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Juice=Juiceは「盛れ!ミ・アモーレ」のバズをどうやって成功させたのか? TikTokに投稿された公式のショート動画を数えてみた

Juice=Juiceという女性アイドルグループの「盛れ!ミ・アモーレ」という曲がバズっている。

と言うと「いーやワシは聞いたことない」というひとが必ず現れるのだけれど、テレビのワイドショーには「SNSで話題の」という前フリで出演していますし、春の音楽特番にも次々と呼ばれているようなのでここはバズっているという体で先を読み進めてください。

という前置きを書いてる時点でこの筆者自身の「バズ」に対する感度の低さが露呈してしまっていますが、いやホントにハロプロファン(以下、ハロオタ)はここ何年も「こんなに素晴らしいグループの最高のパフォーマンスを、なぜハロオタ以外が知らないのか?」という疑心暗鬼に取り憑かれてきたので、メンバーがテレビに出たりマクドナルドのSNS広告に抜擢されても「これってホントにバズってるんだよね?」という腰の引けた状態になってしまっていることは否めないのである。

そのバズはどこから?

そんな願ってもなかったバズはどこからやってきたのだろう? 遠いお山の向こうから? いえいえみんなのスマホから。XやYouTube、さらにはTikTokのショート動画でもバズが起きていた。

Juice=Juice (@juicejuice_uf) | TikTok

Juice=Juiceはモーニング娘。などと同じハロー!プロジェクト(以下、ハロプロ)に所属しているが、つい最近までサブスク配信を解禁していなかったことからもわかるように、ネット系のサービスやマーケティング手法との親和性は高くない印象があった。

とくにTikTokは、メンバーは楽しそうに「踊ってみた」などを投稿しているものの、いまひとつ自分たちの魅力を広くアピールするにはいたっていないように思えたのだった。

ところが2025年の秋ごろ「新曲がTikTokでバズってるらしい」と聞いてアプリを開くと、サビで足を高く蹴り上げる特徴的な振り付けの「踊ってみた」が次々に流れてくることに驚き、グループのメンバー自身による「踊ってみた」もたくさん投稿されていた。

Juice=Juice - 盛れ!ミ・アモーレ(1サビ ver.) | TikTok *1

これは今までにない努力があったのではないか? いったい何本の関連動画が公式に投稿されたのだろう? ということで「盛れ!ミ・アモーレ」(以下、盛れミ)がライブで初披露された8月から、Juice=Juiceの公式TikTokアカウントの投稿数を数えたみた。その変遷が次の表である。

年・月 投稿数 1日平均
2025年8月 13 0.4
2025年9月 14 0.5
2025年10月 54 1.7
2025年11月 69 2.3
2025年12月 51 1.6
2026年1月 46 1.5
2026年2月 60 2.1

見ればわかるように10月に急増している。盛れミは10月8日リリースなので、そのキャンペーンとして展開されはじめたということだろう。現在もずっと1日に2本ほど土日祝関係ないペースを保っており、動画を用意するだけでもかなりコストをかけたSNSプロモーションに思われる。

これはハロプロ全体の傾向というわけではなさそうで、ほかのグループの2月の投稿数はこのようになっていた。グループの担当者によって投稿数や投稿内容に違いが出ているようだ。

グループ 投稿数
モーニング娘。 34
アンジュルム 26
つばきファクトリー 27
BEYOOOOONDS 43
OCHA NORMA 16
ロージークロニクル 46

ちなみにTikTokにおけるバズといえばKAWAII LAB.(以下、カワラボ)だが、FRUITS ZIPPERアカウントの2026年2月の投稿数は100本を超えていてさすがというしかない。

TikTokに投稿された盛れミの動画を分類してみる

盛れミのバズは、最初から狙ったものではなかったように思える。というのも両A面シングルの1曲目は失恋にも気丈に振る舞う「四の五の言わず颯(さっ)と別れてあげた(以下、四の五)」というビートの強いロックナンバーで、意外なことに盛れミは2曲目という扱いだった。

