礼和元年6月に見た主な展示です。こうやってみると百年単位での歴史を感じさせる展示が多かったような。
- 狩野一信の五百羅漢図 第71幅~80幅(増上寺宝物展示室)
- 江戸の街道をゆく 将軍と姫君の旅路(江戸東京博物館)
- 百年の編み手たち(東京都現代美術館)
- 江戸の凸凹 高低差を歩く(太田記念美術館)
- COMIC ABSTRACTION BY WRITERS(PARCEL)
- 夢のCHITABASHI美術館!?(千葉市美術館)
- Ryu Itadani「ENJOY the VIEW」
- はじめての古美術鑑賞(根津美術館)
- 太陽の芸術 岡本太郎のパブリックアート(岡本太郎記念館)
- 松方コレクション展(国立西洋美術館)
- モダン・ウーマン フィンランド美術を彩った女性芸術家たち(国立西洋美術館)
狩野一信の五百羅漢図 第71幅~80幅(増上寺宝物展示室)
芝の増上寺にて、幕末に描かれた狩野一信の《五百羅漢図》全百幅の一部。
2015年末に村上隆が森美術館で五百羅漢図を展示したときに元ネタと知って、その頃は20幅ずつ展示していたのをおそらく2回分は見たはず。
それから久しく行ってなかったのだけど、これで全体の半分は見たことになるのかな。今回の羅漢さんは龍宮城に行ったり寺院を建てたりしていた。ほんとうに力強く濃密な世界なので百幅まとめて見てクラクラしたい。
「狩野」というけれど狩野派の絵師ではないらしい、っていまウィキペディアで知った。まあ、たしかに。
いま出ている分は、8月25日まで。
江戸の街道をゆく 将軍と姫君の旅路(江戸東京博物館)
大名・姫君・将軍といった江戸時代におけるセレブ旅、つまり行列をテーマにした展示。
特別展「江戸の街道をゆく~将軍と姫君の旅路~」 - 江戸東京博物館
江戸時代に物見遊山が盛んだったことは戯作や浮世絵でうかがえるけれど、そういった身軽な庶民の旅ではなく格式張った大行列がどのように執り行われたのか、さまざまな絵図や豪華な乗物(実物)で紹介されていた。
見どころは、徳川家慶(十二代)の御台所となる有栖川宮家の喬子女王(たかこじょおう)が京から江戸に向かう華麗な婚礼行列を描いた《楽宮(さざのみや)下向絵巻》で、部分替えといったものでなく広げて全部が見られて、これがよかった。先触れから婚礼道具に輿入れの乗物とほどよい間隔で堂々とした行列が続いていくも、最後のほうにはちょっとぐだぐだになっててお供なんだか野次馬なんだかわからない雑なのも混じってぞろぞろと歩いてて現実みがあった。
あわせて、江戸博のメイン会場というかテーマパークっぽいフロアの片隅でや土偶などを見る。
これも楽しかった。
百年の編み手たち(東京都現代美術館)
リニューアル・オープンを記念した超大規模な所蔵作品展。
百年の編み手たち | 展覧会 | 東京都現代美術館|MUSEUM OF CONTEMPORARY ART TOKYO
同じようなコンセプトの展示を横浜美術館で見たなあとおもってたら、そっちの半券があったら割引だったらしい。気づいてなかったよ。残念。
岸田劉生から存命の現代作家までほんとに100年分の日本の現代美術を一堂に会しましたという趣だったけれど、日本の近代絵画はだいたいいつもどおりのよくわからないという感想になってしまい、戦後になってポツポツと「わかる」というかんじで我ながらどうかとおもった。
MOTコレクション 第1期 ただいま / はじめまして | 展覧会 | 東京都現代美術館|MUSEUM OF CONTEMPORARY ART TOKYO
とにかく作品数が膨大で、このほかに新収蔵作品などで構成したコレクション展もあったので歩き回って足は疲れるし時間は足らない。
二階のサンドイッチは美味しかった。
江戸の凸凹 高低差を歩く(太田記念美術館)
歌川広重《江戸名所百景》を中心に、ブラタモリ的な浮世絵の展示。こういう切り口もなかなかおもしろい。
▶ 江戸の凸凹 ―高低差を歩く | 太田記念美術館 Ota Memorial Museum of Art
それにしても今年の前半はほんとにあちこちで名所江戸百景を見る。目黒の富士塚は何枚も書いてるのなんでかと思っていたのが、そもそも塚に新と元の2箇所あったというのを知って勉強になった。
COMIC ABSTRACTION BY WRITERS(PARCEL)
このツイートをたまたま目にして、新聞の記事も読んで、天気もよいからと馬喰町まで行ってみた。
6月7日夕刊の美術評は、東京・馬喰町の新ギャラリー、PARCELの「COMIC ABSTRACTION BY WRITERS」展です。ストリート発祥のグラフィティ表現が路上を離れる時、何が起きるのかー。黒瀬陽平さん@kaichoo が本展の持つ意義について解説しています。 pic.twitter.com/8z7OQn0rfd
— 東京新聞文化部 (@tokyobunkabu) 2019年6月7日
居抜きで新しくできたホテルの1階に併設のギャラリー「PARCEL」のこけら落としということらしい。
