2月18日から3日間にわたって開催されたDevelopers Summit 2026に参加しました。

いつもと同じようでちょっと違ったデブサミ2026
デブサミといえば2006年からずっと目黒の雅叙園が会場で、コロナ開けの2024年が例外的に羽田だったりしたものの、豪華な内装に囲まれながら内製開発の話を聞いたりするのが実に場違いでそれが実によかったりもしたわけですが、今年は改装中とのことで有明での開催。
いつものようにちょっとしたランチが提供されたり、翔泳社とオライリーが本を売っていたり、セッション会場にはワイファイがないものの休憩スペースではちゃんと参加者が仕事できたり、そういったホスピタリティはいつものデブサミでありながら、今年は初めての試みとして半日の「Dev x PM Day」が追加され、チーム作りやビジネスに関連するセッションが集められていました。
変革を推進するために本当に必要なのは、開発(Dev)とプロダクトマネジメント(PM)の両輪を回せる、次世代のリーダーシップです。
…… CTOやCPOは、いかにして不確実性と向き合い、事業インパクトを最大化しているのか。組織の壁を越え、未来を創るためのリアルな知見がここにあります。
PM Dayはスーツ着用率が高そうと勝手に思ってましたが、意外と会場の雰囲気はあまり変わらず開発現場然としていたように思われました。ただ後で聞いたところ1日目だけ参加という方も多かったそうで、参加者そのものは2日目以降と入れ替わりがあったようです。
オライリーの書籍販売ブースも1日目は下の写真のようにPM・PdM向けのマネジメント系書籍が平台の一角を占めており、オライリーでもプログラミング言語やOSSや開発手法ではない領域の本がこれほどたくさん刊行されてきたのかと驚きつつ、そこにソフトウェア開発者のキャリアという側面があるところがオライリーらしさでもありますね。