そこでTikTok公式アカウントの月ごとの投稿数を、さらに動画の内容で分類してみた。次の表は左から「盛れミを使った動画」「四の五を使った動画」「今回のシングル以外の自分たちの楽曲」「他のアーティスト(ハロプロの別グループ含む)の楽曲(踊ってみたなど)」「リリースやイベントの告知」「それ以外の企画」ごとに集計している。

年・月 盛れミ 四の五 他の自曲 他人の曲 告知等 その他
2025年8月 0 3 1 5 1 3
2025年9月 6 2 2 2 0 2
2025年10月 36 14 2 1 1 0
2025年11月 42 9 2 4 12 0
2025年12月 36 3 2 9 1 0
2026年1月 40 0 0 4 0 2
2026年2月 30 1 16 10 3 0
合計 196 37 26 40 19 10

時系列で見ていくと、8月16日のハロプロ全体コンサートでの初披露に先立つ15日に 「四の五」のMVがYouTubeで公開されており、このMVの切り抜きがまず投稿されはじめた。

@juicejuice_uf 2025年10月8日発売 Juice=Juice NEWシングル「四の五の言わず颯と別れてあげた」 Promotion Edit公開中🎥 #juicejuice ♬ オリジナル楽曲 - Juice=Juice

一方の盛れミはMV公開が遅れて9月1日で、やはりMVの切り抜きが投稿された。続いてメンバーによる盛れミと四の五の踊ってみた動画が毎日各1本ずつ、シングルリリースを翌週に控えた9月29日から投稿されはじめた。

@juicejuice_uf 2025/10/8 Release 「四の五の言わず颯と別れてあげた/盛れ!ミ・アモーレ」 #juicejuice #盛れミアモーレ #遠藤彩加里 #helloproject ♬ オリジナル楽曲 - Juice=Juice

衣装や現場から察するにMV撮影時にあわせて撮影されたもので、それぞれメンバー11人分を11日かけて投稿する想定だったのだろうと思われる。

バズの気配にどう対応するのか?

ここで想定外の事件が発生する。ハロプロ所属の後輩グループOCHA NORMA(オチャノーマ)が盛れミを好きすぎて、自分たちのYouTubeゲーム配信企画のちょっとした隙があれば盛れミを踊るというムーブを繰り返し、視聴していたあるオタクが「隙あらばアモーレ」とコメントした。

これをメンバーの米村姫良々が拾って「それです。隙アモでいきましょう」と発言したことから、ちょっとした隙き間時間に盛れミを摂取する「隙アモ」がハロオタの間で流行ったのだ。

これによりMVを見たらXで報告するとか語尾を「アモ」にするといったムーブが増加し、TikTokでは #隙アモ のハッシュタグで踊ってみたをはじめとするさまざまなショート動画が投稿されるようになってきた。例えばこれはメンバーによる「弾いてみた」動画である。

@juicejuice_uf #盛れミアモーレ #有澤一華 #violin #三重奏 #隙アモ #juicejuice #helloproject ♬ 盛れ!ミ・アモーレ - Juice=Juice

それに加えて情熱的なラテン歌謡が一度聞いたらクセになるという楽曲自体の魅力もあり、YouTubeでもTikTokでも盛れミの再生数が四の五をかなり上回っていた。とくにMVの再生数は、過去に公開されたどんなMVより速いスピードで再生が回り続けていた。

この傾向にSNS担当者が素早く対応したことが、今回のバズを成功させた要因のように思える。つまり、上記の表からもうかがえるように盛れミの追加動画をどんどんと投下していったのだ。

当初に用意した動画に続けて、バズりはじめのタイミングを意識したのかメンバーの名前入りのバージョンが1人ずつ投下された。

@juicejuice_uf Juice=Juice #盛れミアモーレ 💃 #隙アモ #川嶋美楓 #mifu_kawashima #juicejuice ♬ 盛れ!ミ・アモーレ - Juice=Juice

続けて私服からの変身、おふざけの早回し、ツアーファイナル(武道館)からの切り抜きなどがあり、個人動画だけでなくフェス出演時の全員集合など、盛れミの新しい動画が続々と供給された。

