書籍を中心にDTPなどを手がけている [twitter:@youichi7imazeki] さんの Blue-Screeeeeeeen.net というブログで、印刷物を制作するときの校正指示についての記事が出てた。
たまたまFacebookで流れてきたんだけど、編集や校正について実地に則したノウハウっぽい記事ってあまり見ない気がするので面白かったし、なるほどそうだなーという納得感もあった。
ぼくも前職でしばらく紙の印刷物に関わっていたので、赤ペンで修正指示などを入れたこともあるけれど、確かに最終的にはここで挙げられている1とか2のやり方で自分も指示をしていたような気がする(3については、あまりに悪筆だったのでほんとにデザイナーご迷惑かけたとおもう。すいません)。
でも、ぼくが初めてそういう作業を習ったときは、これとまったく逆を言われたし、まったく逆のやり方をしばらくしていた。していたんだけど、効率を上げようとすしていろいろ工夫をしているうちに、最初に覚えたやり方とはまったく逆なところにたどり着いてたんだな、というのがこれを読んでて気が付いて、それが一番おもしろかった。
活字や写植では、1文字あたりの物理的なコストを考えなければいけない
なぜ、まるっきり逆になっちゃったのかというと、それはもう印刷業界の技術の変化によっていて、いまは紙の本を作るといっても最後の印刷所の納品まですべてデジタルデータで進められる(印刷所に入れてからもデータをそのまま印刷機にかけて、いまどき製版とかしないんじゃないだろうか)。
デジタルデータだから、当然のように一括置換はできるし、修正も大きな範囲で差し替えたほうが効率がよい。差し替えになるテキストをたとえ数文字でもすべてエディタで打って、コピペ用の差し替えテキスト集をTYPO対策で送ったりする人もいるらしい。
ところが、ちょっと前まで(といっても早いところは90年代から移行してただろうけど)、紙の印刷物を作るときには、印画紙に写真植字といって文字を打ってもらってて、校正を反映するためには、それを物理的に切り貼りしなければならなかった。
だから、昔の編集者は、ピッタリ同じ文字数で文字校正をするワザをいろいろ持っていたらしい。不要なところは物理的に切り抜いて捨てなければいけないし、新しい文字列が必要になれば、その文字だけ追加で打ってもらって貼り付けなければいけなかったらしい。
そのため、修正指示は整理してまとめるのではなく、細かく1文字ごとに指示をしなければならないし、一括で置換したい場合でも、物理作業にCtrl-F
なんてないわけで、全部を見つけ出して、全部に細かく同じ指示を入れなければならない。あと写植を1文字打つとそれだけコストがかかるし。
で、写植の前は活版印刷だったわけで、これはもう1文字1文字の活字を拾って箱に並べていかないといけないということなので、箱に残しておく活字と変更する活字を1文字ずつ指示をしなければ職人さんきっと怒っちゃうんじゃないだろうか。
写植からDTPへの変化は、おそらくここ10年か15年くらいで入れ替わったんだとおもうけど、それだけの期間で、常識がまるっきり逆転してるというのが、おもしろかった。1文字1文字に物理的だったり金銭的だったりするコストがかかるのかどうか、それによって人間の作業の仕方も、考え方も変わってくるもんなんだなあ。
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