緊急事態宣言が明けて、美術館も6月初旬からあちこち再開してきました。まずどこに行くか?
2カ月くらいブランクもあるので、大作が出てるブロックバスター展にいきなりでなく、かつ再開されてる期間が短いところから見ていくことにしました。
- ドローイングの可能性(東京都現代美術館)
- 画家が見た子ども展(三菱一号館美術館)
- 奇才 江戸絵画の冒険者たち(江戸東京博物館)
- 神田日勝 大地への筆触(東京ステーションギャラリー)
- 写真とファッション(東京都写真美術館)
- 森山大道の東京 ongoing(東京都写真美術館)
- ルオーと日本展(パナソニック汐留美術館)
- リチャード・セラ展「ドローイング」(Fergus McCaffrey Tokyo)
- 超写実絵画の襲来 ホキ美術館所蔵(Bunkamura ザ・ミュージアム)
- フィールド⇔ワーク展(東京都渋谷公園通りギャラリー)
- 東京 TOKYO / MIKA NINAGAWA(PARCO MUSEUM TOKYO)
- ピーター・ドイグ展(東京国立近代美術館)
- 古典×現代2020 時空を超える日本のアート(国立新美術館)
ドローイングの可能性(東京都現代美術館)
リードに書いたような理由で、まずは東京都現代美術館へ。実は上にリンクしてるエントリーを書いたときにはもう見に行ってました。
写真は、盛圭太による展示室の壁にたくさんの糸を直に糊付けした作品。このほかも初見で「なんかすごい」というバカみたいな感想になっちゃうしっかり現代美術した作品ばかりでした。
石川九楊さんの書などすごすぎてちゃんと飲み込めないままひととおり見ておくという種類の展示でした。あわせてコレクション展も見てきて、こちらはコロナ前に見たときと少し作品が入れ替わってたかな。
美術館女子が話題になってるなか、その東京都現代美術館をちょうど和田彩花も「美術が大好きな人間」として訪れていたこと - in between days
ところでこの企画展を舞台に読売新聞が「美術館女子」という企画で炎上してて「はあ……」ってなったんですが、そもそも「映え」をテーマにしたグラビア企画なのに、なぜこんなに硬めの作品ばかりの展示をチョイスしたのか……。そのせいか、肝心の写真があまり「映え」てなかったのがキビシかったですね。
キャッチフレーズとかテキストとか炎上要素はいろいろあったけど、そもそも映えって、美術手帖の記事にあるような「アイドルの可愛さ、魅力が中心で、美術館やアートはただの背景に過ぎない」状態ではないですよね。被写体の可愛さとその場所の魅力が相乗効果をなして光り輝くのが映えのはずで、その状態を作れなかったことが残念さとしてまず最初に挙げられます(キャッチフレーズやテキストはその次の話だけど、たくさん語られているのでここでは割愛)。
画家が見た子ども展(三菱一号館美術館)
サブタイトルにファン・ゴッホの名前も並んでいるけれど、実際にゴッホは1枚だけで、基本的にはこの館が得意とするナビ派の展示。ピエール・ボナール、モーリス・ドニ、エドゥアール・ヴュイヤール、フェリックス・ヴァロットンなどが子供を描いた絵画の特集です。
開館10周年記念 画家が見たこども展 ゴッホ、ボナール、ヴュイヤール、ドニ、ヴァロットン - 三菱一号館美術館
パリではこのころから街や日常風景や市井の暮らしを描くことが盛んになり、そこいらの子供を描くことも当然そのなかの一部だったわけで、19世紀末のパリという街とナビ派の展示といってよいかもしれません。フェリックス・ヴァロットンの版画作品だけ撮影可になってました。
6月中に終わると聞いていたので早めに見に行ったのだけど、次に予定されてた「三菱の至宝展」が2021年に開催延期になったので、会期が9月22日まで再延期されてます。
奇才 江戸絵画の冒険者たち(江戸東京博物館)
これは本当に素晴らしい展示でした。いま山口で開催中で、秋には大阪に巡回するそうなのでお近くの方は展示替えのたびに楽しめていいなあという気持ちです。
すでに記事にしたので詳細はこちらに。
神田日勝 大地への筆触(東京ステーションギャラリー)
