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表参道で働くシニアのブログ

さいたま国際芸術祭幻想 今日たとえ大宮が水没したとしても

2023年10月から12月にかけて、埼玉の大宮で「さいたま国際芸術祭2023」が開催されました。

さいたま国際芸術祭2023

2022年3月に休館となった「市民会館おおみや」をメイン会場に国内外多くのアーティストが作品を発表していましたが、ディレクターを務めた 目[mé] といえば展示なのか風景なのかあいまいな作品を展開するグループ。今回も建物を透明な板で区切って動線をつくり、ステージ上から裏側にまで観客を誘導して、それが展示なのかバックヤードなのか分からない空間を作り上げていました。

そんな空間をぐるぐると歩き回るうちに、なんかオカシイ……。私はこの空間がまったく違った世界に見えてきてしまったのです。きっかけは、展示室の入口に掲示された「お願い」の張り紙。

傘立ての脇にご丁寧に「作品保護のため、傘は室内に持ち込まぬよう……」と注意書きがあります。

しかし、この秋はとくに天候に恵まれていたことを皆さん覚えていらっしゃるでしょうか。私が会場を訪れた日も、とてもよく晴れていたように記憶しています。

梅雨どきあるいは台風でも迫っているのなら分かりますが、しばらく雨も降っていませんし、傘をさして来場する人もいないでしょうに。

と思って振り返ってみると、そこには忘れ物らしい傘が廊下に立てかけられています。

そして会場の入り口の脇には雨漏りをポリバケツに集める仕組みがありまして、建物が古いとこういうものも必要になるのだなあ……でも、そもそも雨ってしばらく降ってないよね……?? なんでわざわざこんな用意を??

ここで完全に分からなくなります。これはディレクションされた展示の一部なのか? それともナチュラルに雨対策なのか? 忘れ物の傘が回収されずに置かれているのも変ですし……

そして展示室に入ると作品は「KEEP DRY」と主張しています。確かに雨傘を持ち込んではいけないのかもしれない……

この展示室の奥は、水面が広がる映像作品が突き当りで、引き返すことになります。

戻って建物の外に出たところで傘立てに2本の傘が挿してあることに気づきます。何日も雨は降ってないのに……??

傘袋があったので、これに入れて持ち歩けばよいのかな……いや、雨は降ってないよね……?

雨水が溜まったらホウキで集めてバケツに貯めるのかな、いや台風でも来てるの……?

モップもある

養生されているのも水対策に見えて来て……というかなんでここ養生してるの……?

ということで一周してきて先ほどの展示会場に別の導線からやってきて透明板の向こうから見ています。この作品は、ワイヤーを水面に見立てて、上に実物が、下には鏡像が見えている体になったインスタレーション作品。

あれ? ここにもバケツとホウキ?

傘立てに傘?? そしてここが水面ということは、この高さまで増水してる?? ひょっとしてもう何日も雨が降り続いてる?

さっき見た映像作品でも水面の高さがこのくらいだったけど、もう大宮じゅうが水没して池みたいになってる?

あ、雨漏りしてる???

さりげなく水を拭く道具が立てかけられたバックヤード

大量の空き缶

長靴

大量の、あまりに大量の傘……!

ホウキと……スポンジ!

水が溜まっている……!

モップ……

実はこのあたりは一方通行で地下通路を歩かされていて、外部の様子が分からないだけに余計に不安になります。ひょっとして今日は大雨だったのでは……? いつから晴れてると思い込んでいた?

大宮が水没するほどの雨が降り続く中、あまりに青空が恋しすぎて幻想を見たのでは……

という不安がよぎりながらも地上に出てみたらやっぱり雨は降ってなかった。水没してなくてよかった……ってなんで雑巾が干してあるの?

バケツも……

ホースも……

というあたりで閉館時間になったので会場を後にしたわけですが、地下を歩いていたときにほんとうに雨は降ってなかったのか? 何が展示で何が風景なのか? どこまでが仕掛けでどこからが思い込みなのか? よく分からなくなる展示でした。ハッキリしていることは、まったくもって分からないということ。そんな不思議な体験をしたというレポートでした。

旧市民会館おおみやの裏手には氷川神社の参道が整備されていたのでブラブラと歩いてゆっくり気を落ち着けながら帰りましょう。

参道脇から駅の方を見る。開けた空間が気持ちよかったのですが、マップを見たら大宮小学校の校庭でした。参道脇に学校があるのいいですね……

……いや、もう夜8時すぎなのに、なんで小学校の校庭の門が開けっ放しなの……??!!!

これほんとにスケーパーがそのあたりにいるんじゃないかと校庭をぐるりと見渡したりしました。誰もいなかった。いなかったけど、まだ自分が展示作品の中にいるような気がしてしょうがなかった。そんな展示でした。