in between days

表参道で働くシニアのブログ

津野海太郎『編集の明暗』を読んでいる

津野海太郎『編集の明暗』を読んでいる。現在進行系であり読了したわけではないが、書いておきたいことがあったので書いておきたい。

この本は津野さんとかなり年の離れた編集者(@editdisco)が編んだアンソロジーで、2022年に刊行された『編集の提案』の続編なのだけれど、そういった情報をひとつも知らないまま読み始めた。初出などの解説が文章の冒頭に掲載されているのを「なんでやろ?」となっていたのだが、妙に主観がある解説だなと途中で気がついて「編集による後記」に目を通して理解した。

そういうアンソロジーとしてセクションごとにテーマをもって編まれていて、最初が「マチガイ主義」というものについてだった。これは哲学者の鶴見俊輔が『アメリカ哲学』という本で紹介した思想らしい。プラグマティズム(pragmatism)を提唱したチャールズ・サンダース・パース(Charles Sanders Peirce)によるファリビリズム(fallibilism、可謬主義)のことを指すようだ。

鶴見さんのテキストの一節が引用されていて、そこに思索における仮説について曰く、

仮説を選ぶ場合には、それがマチガイであったなら最もやさしく論破できるような仮説をこそ採用すべき

だという。そうして仮説を立てたうえで

マチガイを何度も重ねながら、マチガイの度合いの少ない方向に向かって進む

人間とはそういうものだという。私はここを読んですぐ「アジャイルじゃん!」と思った。

小さい仮説から始めること、すぐに検証をすること、間違っていたらやり直すし、正しかったから次に進む、そういった小さなステップで開発を繰り返すイテレーション型のソフトウェア開発の考え方が、哲学の側から説明されているように感じたのだ。

いやソフトウェア開発におけるアジャイルそのものかというと、むしろ「できるだけ早く失敗しろ」というスタートアップ仕草かな? という気もするし、自分の理解はかなりあやふやですけれど、ググってみると実際に「アジャイルの源泉」のひとつとしてプラグマティズムはあるらしい。

アジャイルの源泉というと日本ではやはり自国の会社でもあるしトヨタ生産方式といった手法の面が注目されるけれど、やはりアメリカでスタートアップやベンチャーが盛んでアジャイルが生まれた思想的な背景はあるものだなと感じた。

こんなところにつながりがあるのもすごい偶然だと少しばかり感動したが、よくよく考えたなら著者の津野海太郎さんといえば『本とコンピュータ』なわけであり、ITの話が関係してくるのも当たり前なのだ。と思い直して読み進めたら、2009年に東京大学で開催された「ウィキメディア・カンファレンス」での基調講演というテキストが出てきて「ですよねー」となった。

ウィキメディアンのイベント日本初開催、国会図書館長ら講演 - INTERNET Watch

ところで昨年末にも大阪でもウィキメディアのカンファレンスがあって、そこで聞いた話もいろいろと興味深かった。