現実的で具体的になったAI関連のセッション
全体的な感想ですが、PMデイも含めてやはりAIをテーマとしたセッションが多かった印象。AIネタは2024年で一気に増えてずっと多いのですが、タイトルにとりあえず「AI時代の」と付けてみたようなセッションも見かける中で、ソフトウェア開発における実用性にフォーカスした2024年夏の和田卓人(t-wada)さんたちのパネルが印象に残っています。
👉️ 生成AIの得意と不得意を知って開発の仕事に役立てよう~最新研究事例から見えてきたこと~ | Developers Summit 2024 Summer(2024.07.23-24)
それから2年近く経ち、まさに日進月歩な展開でAIによる開発支援はすっかり一般的なものになりました。デブサミのような登壇発表でもただ先行的な実践事例を紹介するだけでなく、各開発組織・チームでどのように導入するのか? を前提としたセッションも増えたように思います。それだけ現場が切迫感をもってAIに取り組む必要性を感じているということでしょう。
私が聴講できた中では以下のセッションがAIを扱っていて興味ぶかい内容だったように思います。
- AI駆動開発「激動の1年」を振り返る!コミュニティリーダーたちの本音トーク2026 | Developers Summit 2026・Dev x PM Day(2026.02.18-20)
- 「触らないとわからない」を武器にする──AI時代のエンジニアが獲得すべき肌感覚と、没頭できる時間の確保 | Developers Summit 2026・Dev x PM Day(2026.02.18-20)
- Claude Codeで実践するスペック駆動開発入門 | Developers Summit 2026・Dev x PM Day(2026.02.18-20)
デブサミで話した内容をブログに書きました。#devsumi
— 𝙎𝙝𝙞𝙣𝙜𝙤 真吾 (@yoshidashingo) February 20, 2026
Claude Codeで実践する仕様(スペック)駆動開発入門 - yoshidashingo https://t.co/6dgGvTx8vz
他には以下の技術的なセッションもそれぞれ満席で、AIだけでない幅広いテーマが関心を集めていることをうかがわせました。
- HTTP最前線 | Developers Summit 2026・Dev x PM Day(2026.02.18-20)
- とっても大きく育ったプロダクトを整頓しよう ~ モジュラーモノリスへ向けた段階的アプローチ方法~ | Developers Summit 2026・Dev x PM Day(2026.02.18-20)
公募セッションの採択を担当した身として、この公募を選んだことが間違ってなかったと思えるとても良い発表だった! #devsumi #devsumiA https://t.co/9aLQYHZBHm
— broccoli (@nihonbuson) February 20, 2026
▶︎ 参照記事: Developers Summit 2026 Day2, 3 公開資料・Xアカウントリンクまとめ
とくに印象的だったAI SlopとOSS開発に関するパネル
そんな状況で最も興味深かったセッションが、オープンソース開発におけるAI Slopの問題を取り上げた和田裕介(@yusukebe)さんたちのパネルディスカッションでした。
👉️ Hono開発者とユーザーが語る「AI時代にフレームワークは必要なのか?」 | Developers Summit 2026・Dev x PM Day(2026.02.18-20)
タイトルやセッション概要を見る限りは、それこそAI時代のフレームワーク開発をOSSの「Hono」開発者という立場からyusukebeさんが語るという形を想定されていたプログラムではないかと思うのですが、ちょうど2026年に入ってからAIによってオープンソースの開発やビジネスがネガティブな影響を受けた事例が相次ぎました。
- Tailwind CSSの騒動から考える、生成AIがOSSビジネスを壊す瞬間 - Sweet Escape
- なぜcurlプロジェクトはバグ報奨制度を廃止したのか?:セキュリティニュースアラート - ITmedia エンタープライズ
Tailwind CSSはAIの発展によってOSSならではのフリーミアムなビジネスモデルが破綻してしまった事例。後者のcURLはまさにAI Slop、つまり「生成AIによって生産された質が低く・価値の乏しい大量コンテンツ」がオープンソース開発の領域で引き起こした事件でした。
さらにHonoにもAI Slopと言えるプルリクエストが送られてきて問題に直面せざるを得なくなった経緯や、AIが自分でフレームワークを選んで書き始めるため人間が技術選定しなくなるのではないかといった懸念など、AIとOSS開発をめぐるざまざまな現状が話されていました。AIについてこれほど現実的で喫緊な課題を取り上げたパネルはこれまで経験がなく、たいへん考えさせられました。
#devsumi #devsumiA ではAIが素晴らしいという話をしているかもしれないけれど #devsumiB ではAI Slopめっちゃつらいという話をしている
— モーリ (@mohri) February 20, 2026
こうした状況から、先日ついにGitHubがプルリクエストを無効にできるようにもしています。
👉️ GitHub、リポジトリに対するプルリクエストをコラボレーターのみに制限する、あるいは完全に無効にする設定を可能に - Publickey
OSSとAI Slopとネブラスカ
このパネルでは、AI Slopへの対策として結局は人と人のつながりが大切になるのではないかという話もありました。誰がプルリクエストを送ってきたのか、相手はちゃんとした開発者なのか、普段はどういった活動をしているのかSNSで確認するといったことが必要になるのではないかということでしょうか。それで思い出したのが、懐かしい「伽藍とバザール」の比喩です。
伽藍というのは中央集権的なソフトウェア開発で、1990年代以前にはフリーなソフトウェアでも伽藍な開発がされていたそうです。ところがLinuxが、利用者が誰でも開発に参加できる混沌とした市場(バザール)のような開発手法で成功したことからこの比喩が生まれ、オープンソースという言葉も生まれ、オープンな開発はおよそ四半世紀にわたって受け継がれてきました*1。しかし、もうそれほどオープンでもいられない状況になってきているのかもしれません。
#devsumi #devsumiB 開発モデルとして「伽藍」から「バザール」へという流れがあってオープンソースという考え方ができたのが、AIが流入してきたことでバザールが水没して伽藍にまたこもるようになりつつあるのかも
— モーリ (@mohri) February 20, 2026
もちろんそれなりに大きなOSS(それこそLinuxカーネルとか)では既にある程度の組織的な開発体制を敷いているでしょうが、問題になるのはいわゆるネブラスカ問題との合わせ技といいますか、それこそバザールの個人商店たちではないでしょうか。
最近、Daniel Stenbergがネブラスカ問題とも評される負担を各所で話しているのは確かなのだけど、単に多くのオープンソース開発者が何十年もそうしてきたことを説明している側面が強く、彼自身はそれを誇りにしている。何故今更これを言っているのかといえば、AI生成によるクソ雑プルリク急増の影響。 https://t.co/b7QpRRbEO9
— Shuji Sado (佐渡 秀治) (@shujisado) October 5, 2025
ちなみにネブラスカ問題というのは、このxkcdのイラストで知られるオープンソースの小さな依存コンポーネントが抱える大きな問題のこと(命名は八田真行氏による)。
▶︎ 参考論文:オープンソース開発におけるネブラスカ問題 | Jxiv, JSTプレプリントサーバ
とはいえ水没のイメージはただの杞憂かもしれず*2、逆にAIを活用して多くのネブラスカ住民が救済されるのかもしれません。ただ現状では、AIによってOSS開発は何かしらネガティブな影響を受けており、それを解消するため四半世紀ぶりに開発スタイルを大きく考え直す時期にきているのかもしれません。
そんな感慨を抱えながら最終日の最後のセッションだったB会場を後にし、懇親会へと赴きました。たいへん美味しゅうございました。

最後に会場の向かいの建物の写真も載せておきます。秋にはここでYAPCが開催されるのかと思うとまた感慨深さがありますね。

それではyusukebeさんの素敵な動画を見ながらお別れします。ご清聴ありがとうございました。
P.S. かっこよいのでハイプしときました(参考:動画のハイプ機能 - YouTube ヘルプ)!!


