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表参道で働くシニアのブログ

mixiの利用規約改定に関する重要なお知らせについてひとこと言っておくか

mixiが利用規約に「著作者人格権不行使特約」を入れようとしてて、あちこちの日記で「ふざけんな!」と総タタキに合ってます。というか昨日の深夜からマイミクの日記がほとんどぜんぶそれネタでたいへん騒々しい。

http://mixi.jp/release_info.plhttp://mixi.jp/rules_release.plhttp://mixi.jp/rules_sample.pl にある新規約案より(mixiユーザーしか見れません):

第18条 日記等の情報の使用許諾等

  1. 本サービスを利用してユーザーが日記等の情報を投稿する場合には、ユーザーは弊社に対して、当該日記等の情報を日本の国内外において無償かつ非独占的に使用する権利(複製、上映、公衆送信、展示、頒布、翻訳、改変等を行うこと)を許諾するものとします。
  2. ユーザーは、弊社に対して著作者人格権を行使しないものとします。

思わず「なつかしー」と思ったひと多いんじゃないでしょうか。
はてなでも、3年くらい前にこの件でもめましたよね。はてなだけじゃなくて、なぜか同時期に複数のブログサービス(livedoorとか)がこの「著作者人格権を行使しない」なる文面を利用規約に盛り込もうとしてて、かなりモメたのを覚えています。それのまったくの繰り返しなんで笑っちゃいました。そのときの経緯は松永さんのまとめエントリを見てもらうのがわかりやすいようにおもいます。

はてなでの経緯は「はてなダイアリー日記」を「著作者人格権」で検索すると、問題になってからすぐに撤回してるのがわかります。

mixiユーザーはどうすべきか

これに関して「今すぐ日記消さなきゃ!」とか「mixi脱退しよう!」と慌ててる方もいるようですが、この新規約案の適用は4月1日からなので、今日明日になにかしないといけないものでもないと思います。かなり大きな騒ぎになってるのでそのうち撤回されるんじゃないでしょうか。

おそらくmixiがやりたいことは、単にmixiニュースや注目キーワードの下に「このニュースについて書いた日記」が並んだりすることや、あるいはもっと何かをアグリゲートして提供するWeb2.0っぽい新サービスを計画しているのかもしれませんが*1、それに対して誰かが「オレの日記の著作者人格権を侵害している」と主張してモメるのを避けたいというくらいの意図だったのではないかと思います。それは2004年当時のブログサービスでもそうだったので。

ただし、これをやると副作用(自分の日記を勝手に商売に利用されるのか? とユーザーに疑心暗鬼させるなど)のほうが大きいので、サービスによっては、というかユーザーやコミュニティの性格によってはあまり利口なやり方ではない。というのが2004年の騒動から得られる結論なんですけど、mixiはそれを知らなかったんでしょうかね。

結局今のはてなの利用規約には「人格権」の文字はなくなってます。

本サービスの提供、利用促進及び本サービスの広告・宣伝の目的のために、当社はユーザーが著作権を保有する本サービスへ送信された情報を、無償かつ非独占的に本サイトおよびインターネットを用いたクライアントソフトに掲載することができるものとし、ユーザーはこれを許諾するものとします。
http://www.hatena.ne.jp/rule/rule

というかいまさら著作者人格権を持ち出してくる一週遅れ具合が実にmixiらしいといいますか、スラドには

察するに、余計なことを吹き込んで回っている弁護士か役所か、そのへんがいるんじゃないですかねえ。

なんて書かれてましたが、新年度にあたって新サービス展開を念頭に規約を外部の弁護士に見てもらった結果、訴訟リスクを避けるためにかなり安全側に倒した案を出してきたってあたりも考えられますね。

何にせよ、この改定がされたとしても、日記が勝手にどうこうされるといった実害はたぶんないでしょう。日記を通じたコミュニケーションがmixiがここまで発展したカギだったことはよく知られてますし、mixi自身も(笠原さんがそういうインタビューに答えてたように思いますが)よくわかってるはずです。もし実際にユーザーの日記が勝手に利用されるようなことが起きれば、大規模なユーザー離れの危険があります。それがわからないほどmixiはバカではないし、不誠実でもないでしょう。

にもかかわらず、こういうユーザーを疑心暗鬼にさせるような利用規約改定案を出してくるというところに、mixiのコミュニティ運営におけるセンスの無さを露呈させているようにおもいます。せめて2004年にブログサービスが同じことでモメたということを踏まえた打ち出し方をしてきてほしかったですよね。

mixiユーザーでこの規約が気持ち悪いという方は、慌てて退会したり日記を消したりしないで、冷静な態度で、mixiに規約の文面変更を求めるなり、規約の真意を訊くなりしていくべきだとおもいます。怒りにまかせて退会するのは、4月までに文面が撤回されなかってからでも遅くないでしょう。

追記 - 他サービスとの比較 [さらに追記しています]

CNETのシゴトが早い!

