知ったかぶり週報さんでいつも見かけて気になっていた出版関係の勉強会「でるべんの会」に行ってきました。というのもそれこそ90年代には足しげく通った「渋谷パルコブックセンター(PBC)」がテーマというので。
講師は、現在はリブロ池袋本店にお勤めの矢部潤子さん(「WEB本の雑誌」でコラム連載中)と、元PBC渋谷店営業の梶村陽一さん。
- 2008年1月18日(金)1月勉強会・『渋谷パルコブックセンター 90年代の現場から』 - でるべんの会(出版関係勉強会)blog
- めくるめくめくーるな日々 特別編「坂の上のパルコ」 - WEB本の雑誌>本や横丁>連載堂書店
いくつか面白い話があったので自分の考えもまとめて箇条書きで。
- パルコブックセンターはよくリブロと同じに見られるが、堤清二率いるセゾングループの文化戦略の一部であったリブロと、増田通二によって作られたパルコのPBCではやり方も違っている(もっとも2000年にリブロがPBCを統合しており、さらにリブロは2003年に取次の日販に買収されている)。
- 1987年に西武百貨店渋谷ロフト館オープンによりリブロ渋谷店も開店(確か5階だった?)。リブロの文化戦略の一環として、思想・文学・アートなどのハイカルチャー路線で狭いながらも展開。バブル前夜のセゾン全盛期。
- その約10年後の1998年にブックファースト(BF)渋谷店が開店。(客席からの関係者発言によると)BF渋谷店かつての「リブロ渋谷店」の再現を目指し、PBC渋谷店は「こうなってはいけない店」という位置づけだったらしい。ただし時代はポストバブルで出版不況真っ只中。BFはビットバレーに活路を見出したとのこと(さらに約10年後の2007年にBFは移転を余儀なくされているがこの10年周期というのは面白い)
- ちょうどそのリブロとBFの中間、1993年にPBC渋谷は開店している。西武が、現在はタワーレコード渋谷店になってる建物に「PAO」という子供服専門館(「母と子供の百貨店」)をオープンしたため、子供服売り場だったパルコパート1地下は売り上げた落ちてしまい、じゃあ本屋でもやるかという理由ではじめたところもあるかもしれないとのこと。
- 時代はちょうどバブルがはじけた直後くらい。渋谷はチーマー全盛期(コギャルはもうちょっと後?)で、矢部さんはこういう若者に本を売らなければならないのかと途方に暮れたとのこと。開店時に特に戦略があったわけではなく、普通の本屋を作ろうとしたとのこと。
- しかし翌1994年になると、書店側が狙ったわけでもないのに、だんだん変な本が売れるようになって困った。代表格がこれ:
- 作者: 天久聖一,タナカカツキ
- 出版社/メーカー: 扶桑社
- 発売日: 1994/12
- メディア: 単行本
- 購入: 2人 クリック: 6回
- この商品を含むブログ (13件) を見る
- バカドリルも6週連続一位。関連書もどんどん売れて平台がそういった本に占領される事態に。店内では「バカ台」と呼ばれていたとのこと。当時文芸書を担当していた矢部さんは、バカ本はバカ台を越えて広げないというのを死守していたとのこと。今から考えると売れるんだからもっと売れるようにすればよさそうなものだけど、そこは一線を守りたい何かがあったらしい。
- 「トレインスポッティング」も、向かいのシネマライズ渋谷で上映していたこともあって売り上げチャート5週連続1位。1000冊を売ったそうな。
- 当時のパルコにとっての渋谷の特徴=フリーペーパーの「ゴメス」がものすごい勢いで無くなっていた(読まれていた)街。また、カップル(当時の言い方では「アベック」)で来店する客が多く、雑誌や実用書は男女の区別なく展開していたとのこと。
- そういう客層に合わせた本屋の展開を現在のリブロ渋谷店店長である野上由人さんはコラムで激賞しているが、そのコラムの話を振られても矢部さんにはピンと来てなかった様子。むしろ書店側は、客に合わせて棚を作っていったら、そういう本屋になった、という状況だったらしい。ちなみに野上さんのコラムはこちら:
- 仕事の目・遊びの目〜書棚の前で考えること〜 第10回 「パルコブックセンター渋谷店」 - WEB本の雑誌>本や横丁>連載堂書店
そんな感じかなー。メモを取ってたノートを懇親会の会場に忘れてきてしまって、記憶だけが頼りなので何か抜けてるかもしれません。間違いがあればご指摘ください*1。
最後に、個人的な感想としては、パルコブックセンター渋谷店を作ったのは、(勉強会ではそういう話はまったく出なかったけど)、かなりの部分で当時の渋谷をうろついていたレコードと音楽が大好きな若者であって、ヘッドフォンを首にかけてレコード袋を提げたサブカル連中にとっての活字的な知的好奇心を満たす書店という需要に応えたということではないかと。渋谷系とか90年代の渋谷の町を取り巻く文化環境というものから切り離して考えることは出来ないんじゃないかなとおもった。
逆に、パルコブックセンター渋谷店のような本屋が、音楽とサブカルチャーを深く愛する若者に活字を提供していったことが、いまの新しい書き手に影響を与えているのではないか。バカ台もまんざら無駄ではなかったのではないかと思えたりします。
- 作者: どどいつ文庫伊藤,ばるぼら,福井康人,野中モモ,みち,タブロイド,屋根裏,タコシェ
- 出版社/メーカー: 翔泳社
- 発売日: 2008/02/07
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
- 購入: 8人 クリック: 343回
- この商品を含むブログ (38件) を見る
*1:でるべんの会の関係者の方、懇親会の会場の忘れ物で黄色い表紙のノートが届いてたら私のです。mohri.taroh@gmail.comまでご連絡いただけると助かります。すいません