろんなひとがオリビアを聴きながら歌っている様子を見てみましょう。
とてもオリビア・ニュートン=ジョンを聴いてるとは思えないハナレグミとスカパラ。
作者である尾崎亜美によるセルフカバー。
やっぱり歌が上手い! 坂本冬美。
80年代アイドルから河合奈保子。
元モーニング娘。ごっちんこと後藤真希。
モーニング娘。15期メンバー、おんちゃんこと北川梨央。
元Juice=Juice、ちゃんさんこと宮本佳林。在籍当時です。
ということで、モガ・ザ・5円の「遠くで汽笛を聞きながら」カバーを聴きながら終わります。これめちゃくちゃいいですよね。
*1:※インタビューの掲載年を勘違いしていたのでこのくだりは公開後に修正しています。