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表参道で働くシニアのブログ

新進気鋭の和エモ 名盤『山水集』double face

バンドのジャンルをいきなり決め付けてしまうのはたいへん危ういんだけど、とりあえずこのサウンドをオレは「エモ」と呼びたい。というかオレが「エモ」と呼んでいるサウンドのど真ん中にコレが落ちてきたのだ。イースタンユースとゴーイングアンダーグラウンドとハスキングビーが描く三角形の内側の領域。情景的であってなおかつ叙情的な詩を、速すぎもせず遅すぎもしないギターに乗せて歌い上げるロックサウンド。

まず先行シングルでもある「山なみ遠に春は来て」に歌われている白昼堂々とした気持ちよさにガツンと来た。タイトルどおり、ニッポンの「春」の光景であって、特有の気候や空気の湿りすら感じさせる。しかもモチーフが「モノレール」ときた。「桜」とかじゃないんですよ。この対象の撮って来かたが新しい。そして、ロックしている。

白く霞んで行くモノレールが
橋の向こう側に消える午後
街も山も里も全てが
今は春を待っている

この「モノレール」なんだけど、バンドが八王子を拠点にしているということを考えると、たぶん多摩モノレールの多摩川にかかる「立日橋」あたりの風景じゃないだろうか。立川の街路を抜けて武蔵野の面影を残す日野へとわたる多摩川にかかる新しい橋*1

新しい橋にも新しい人たちが日本の四季を歌う。このアルバムは全編にわたってこういう新しい季節感が満載された「ロック」アルバムであり、たとえばこの季節、妙に澄んで遠くが見通せる乾いた空に気が付いてつい落涙してしまうようなひとには、このアルバムは激しくオススメだと思った。

山水集

山水集

*1:確かモノレールを通すために掛けられた橋だったのではなかったろうか