in between days

表参道で働くシニアのブログ

ブルーの構図のブルース

昔から疑問なのは、この曲の舞台はどこだろう? ということで、いちおう「尾道」という地名は出てきているけど、実はそれは後付けで、この曲が収録された「球体の奏でる音楽」のツアーで初めて尾道を訪れたらしいというハナシを聞いたことがある。

そういえばこのツアーがまたすごくて、バックが渋谷さん(p.)と川端さん(b.)だけってシンプルすぎる構成で、東京と大阪と尾道と3ヶ所でしかやらなかった。会場は千人クラスのホールで東京は渋谷公会堂だったんだけど、その発売方法が、ある朝突然新聞に「売り出すぞー」って広告が載って、新聞を当時取ってなかった……いや違った東京新聞には載らなかったんだ……ので知らなかったんだけど、家の電話が突然鳴って「いま出先でチケット取れないけどコレコレだから……」って叩き起こされて、慌ててリダイヤル攻勢で4人分押さえて……みたいなそんなこんなで見に行った覚えがある。

さて、尾道だ。アルバム『球体の奏でる音楽』がリリースされたのは1996年10月、ツアー「lover」が同年12月、その間の時期に、試しに東京から尾道まで夜行列車で行ってみた。これはえらいツラかった。寝台特急にでも乗ればよかったんだろうけど、寝台は夜行とは違うだろうってことで、マジに夜行、つまり「ムーンライトながら」、いわゆるかつての「垣電(がきでん)」に乗り込んだわけだ。「ながら」車内はちょっとワクワクして寝られなくて、デッキで外の景色を見ながら、なぜか「かせき」のCDを繰り返し聴いてた。翌朝の大垣駅で朝がエライ寒くて辛かった。そのあとの新快速は通勤時間帯にバッチリ重なってギュウギュウ詰めだったけど始発駅から乗ったからちゃんと座れて、ひたすら寝てた。

姫路で途中下車して姫路城見たりとか、そんなこんなで尾道に着いたのはもう夕方近くて、なにしろ晩秋だから日は暮れかけてるし、駅の旅行案内所でホテルを確保して、ガイドブック片手に適当にお店はいって刺身食ったり。そのあとこれまた適当にバーに入って、居合わせた地元のひととちょっと喋ったりして、ホテル帰って寝て、翌日はちょとだけ呉線に乗って竹原まで行って、三原から新幹線で帰京。尾道観光としてはぜんぜん失敗だけど、てゆか観光にもなってないけど、「夜行列車に乗って、尾道に行く」がコンセプトなわけですから、尾道に着いたあとは全部おまけなのでコレでいいんです。

ああ何時間も列車を乗り継ぎ
ここは静かな町・尾道
ああ川の流れのように
生きられたらいいなと思う

雨で煙る中を夜行列車で出発し、おそらく失意の旅行で独りになりたかったのだろうが、明け方には雨も上がって、半島の風景。ここでわからないのは「街の灯」という歌詞で、そうするとまだ夜なのかな? と思うけど「遠く太陽」と歌われていて、いったい時間帯はいつやねん? それを言うなら尾道に着くのに「半島」てどこよ? ってことで、冒頭に戻るけど、そもそも「ここは、尾道」じゃないわけで、どこに辿りついたんや? ってことだ。空想の場所か?

いや、たぶん、空想の場所でいいのだ、たぶん。どこからどこへかわかんないけど、とにかく荒れた夜に出発して、何時間も乗り継いで、静かな街に辿りついた。静かな街の風景。それは寝静まった夜景なのかもしれないし、穏やかな小春日和の昼日中なのかもしれないし、明け方のまだ起き抜けていない静けさなのかもしれない。個人的には明け方という印象があるけど、それは人によるだろう。その辿りついた街の静けさを風景を「ブルーの構図」と表現した。極めて絵画的な一曲で、小林薫の声で「本日の一枚。クロード・モネ作『印象・日の出』」とでも言って欲しいような(→美の巨人たち)そんな静かな一曲。小沢健二作「ブルーの構図のブルース」。

で、この曲の舞台だけど、夜行×大橋×乗り継ぎ×半島×静かな街という条件をクリアする経路として、京都発、臨時夜行ムーンライト高知で、瀬戸大橋を渡り、高知から土讃線、遠く足摺岬を見ながら(見えるのか?)土佐くろしお鉄道で終点・宿毛へ。という経路を提案しておきます。「大橋」って条件がなければ、絵本『やこうれっしゃ』(→amazon)のモデルになった急行「能登」で金沢から能登鉄道に乗り換えて穴水とか、いっそカシオペアかトワイライトエキスプレスで北海道行きってのを考えてもいいけど……。

球体の奏でる音楽

球体の奏でる音楽

  • アーティスト:小沢健二
  • ユニバーサル ミュージック (e)
Amazon

追記

このエントリーには続きがあります。これがきっとファイナルアンサー……!?