この時期をリーダーの段原瑠々(だんばら・るる)は次のように語っている。

TikTokにあげたリレー形式で撮った映像が一晩で100万回再生されていたときに「なんか違うぞ」って感じましたね。「桁を数え間違えたかな?」ってくらいびっくりしました。

Juice=Juice 段原瑠々が語る変化の1年 「盛れ!ミ・アモーレ」のバズを経て――リーダーとして向き合う、今 - Real Sound|リアルサウンド

全員参加のリレーダンス動画が投稿されたのは10月18日なので、リリースから10日後には盛れミがハロオタを超えて広まりつつあったということだろう。

@juicejuice_uf 2025/10/8 Release 「四の五の言わず颯と別れてあげた/盛れ!ミ・アモーレ」 #juicejuice #盛れミアモーレ #隙アモ #helloproject ♬ オリジナル楽曲 - Juice=Juice

その後もYouTubeのライブ動画からの切り抜きや、イベントなどの機会に会場の片隅で1人ずつ撮影された隙アモなど、現在までざっと15種類は超える盛れミ動画が公式で確認できる。

盛れミは「踊ってみた」ときのインパクトもあり(足を高々と上げる振り付けはカッコいいが誰でもできるものではなく、キレイに踊れると自己アピールにもなりそう)、ハマっていたらしいボーイズグループ「パンダドラゴン」の方々が10月後半あたりから投稿しはじめ、11月にはCUTIE STREET、12月には(ポンキッキの)ムックさんなど、有名無名のクリエイターへと隙アモが広がっていった。

これが楽曲自体の評価にもつながり、リリースから2カ月後にビルボードダウンロードソングの週間ランキングに再チャートインするという驚きの展開をみせている。

11月末にはiTunes Storeやレコチョクでもデイリー1位になっていたそうだが、ショート動画やライブ動画から楽曲そのものが気に入って購入していることは想像に難くない。まだハロプロがサブスク超解禁していなかったため、手元のスマホで聞くにはダウンロード購入するしかなかったのだ。

一方で、この2月から公式は少し違う動きを始めている。盛れミの人気にあわせて投稿を控えていたこれまでのJuice=Juiceの楽曲の踊ってみたを増やしているようだ。

@juicejuice_uf #プライドブライト #juicejuice #江端妃咲 #KisakiEbata #helloproject ♬ プライド・ブライト - Juice=Juice

バズを一過性のものに終わらせず、グループそのものを印象付けるためだろう。カワイイだけじゃない女性アイドルという立ち位置を確立できることを願ってやまない。

バズに対応するための投稿戦略

前章でまとめたTikTokの投稿傾向からは、バズの気配をどのように本当のバズへとつなげていくかの道筋が読み取れる。ざっくりまとめるなら次の流れになるのではないだろうか。

  1. バズる可能性があるものにコストを分散させてコンテンツを用意する
  2. バズる気配が見えたらコストを集中し、コンテンツをどんどん投入する
  3. バズったらまたコストを分散して、次のコンテンツを用意する

はじめから「これをバズらせよう」と狙っていくのではなく、2曲入りのシングルをリリースするなら両方の動画を用意する。手広くコストを分散して、どれかバズってくれるまで続ける。

運よくバズる兆しがあるなら、用意していたコンテンツにこだわらず、バズり始めた楽曲のコンテンツにコストを集中して作成する。バズる気配を逃さない。そしてバズったらまた別のバズを求めてコストを分散させていく。この分散と集中のバランスが大切だったのではないだろうか。

ということをさも発見したかのようにまとめたが、これはカワラボを擁するアソビシステムの中川社長が「バズった日が本当のリリース日」という言葉ですでに語っていることでもある。

最近はTikTokでバズった日がスタート、つまりその時が本当のリリース日だと考えている。

ちょっとバズった瞬間にどれだけ全体で動けるか、だと思う。どんなにおいしい餃子でも、いまは一方的な「おいしい」に誰も反応してくれない。100人が「おいしい」と発信したあとに広告を打つから意味がある

