シーナ&ロケッツの名曲「レモン・ティー」は、ヤードバーズの「トレイン・ケプト・ア・ローリン」に似てるとよく言われるけど、そのヤードバーズも実はオリジナルではなくてカバーだった、ということをご存知でしょうか?
ぼくはご存知じゃなくて最近「へー」っておもったので、YouTubeをいろいろ見ながら元ネタをたどってみました。すごい長くなったけど、めっちゃおもしろかった!
1979年 シーナ&ロケッツ「レモン・ティー」
まずシナロケ。この動画は1986年のライブで、鮎川誠のギターめっちゃかっこいい。2分10秒あたりで映るの山口冨士夫かな。ツインギターだ。
SHEENA & THE ROKKETS - LEMON TEA (LIVE 1986) - YouTube
レコードでは1979年リリースの『#1』に収録。

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1975年 サンハウス「レモンティ」
もとは鮎川がシナロケの前にいたサンハウス時代に書いた曲で、セクシャルな歌詞はボーカルの柴山俊之によるもの。
デビューアルバム『有頂天』(1975年)に収録。ほぼ40年前のアルバム。

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1965年 The Yardbirds “Train Kept a Rollin'”
サンハウスがデビューする10年前、イギリスのヤードバーズというバンドが「トレイン・ケプト・ア・ローリン」をレコーディングする。ギタリストはジェフ・ベック。このライブは1966年のもの。確かにレモンティに似てる。
ヤードバーズは有名ギタリストが次々在籍したバンドで、1968年にはジミー・ペイジに変わっている。そのころのライブはかなりニューロックっぽい。
The Yardbirds - Train Kept a Rollin' (1968) (720p HD) - YouTube
衣装もフラワーチルドレンっぽくなってておもしろい。

Shapes of Things: the Best of the Yardbirds
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1966年 The Yardbirds “Stroll On”
ジェフ・ベックからジミー・ペイジに移行するとき、わずかながらツインギターの期間があって、ミケンランジェロ・アントニオーニ監督の映画「欲望(Blow-Up)」に出演して「トレイン・ケプト・ア・ローリン」を演奏している。
The Yardbirds - Stroll On (Jeff Beck & Jimmy Page 1966) - YouTube
ところがタイトルが違う。「トレイン・ケプト・ア・ローリン」の使用許可が下りなくて、歌詞を書き換えてバンドメンバー作の「ストロール・オン」っていう別の曲だと言い張ったらしい。このあたりの経緯はウィキペディアにも書いてある。
Train Kept A-Rollin'#The Yardbirds versions - Wikipedia
これが違う曲なんだったら、レモンティも別の曲ってことでよさそう。
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1951年 Tiny Bradshaw “The Train Kept A-Rollin”
そのウィキペディアによると、映画「欲望」の15年前にタイニー・ブラッドショウが吹き込んだジャンプ・ブルースがオリジナル。
TINY BRADSHAW ~ THE TRAIN KEPT A-ROLLIN ~ 1951 - YouTube
「トレイン・ケプト・ア・ローリン」「オール・ナイト・ロング」のかけあいが気持ちいいけど、後の「ストロール・オン」や「レモン・ティー」とはまるっきり別の曲みたいだ。イントロの特徴的なかっこいいリフがないからかな。

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1942年 Ella Mae Morse “Cow Cow Boogie”
さらにウィキペディアによると、ブラッドショウは40年代ビッグバンド・ジャズの「カウ・カウ・ブギー」という曲を下敷きにしたらしい。ここまでさかのぼるともうまったくなんだかわからない。
「カウ・カウ・ブギー」って「買い物ブギ」みたいなタイトルだけど、「トレイン・ケプト・ア・ローリン」の邦題は「ブギウギ夜行列車」っていうらしいから少し近い。
フレディ・スラック楽団が最初の吹込みだけど、もともとエラ・フィッツジェラルドに書かれた曲で、エラも翌年に吹き込んでいるようだ。
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1956年 Johnny Burnette “Train Kept A Rollin'”
閑話休題。ヤードバーズがカバーしたのはブラッドショウのオリジナルではなく、5年後にジョニー・バーネット・トリオがカバーしたロカビリー・バージョン。
Johnny Burnette Train Kept A Rollin' - YouTube
あのリフはまだないけど、これはかっこいい。ジョニー・バーネットは米国ではあまり売れなかったらしいが、スウィンギン・ロンドンではロックンロールのオリジネーターとして愛好されたらしい。