「COMIC ABSTRACTION BY WRITERS」というタイトルは 2007年にMoMAで開催された「Comic Abstraction」という展覧会に由来します。同展はポップアートの文脈からコミック表現を脱却させ、インターネット時代の新たな視覚言語として読み直すという内容でした。それから4年、ヨーロッパを拠点としている一部の作家が自分たちの活動を表す名称として、同展覧会のタイトルをそのまま使用しはじめます。……
Sidecore.net - Website chuyên về mảng thiết kế
本展覧会はこのようなComic Abstractionをひとつの動向として大体的に取り上げる、世界でも希にみる機会となります。
7月28日まで
夢のCHITABASHI美術館!?(千葉市美術館)
この6月28日まで改修工事のため休館していた板橋区立美術館と、これから改修工事に入る千葉市美術館がコラボレーションした日本美術コレクション展。
▶ 板橋区美×千葉市美 日本美術コレクション展 ―夢のCHITABASHI美術館!? - 千葉市美術館
常設展の扱いだったので観覧料が200円。確実に千葉までの交通費のほうが高い。
6/23まで開催中、イタビとのコラボ企画「ちたばし美術館」展。第2章「ちたばし個性派選手権」では、コレクションの中でもとりわけ個性的な10人の絵師をご紹介。まずは元祖奇想の画家・雪村。布袋さまがなぜかバランスボールのように袋の上で片足立ち…なんとも楽しそうです。ユーモラスさで優勝? pic.twitter.com/svGffH49mm
— 千葉市美術館 (@ccma_jp) 2019年6月8日
雪村や英一蝶といた個性派も出ていたけど、鈴木其一《芒野図屏風》がよかった。茫洋としていてデザインされていて。
〜6/23開催中の「ちたばし美術館」展。第1章は「江戸琳派とその周辺」ちたばし美術館のコレクションは、酒井抱一から弟子の其一、孤邨、ゆるかわ芳中に孫弟子の道一、光一まで網羅。琳派の祖・宗達の仔犬もいますよ。板橋区美とのコラボだからこそできる充実したラインナップをお楽しみください! pic.twitter.com/hgiKivOweS
— 千葉市美術館 (@ccma_jp) 2019年6月7日
秋田蘭画や司馬江漢と並んで出ていた洋風画家の石川大浪が気になった。
Ryu Itadani「ENJOY the VIEW」
現代の作家はあまり数を見ていないし詳しくないのだけれど、銀座のポーラミュージアム・アネックスは立地もよいのでこのところよく行っているきがする。
▶ Ryu Itadani「ENJOY the VIEW」|POLA MUSEUM ANNEX 過去の展覧会
色彩豊かに描かれる何気ない風景。ベルリン拠点の画家、Ryu Itadaniが個展「ENJOY the VIEW」を開催|MAGAZINE | 美術手帖
立体的なキャンバスで、天地左右まで書いているのがおもしろかった。明るい色彩で見ていて楽しくなる。
80年代のFM雑誌やシティポップのLPジャケットっぽいけれどそこまでカッチリしていないところが逆にリアルに感じる。
太陽の芸術 岡本太郎のパブリックアート(岡本太郎記念館)
大阪万博公園の《太陽の塔》をはじめとして全国各地に点在する岡本太郎のパブリックアートを紹介する展示。
企画展「太陽の芸術 -岡本太郎のパブリックアート-」 : PLAY TARO
岡本太郎記念館はいつも庭が楽しい。
松方コレクション展(国立西洋美術館)
ヨーロッパの画廊を空っぽにするという勢いで買いまくったという実業家・松方幸次郎による美術品コレクションの大展示。
とはいえ、大半は国立西洋美術館の収蔵品で、常設展で見ることができる作品も多く、オルセーからやってきたファン・ゴッホ《アルルの寝室》とゴーガン《扇のある静物》が見どころだろうか。
オルセー美術館の至宝!ゴッホの《アルルの寝室》。
— 松方コレクション展 (@matsukata2019) 2019年5月13日
こちらも実は松方コレクションでした。フランスに保管されていたのですが、第二次世界大戦末期に敵国人財産として接収されてしまい、その重要性ゆえに戦後も返還がかなわなかった作品のひとつです。#松方展 #国立西洋美術館 #ゴッホ pic.twitter.com/qcg4cXeqtZ
もちろん修復されたモネ《睡蓮、柳の反映》にも、修復されたという事実だけで感動する。
地獄の門も松方コレクションなんだけど、買ってきたどころではなく石膏の型だけ残ってたところに「ユー、鋳造しちゃいなよ」ってお金出して作らせたのを送ってきたっていう話は驚いた。
モダン・ウーマン フィンランド美術を彩った女性芸術家たち(国立西洋美術館)
ふだんは常設展で展示されている松方コレクションがいまは特別展に出ているということで、印象派とモネの部屋で代わりに開催されている展覧会。
▶ モダン・ウーマン―フィンランド美術を彩った女性芸術家たち|過去の展覧会|国立西洋美術館
常設展の扱いなので、松方コレクションの半券で入れるし、写真撮影もOKで、知らなかった作家の作品がいろいろとおもしろかった。
かわいい。
9月23日まで(松方コレクションも)。