この記事ではlivedoor blog、モバゲータウン、アメブロ、はてな、ココログなどの利用規約が比較されてますが、ここでも見られるように著作者人格権の不行使条項あるいはそれに類する相当内容(宣伝などのための自由な利用やメタデータ化を許諾すること)は必ず含まれているようですね。

  • ブログの著作権に関する利用規約の比較 - Beyond Words - GREE、Yahoo!などたくさんのブログサービスの利用規約を調べてられています。ご苦労さまでした。これを見るとむしろ「著作者人格権不行使特約」を入れるほうが一般的だということがわかります。はずしてるのは、やはり同じようにこの問題で3年前に叩かれた〈はてな〉ぐらいです。mixi止めたひとはどこに行くんでしょう? はてなムラにようこそ!
  • 2ちゃんねる化する mixi - 狐と学ぶ空想猫力学入門 - 2chの書き込み規約にもクリソツという指摘

なのでmixiの新規約案はウェブサービスとしては珍しものではないんですが、いかんせんどうにも受け取られ方が最悪でしたね。何人のマイミクの日記やそのコメントでは「著作権放棄」あるいは「著作権譲渡」を迫られていると誤解している方が多数いました。著作権そのものの独占的な利用許諾を求めているわけではないので、二次利用とか勝手に出版とか勝手にテレビドラマ化とか、そういうことはこの条項が仮にこのまま通ってもできないでしょうし*2、その気もないと思うんですが、そう受け取られてしまったのはmixiにとって痛恨でした。

[追記] さらにまとまったエントリがありました(強調部分引用者)。

主要ブログサービス・著作権関連の利用規約まとめ

規約を一通り見てもらえば(これが大変なんだけど)わかる通り、ここで挙げたブログサービスは著作権に関する規定がないものを除けばすべからく、
「ブログの著作権は基本的にユーザーに帰属。だけど、特定の目的下ではこっちの好きに使わせてね」
という内容になっています。

つまり、「自分のブログを運営者に勝手に使われるのは絶対イヤ!!」という方は、ほとんどすべてのレンタルブログサービスには行き場所がないということです。

追々記 - 関連リンクの追加

小寺さんのエントリのブックマークについてるこのコメントに注目したいです。

2008年03月04日 id:bn2islander 著作権 "勝手に文章が要約されたり最初のとこだけになったりしちゃうけど、許してね的な事情から来るものだと思う" だって、その行為って全て著作者人格権を抵触してしまうよ。訴訟リスクを避けるには不行使特約しかない

企業として、リスクの低減とユーザーの反発を天秤にかけなくてはいけなくなったのはツライですね。最適解は、ユーザーが十分納得してくれた上で著作者人格権不行使特約を入れられる、というものだけど、それはもうたぶん無理なんではないでしょうか。説明が不十分だったmixiにそもそもの問題があるわけですが、条文に書かれていない行間を読みまくられて著作権譲渡だの著作権放棄だと方々で煽られてしまったのが決定打だったですね。エントリを書く前にちょっと「著作者人格権を行使しない」あたりでググる方がそれなりにいれば火の回りもゆるやかだったかもしれないですけど。サービスにせよユーザーにせよ歴史に学ぶというのは難しいです。

追々々記 - mixiによる釈明

釈明出てますね。だいたい予想の範疇。

利用規約改定に関するお知らせ(追記) 2008.03.04

mixi運営事務局です。

昨日お知らせいたしました 利用規約の改定 につきまして、『mixi』のサービス内にユーザーのみなさまが書き込まれる情報に関する取り扱いに関して多数のお問い合わせを頂戴いたしました。この場を借りてお詫び申し上げます。

特にお問い合わせの多い【第18条 日記等の情報の使用許諾等】に関しまして、誤解を避けるため、当社が想定している具体的な使用について補足説明をさせていただきます。

上記の条項につきましては、ユーザーのみなさまが『mixi』のサービス内で作成した日記、著作物等の情報について、従来どおりユーザー自身が権利を有することに変わりはありません。

また、ユーザーのみなさまが投稿した日記等の情報(公開している自主作成の映像やイラスト、テキスト等)の使用に関しては、当社の以下対応について同意いただくもので、当社が無断で使用することではありません。

  1. 投稿された日記等の情報が、当社のサーバーに格納する際、データ形式や容量が改変されること。
  2. アクセス数が多い日記等の情報については、データを複製して複数のサーバーに格納すること。
  3. 日記等の情報が他のユーザーによって閲覧される場合、当社のサーバーから国内外に存在するmixiユーザー(閲覧者)に向けて送信されること。

なお、ユーザーのみなさまの日記等の情報を書籍化することに関するお問い合わせもございますが、こちらの点につきましても、従来どおり、ユーザーのみなさまの事前の了承なく進めることはございません。

なお、利用規約につきましては、今後もご利用いただくお客様にご理解いただきやすい内容になるよう引き続き検討してまいります。

各報道へのリンク:

ASCII.jpの見出しはユーザーのミスリーディングを招くのでよくないとおもいました。

*1:マイミクでOpen Social参画をにらんでかと書いてるひともいましたが、なるほどその線もありそうですね。逆にサービス面ではいろいろ楽しみもあるということでしょうか

*2:あ、第一項のほうの解釈しだいでできちゃうか、そっちが問題かも。でもさすがにしないと思うけど。やるのかも、と思われただけでこの騒ぎなんだから。というか第一項の文章はよく読んだらもっとひどいな。これは荒れるよね