in between days

表参道で働くシニアのブログ

ソニーとHEATWAVEと「満月の夕」

ヒートウェイヴ山口が、かつて所属していたソニーに対して「(廃盤になっている)自分たちの楽曲をiTMSなどで配信して欲しい」と申し入れ、ソニーと物別れに終わっているという話題はかつてこのダイアリーでも取り上げました。

ただ、その後もHEATWAVEのアルバムのうち『1995』と『NO FEAR』はMoraから配信されていたのですが、その2枚のアルバムも今年になってから配信停止になっていたようです。

結果、昨年の12月11日にソニーから配達証明付きの文書が届いた。要約すると、「ソニーの見解に賛同するならば、配信等を行うこともやぶさかではない」との内容だった。

我々が契約した90年当時、世の中には「配信」なんてことを考える人は居なかった。したがって、契約書の中にそんな項目は盛り込まれていない。そこで文化庁が後に「送信可能化権」と云う法律を作った。文化庁の見解によると、実演家(つまり我々)とレコード会社が配信に関しては等しく権利を保有していると云う法律である。つまり我々の許諾なしに、勝手に配信したり、それを止めたりは出来ないはずなのである。

しかしソニーの文書には「送信可能化権を含む一切の権利を当社が保有すると理解している」と記されている。そこの見解が大きく食い違っている。不本意ながら、話し合いがうまく行かない場合、法廷で解決しなければならないと思っている旨、弁護士が先方に伝えた。

そして、最近。我々の音源は何の連絡もなしに削除された。

ROCK'N ROLL DIARY - 満月の夕*1

ソニーにはソニーの商売の理屈があるので(短期的に)配信停止はしかたないのかもしれませんが、その配信停止になった楽曲のなかに阪神大震災を題材にとった「満月の夕」が含まれているというのが、時期的なこともあってしょんぼりさせられます。

満月の夕

「満月の夕」がどういう曲か、は配信停止になったアルバム「1995」のセルフライナーノートに書かれています。

一方、95年1月。地震が起きた。

俺はテレヴィを観ているだけで、何もすることが出来なかった。

そんな時、俺を神戸に拉致してくれたのがソウル・フラワー・ユニオンの面々だった。「おまえも自分の目で見るべきや」、と。タフな奴等。

俺はその眺めに言葉がなかった。未だにどう書いていいのかも分からない。

そして俺とヴォーカルの中川は共に曲を書いた。別に震災を歌にするつもりはなかった。Aメロを共に書き上げ、後はアイデアが湧いて来た時に連絡を取り合うことになっていた。

ある日、中川から連絡があった。「あの歌、書き上げたで。もう神戸で歌ってるで。いい曲やで!」、と。こうやって「満月の夕」は生まれた。完全なるフライングだ。けれど、彼が書き上げたものは素晴らしかった。きっと書き上げずにはいられなかったのだろう。俺はそう理解した。それは彼等の被災地での活動(メディアは殆ど取り上げなかったが)から生まれた歌なのだ。

俺は彼等のヴァージョンを歌うことは出来ない。だから東京でマスメディアが垂れ流す情報を観ていただけの立場から歌を仕上げた。この2つのヴァージョンの違いが示しているものは大きい。良し悪しの問題ではない。

1995

山口は今回の記事をこう結んでます。

「満月の夕」を含む、削除されたそれらの歌が死んだとは僕は思わない。昔から、歌は時代に合わせて形を変えながら、歌い継がれてきたんだから。

あのー、僭越ですけど、ここにコードも載せておくんで、歌いたい人はおおいに歌って下さい。それが一番嬉しい。歌詞は「discography」のところにあります。

ROCK'N ROLL DIARY - 満月の夕

会社帰りに、駅から家まで歩くあいだふと口ずさんでみました。ほんと、いい唄だ。

さまざまな「満月の夕」

幸いなことにHEATWAVEはその後ポリドールに移籍し、そこから「レーベルの垣根を越えた」ベスト盤がリリースされています。これでHEATWAVE版の「満月の夕」を「購入」することができます。

LONG LONG WAY-1990-2001-

LONG LONG WAY-1990-2001-

シングルのカップリングでライブバージョンも。

ノーウェアマン

ノーウェアマン

このオムニバスにも入ってます。

J-Standard 003「元気」

J-Standard 003「元気」

  • アーティスト: オムニバス,JUN SKY WALKER(S),LA-PPISCH,PSY・S,永井真理子,岡村孝子,チャクラ,GOING UNDER GROUND,中村一義,CHARA,今井美樹
  • 出版社/メーカー: BMG JAPAN
  • 発売日: 2004/04/21
  • メディア: CD
  • この商品を含むブログ (4件) を見る

永井真理子からGOING UNDER GROUND*2まですごいセレクション!

そして、多くのひとにカバーされているのがソウルワーユニオンのバージョン。まずは本家SFU版はベスト盤で聴けます。

GHOST HITS 95?99

GHOST HITS 95?99

中川敬によるセルフカバーもあります。

マージナル・ムーン

マージナル・ムーン

  • アーティスト: ソウル・フラワー・ウィズ・ドーナル・ラニー・バンド
  • 出版社/メーカー: キューンミュージック
  • 発売日: 1998/07/08
  • メディア: CD
  • クリック: 5回
  • この商品を含むブログ (7件) を見る

被災者であるガガガSPによるカバー。アンサーソング「問題はない」をカップリング収録。

満月の夕

満月の夕

  • アーティスト: ガガガSP,中川敬,コザック前田,山口洋
  • 出版社/メーカー: ソニー・ミュージックレコーズ
  • 発売日: 2003/01/17
  • メディア: CD
  • 購入: 1人 クリック: 5回
  • この商品を含むブログ (22件) を見る

ジャズシンガー酒井俊のカバー。これは再録バージョン。

夢の名前

夢の名前

中川敬と行動をともにしている大熊亘のバージョン。

豚の報い

豚の報い

平安隆さんもたしか中川人脈だったかな。

かりゆしの月

かりゆしの月

この方は存じ上げませんでした。沢知恵さんのカバー。

死んだ男の残したものは

死んだ男の残したものは

もっとあるのかもしれませんね。こちらのサイトにもまとまっています。

震災文化─満月の夕

*1:改行は引用者による

*2:「トワイライト」は超名曲