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東大の論文がコスト高だと書いてた朝日新聞の記事について

国立大学のなかで東京大学が1本の論文にかける研究費が大きくてコストが高いと書いた、朝日新聞の記事が話題になっています。

東京大学の論文の「生産性」が国立大学の中で最低レベルにあることが文部科学省科学技術政策研究所の調査でわかった。研究費を論文数で割った1本当たりの「生産費」を比べた。(略)

研究費の配分問題に詳しい竹内淳・早稲田大教授は「少ない費用で優れた成果を出している地方の国立大にも研究費を正当に配分するような制度に変える必要がある」と話している。

asahi.com:東大の論文、1本1845万円 国立大でコスト最大級 - 社会

この記事を読むと、朝日新聞は「東大の予算を減らして地方大に回すべきだ」と主張したがっているように読めるんですけど、単に予算を均一化させるだけでは悪平等を生むのではないかというのが疑問です。研究や論文は成果や質が重要でしょうし、たとえば大規模な実験施設を使った最先端の研究実験を行えばそれなりに予算は膨らむだろうということは容易に想像できます。大規模な研究はどこでもできることではないでしょうから、東大のようなところに研究費が集中されること自体は自然なことのようにも思えます。そもそも研究費を論文数で割るなんていう大雑把な統計でなにか意味があるのでしょうか?

という「???」が読んだだけで頭をよぎりますが、はてブも同じような疑問がたくさん呈されていました。

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このいくつかのエントリで「国立大学法人の財務分析」という調査資料が元データとして挙げられています。

調査資料-150 国立大学法人の財務分析 - 文部科学省 科学技術政策研究所

気になったので、このPDFファイルをダウンロードして読んでみました。といっても全部で500ページ弱(大学ごとの数字を細かく表にした付属資料を除いても100ページ)という厚い報告書なので全部は簡単に読めません。とりあえず頭の「概要」を眺めただけですが、朝日新聞の記事で強調されている「生産性」という言葉はどうも見あたらないのです。

そもそも朝日新聞の記事で引用されている数字は「論文あたり経費」という調査結果で、これは調査報告書にあるいくつかの数字のなかの1つです。調査報告書では「教育」「研究」「社会貢献」の3分野において13の指標を使って、国立大学を傾向別に10個のグループに分類しています。PDFからのコピペが出来なかったので簡単に引用できないのですが、そこから示されることとしては

(2) 国立大学法人が同一の機能や特性を持つものではなく、多様化していること

とされています。つまり国立大学には、豊富な予算を研究に注ぎ込んでいるところもあれば、教育に力を入れている大学もあり、あるいは社会貢献が盛んな大学もある。まあ、当たり前といえば当たり前ですが。

私がこの報告書の「概要」を読んでおもったことは、国立大学それぞれの特性に合った予算配分が必要であって、画一的な指標で見ることはできないのではないか、ということです。なぜか朝日新聞の記事とは方向が逆になってしまいました。この調査がされた文脈などもまったくわからないで読んでいるのでこれ以上のことは言えませんが、もっと詳しい方に読んで解説していただければとおもいます。