サイトなどで「連続テレビ小説『なつぞら』で吉沢亮が演じた山田天陽」と宣伝されていましたが、朝ドラを見ないので役回りがどう重要だったかとかよくわからないまま行ってきました。
絶筆の馬の力強さと北海道という土地から農民画家というイメージを勝手に持っていたところ、初期の渋い馬と絶筆の馬の間には、アンフォルメルというか具体にかぶれたような作品がかなりあって、それにびっくりしました。
北海道・十勝で農業を営みながら制作を続けた画家・神田日勝の回顧展が来年開催へ(東京ステーションギャラリー、2020年4月18日~6月28日)https://t.co/UOpek1BUwl pic.twitter.com/h6Ew74AzGv
— ウェブ版美術手帖 (@bijutsutecho_) September 5, 2019
それでまあ、これだけ迫力あってもまだ「自分の画風」ってものが獲得できたりはしないものなんだなっていうことに気付かされたというか、絶筆の馬はやはりかなりかっこよかったんですが、たぶんそれは中断してしまったことによる不慮のかっこよさなんだろうなあ。
神田日勝 大地への筆触(東京ステーションギャラリー)|美術手帖
なお、この展示はローソンチケットによる日時指定の予約制で、電子チケットではなく、ローソンで発券しなければいけないのはちょっと面倒でした。
写真とファッション(東京都写真美術館)
3月3日開始の予定だったのが延期されて7月19日までで再開された写真展。高橋恭司〈Tokyo Girl〉よかった。
▶ 写真とファッション 90年代以降の関係性を探る - 東京都写真美術館
部屋によって展示の雰囲気やコンセプトが違っていて、「Purple」誌の編集者で写真家でもあるエレン・フライスのスライドと前田征紀の造形作品が暗がりのなかで展示されているのがかなり美術展然としていて、とくに参考出品という扱いで並んでいた安田都乃の土器がよかったんだけど、これもう写真でもファッションでもなさそう……。
森山大道の東京 ongoing(東京都写真美術館)
同じ東京都写真美術館でフロア違いの同時開催されており、こっちは9月までやってます。
粗いモノクロ写真の方というイメージもあったけど、カラーの作品よかった。
ルオーと日本展(パナソニック汐留美術館)
これも6月中に終わってしまう展示で、ルオーはとくにそれほど思い入れがあるわけでもなかったんだけど、やはり会期が短いのが気になって行ってきたのです。
ルオーと日本展 響き合う芸術と魂 交流の百年 | パナソニック汐留美術館
ルオーの経歴に沿った展示だったので、どんどん厚塗りかつ宗教的になっていく様子がわかって意外と面白かった。最後のほうで少しだけ撮影できて、厚塗りがわかるかなと斜めから撮ったけどそうでもなかった……。
展示の半分「と日本」の部分はとくに不要だったかなー。本家と並べられると「なるほどこう真似たのか」というのがわかってしまうというか……。ルオーの影響を脱してからの松本竣介と、現代の作品でマコト・フジムラ〈二子玉川園〉がよかった。
パリから来るはずだった作品が届かなくて、所蔵作品を追加で出してたけど数が足らなかったようで、ほんとはこんな作品が並んでたはずなんですよーというパネルが展示されていました。
帰りにパナソニックのビルの壁で、LOVE WALLというのをやってた。
リチャード・セラ展「ドローイング」(Fergus McCaffrey Tokyo)
たまたま記事を見かけて近くだったので会社帰りに寄ってきました。おもしろかった。
リチャード・セラ展「ドローイング」(ファーガス・マカフリー東京)|美術手帖
写真を見るとモノクロの平面作品かなとおもうんだけど、素材がかなり変わっていて、かなり立体であって表情がおもしろかった。
8月29日まで。
超写実絵画の襲来 ホキ美術館所蔵(Bunkamura ザ・ミュージアム)
ホキ美術館が所蔵する写実絵画にはなぜか惹かれたことがなく、たぶん普段なら見に行ってないんだけど、コロナのせいで中断された展覧会をわざわざ期間限定で再展示されたことを意気に感じて見てきたのだけれど、なんだかよくわからないまま出てきてしまった。