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と、ここまでで十分に長いリストになってるけど、調べていて面白くなってきたのはここからなんです!
1956年 Johnny Burnette “Honey Hush”
ジョニー・バーネットにとって「トレイン・ケプト・ア・ローリン」は3枚目のシングルで、カップリングが「ハニー・ハッシュ」という曲だった。それがこちら。
THE JOHNNY BURNETTE TRIO. HONEY HUSH. - YouTube
あれ? このイントロどっかで聞き覚えがあるよね!?
ヤードバーズの「トレイン・ケプト・ア・ローリン」は、ジェフ・ベックがスタジオにこのシングル盤を持ってきたのがきっかけでカバーしたらしいけど、曲としてはA面を採用しつつ、ジェフ・ベックの興味はB面のリフのほうにあったようで、シングルのA面とB面を合体させちゃったみたい。
1953年 Big Joe Turner “Honey Hush”
そして、もちろん「ハニー・ハッシュ」にもオリジナルがある。ビッグ・ジョー・ターナーが、1953年にR&Bチャートで1位を獲得したジャンプ・ブルースだ。
Honey Hush - Big Joe Turner - ATLANTIC 45-1001 (1953) - YouTube
この曲はロックンロール・クラシックで、いろいろな人がカバーしている。サー・ポール・マッカートニーもやっている(ビートルズの初期レパートリーだったらしい)。
Honey Hush - Sir Paul McCartney + Ian Paice - YouTube
そのつながりで気になる1文を見つけた。
元々は1920年に活躍したジャズ・ピアニスト、ファッツ・ウォーラーが発表した「Hi-Ho Silver」という曲がベースになっており、ジョン・ターナーが改作したものである。
なんとさらに元ネタがあったという! ただ、この「ハイ・ホー・シルバー」については、フリートウッド・マックが1970年に『キルン・ハウス』でカバーしたバージョンしか見つからなかった。なぞい。
Hi Ho Silver - Fleetwood Mac - YouTube

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1974年 Foghat “Honey Hush”
かなりジョニー・バーネット版に近い「ハニー・ハッシュ」のカバーをしているのが、フォガット。アルバム『エナジャイズド(電撃のフォガット)』に収録。
Foghat ~♥~ Honey Hush - YouTube
ヤードバーズ版「トレイン・ケプト・ア・ローリン」に「ハニー・ハッシュ」の歌詞を当てたみたいになってる。シナロケの動画にも、ネタ元はフォガットだってコメントしてるひとがいた。
ライブではもっと速くやってて、かっこいい。
Foghat - Honey Hush Live 1981 Hollywood, Florida - YouTube

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1974年 Aerosmith's "Train Kept A Rollin'
ついでに、同時期に「トレイン・ケプト・ア・ローリン」をカバーしてるのがエアロスミス。セカンドアルバム『ゲット・ユア・ウィング(飛べ!エアロスミス)』収録。それにしてもこのころの洋楽のアルバムの邦題ってあらためてすごいな。
Re: AEROSMITH - Train Kept A Rollin' ,1974 - YouTube
海外の掲示板でも「こいつら似すぎじゃね?」みたいなスレが立ってておもしろい。
Aerosmith's "Train Kept A Rollin'" vs. Foghat's "Honey Hush" | Steve Hoffman Music Forums

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最後に
と、いろいろ検索して調べてみたんだけど、最後にあらためて「レモンティー シーナ&ロケッツ」とかで検索しなおしてみたら、知恵袋にぜんぶ書いてあった……(苦笑)。
てゆかこの floandeddie71 さんってすごいな。こちらからは以上となります。
追記
この記事の続きで、歌詞の元ネタも調べてみました。よければいっしょにどうぞ。
シナロケの名曲「レモンティー」のもうひとつのルーツがレッド・ツェッペリンであったりロバート・ジョンソンであったりするのが、うらやましいという話 - in between days