「バズった瞬間がリリース日」。アソビシステム 中川悠介 が見据えるカルチャーとブランドの新・共創関係 | Business Insider Japan

盛れミがちょっとバズった10月18日あたりから公式が集中して動き、おそらく世間的にバズったといえる状態になったのは11月に入ってからだと思えるが、それでも手を休めず手を変え品を変え、視聴者の望んでいる形を模索しながらコンテンツを投下し続けるという教科書どおりの攻めの姿勢がバズに貢献したといってもよいだろう。その最たるものがこの動画。

@juicejuice_uf 年下高身長ペア👓🍎 #遠藤彩加里 🍎08line/168cm #林仁愛 👓11line/167cm #juicejuice#盛れミアモーレ#隙アモ ♬ 盛れ!ミ・アモーレ - Juice=Juice

これは左側の新メンバー・林仁愛(はやし・にいな)が高身長眼鏡女子で話題になり、コメント欄に「リムレス眼鏡」を熱望する声が繰り返しあふれていたことをうけてのリムレス眼鏡動画であり、実にたくさんの「いいね」が付いた。しかもこれはメンバープロデュースだったという。

̇̽♔ ͙̊リムレスやで  江端妃咲 | Juice=Juiceオフィシャルブログ Powered by Ameba

江端さんはほかにも「踊ってみた」動画が増えてきたところで左右反転したダンスチュートリアル動画をプロデュースするなど、出演だけでなく制作の面でもバズに寄与していた。スタッフとメンバーが協力してチャンスを逃すまいと施策と模索を続けた姿勢は本当に素晴らしい。

そのほかYouTubeでの動きなど

この記事では公式がどうTikTokでバズに対応したかにフォーカスしたけれど、バズの起点はほかにもある。さまざまな話題はXで可視化されたし、とくにYouTubeでMVの再生数がウナギ上りだったことが全体を牽引したことは間違いないだろう。

MVの再生数には他の推し活界隈との交流も寄与したようで、ハロプロが苦手とするTikTokが回ったのも、TikTokに慣れた他界隈のオタクが先導してくれた面があるのかもしれない。

【衝撃】Juice=Juice「盛れ!ミ・アモーレ」ライブ映像のコメント欄にジャニヲタが大量流入wwww : ウルフニュース|ハロプロまとめ

さらにYouTubeでは、公式がここぞというタイミングでライブ動画を公開してきたことも大きい。ツアーが開始されたら翌週には初日の動画を、特別なバンド編成のコンサートがあればその動画を、ツアーファイナル後にその動画、さらに盛れミ以外の曲が話題になればそのライブ動画と、この半年で3本の盛れミを含む10本のライブ動画が公開されている。

Juice=Juice LIVE - YouTube

もともとJuice=Juiceはライブ動画の公開が多く、上のリンク先の再生リストには30本近いライブ動画がまとめられている。

さらにツアーファイナルの11月19日にはTHE FIRST TAKEでも盛れミを披露している。

TFTに出演できるだけでもバズったなという気がするけれど、それに満足せずバイオリンにボイスパーカッションにホイッスルと話題になる要素を詰め込んだ攻めの動画になっている。

さらにメンバーやスタッフだけでなく、盛れミのライブ動画が話題になったひとつに揃いすぎたオタクのコールの魅力があったわけですが、そのあたりの経緯はLINEヤフーでハロプロ同好会の特別顧問を務める川邊健太郎(@dennotai)氏がまとめている。

ぜんぜん盛らない「盛れ!ミ・アモーレ」の真実〜ライブごとに火力を上げ続けるオバケ楽曲〜 / Xユーザーの川邊健太郎さん

そのほか別の視点を与えてくれる記事やインタビューも多数あるので貼っておきます。

そもそも2025年6月に加入した林さんに眼鏡をかけさせるという決断が後々に効いてきてるわけで、バズをあらかじめ予測することの難しさを感じさせる。それでもJuice=Juiceに続いて他のハロプログループも広く人気になってほしいなあと願うばかりである。

*1:このページをスマホアプリで見ると「1.1万件の投稿」と出るが、PCだとかなり少ない数になるのはなぜだろう?