特別展 超写実絵画の襲来 ホキ美術館所蔵 | ザ・ミュージアム | Bunkamura
それぞれとてもとても手がかかっていて上手く描かれていて技術はすごいし、大畑稔浩〈瀬戸内海風景 川尻港〉など気に入った作品もいくつかあったけれど、おおむね技術偏重すぎるというか、バカテクなフュージョンとかメタルを聞いてるようで、おおギターが速い速い速い速い……だから何なんだろう? となってしまった。
同じ写実でも以前に東京都美術館で見た「現代の写実」展は自分でも楽しめたのだが、確認したら重なってる作家はひとりだけで、そちらには元田久治とかよりクセが強いひとが出てた。
フィールド⇔ワーク展(東京都渋谷公園通りギャラリー)
渋谷のパルコの斜向いある勤労福祉会館の1階がアールブリュットのギャラリーとして今年の2月からオープンしたというので気になっていたんだけど、コロナの影響でずっと休館していて、ようやく見に行けた。2つの展示室に5人の作家の作品が展示されていた。
フィールド⇔ワーク展 日々のアトリエに生きている | 東京都渋谷公園通りギャラリー
アクリル絵の具を塗り重ねて彫刻刀で削り出す蛇目の作品がすごかったんだけど、ずっと見てると不安な気持ちにもなる色彩で、実はホキ美術展のあとにこれを見に来てたので、落差がすごすぎるな……とおもいながら向かいのパルコに入った。
東京 TOKYO / MIKA NINAGAWA(PARCO MUSEUM TOKYO)
そしてパルコで蜷川実花の写真展を見た。
東京 TOKYO / MIKA NINAGAWA | PARCO MUSEUM TOKYO
蜷川実花の写真に映し出された世界や被写体の人たちは華やかで楽しそうで僕にとってはかなり雑誌とかで見る非日常のTOKYOという印象があるんだけれど、それは蜷川さんにとっては半径数メートルのほんの日常で起きていることであって、たしかに生活感はそこにはある。
地続きでもあってギャップもあるところがおもしろいなとおもったし、ずっとそういう華やかな世界には憧れがあったけれど、年をとってきて自分はそういう世界の外部にいるものでって、でもそれぞれが生活しているということがようやく中高年になってわかってきたんだなとおもった。
スペイン坂からの夜空。渋谷っていつのまに電線が撤去されてたんだろうね。スッキリしてスペインっぽさが増してた。行ったことないけど。
ピーター・ドイグ展(東京国立近代美術館)
この展示はすごくよかったんだけど、うまく言葉にできないな。
ローファイっぽくてストリートっぽくいけれどアカデミックなかんじもある。具象であるけれど色彩や筆触は抽象的な印象もある。最近のヒップホップを聞いてるようなかんじがしてます。
チラシになっている絵も印刷だとキラキラしたファンタジーっぽく見えるけれど、近づくと荒くてザラツイている。
明らかに種を撒いてる人がいたり、古典絵画をうまくサンプリングしている。
とってもピーテル・ブリューゲルっぽい冬の風景。
左右逆だけど男性のポーズは草上の昼食かな。
日時指定のチケットをチケットぴあの販売サイトで購入して、ファミリーマートで発券。電子チケットにしてくれると楽なんだけどなあ。
古典×現代2020 時空を超える日本のアート(国立新美術館)
日本美術の古典作品と現代作家の合同展。
古典×現代2020―時空を超える日本のアート - 国立新美術館
以前にサントリー美術館でやってたnendoによる見立てを勝手にイメージしてたんだけど、ぜんぜん違ってて、がっつりと古典と現代が向かい合うコラボレーションが8つ。田根剛がプロデュースした日光月光菩薩の展示がとくにすごかった。
ちょっとしたギャラリーの展示を8つ見るようなものだった。終日いられる。ここだけ写真を撮影できた鴻池明子の作品と刀剣のコラボ。刀剣に向けて振り子が振り下ろされる。
鴻池明子はいまアーティゾン美術館でも展示やってたはず。
ジャム・セッション 石橋財団コレクション×鴻池朋子 | アーティゾン美術館
10月までか。涼しくなってから行こうかな。