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表参道で働くシニアのブログ

日本の都市とポップカルチャー。2000年のTOKYOと1600年の京が対峙した「2020年10月に見た展覧会」の感想。

自粛期間中に美術展がのきなみ中止になって、それで「現場に行けないのは寂しいな」って地下アイドルのオタクみたいなことをおもったんだけど、最近とくに強く感じるのは、自分にとって美術館はほんとに現場であって、図録やインターネットで作品を見るだけじゃ体験できないもの、実際に作品を目の前にして近づいたり遠ざかったり眺め回してはじめて感じれることがまれによくある(いつもあるわけではない)。だからこんなにいろいろと数をこなして通ってるんだろうとおもう。美術展のオタクなんだな。推しは曾我蕭白です。

この10月に見に行った展示をようやく振り返ったんだけど、そんな2000年のオタクっぽいポップカルチャーと400年前の日本の数寄者のポップカルチャーが対峙したみたいだった。

対峙する眼

岡本太郎の絵画や造形作品に見られる特有の「眼」にフォーカスした展示。岡本太郎記念館で2021年1月31日まで開催されている。

対峙する眼 | 岡本太郎記念館

よく知られた造形作品「動物」の原型。これをもとに作られた全長6メートルのコンクリート作品は、いま壊されてどうなったかわからないっていう話……?


日本美術の裏の裏

サントリー美術館のリニューアル・オープン記念展その2。11月末まで開催されていた。

リニューアル・オープン記念展 Ⅱ 日本美術の裏の裏 サントリー美術館

何度目か眼にする《かるかや》は見るたびにおもしろくなる。

目玉の円山応挙《青楓瀑布図》が涼しげでたいへんよかった。ほか《武蔵野図屏風》など。

五百羅漢図(第1幅~10幅)

増上寺宝物展示室で10幅ずつ公開されている狩野(逸見)一信の《五百羅漢図》は2017年からはじまった2巡目が一周して、12月21日まで最初の10幅が公開されている。

常設展 | 増上寺宝物展示室

まだ全部は見てないので来年の展示予定が出るのを楽しみに待ちたい。

名和晃平 新作個展「Oracle」

明治神宮の鎮座百年祭で鳳凰が飾られていた彫刻家、名和晃平の新作展が表参道のGYRE Galleryで2021年1月31日まで。

名和晃平 個展「Oracle」 | ART & GALLERY | GYRE

名和晃平がGYRE GALLERYで新作個展を開催。木彫漆箔仕上げの「雲鹿」も発表

生誕100年 石元泰博写真展 生命体としての都市

東京都写真美術館で11月23日まで開催されていた石元泰博の作品展。シカゴと東京という都市にフォーカスした作品を中心に展示されていた。シカゴなどはアメリカの都市の大きさ、空間をかんじさせる写真だった。

生誕100年 石元泰博写真展 生命体としての都市 東京都写真美術館

工藝2020 自然と美のかたち

東京国立博物館の表慶館という素晴らしい建物で、11月15日まで開催されていた日本の工芸作品の特別展。いかにも日本博というかオリンピックを契機に日本スゴイって言いたかった系の展示って側面もまああったのだろうけれど、工芸館の東京の最終展示を見てから工芸づいてきたので見に行った。

特別展 工藝2020-自然と美のかたち-:東京国立博物館

ところが何かちょっとピンとこない。このところ工芸ってただ上手いだけじゃないんだなってなったのだけれど、何かこの展示はかつて工芸にいだいていたすごく上手いけれどどこかで見たようなかんじ……という印象になってて、それであらためて作品の紹介プレートを見ていくとほんとうに若い作家の作品は出ていなくて、なるほど巨匠かとおもた。

東博で特別展「工藝2020 自然と美のかたち」が開催。人間国宝から次代の若手作品までが一堂に

それはそれとして夜の表慶館は最高なのでは? 気候もいいし、虫は鳴いてるし、ひとはいない。

本館の常設展示を見てたら浮世絵の部屋で葛飾応為が出てた。

フィリップ・ワイズベッカーが見た日本 ―大工道具、たてもの、日常品

オリンピックのポスターにすごくシンプルでかっこいい作品を提供していたフィリップ・ワイズベッカーの展示で、竹中工務店東京本店の一階にあるギャラリーで11月20日まで開催されていた。

Gallery A4:フィリップ・ワイズベッカーが見た日本 大工道具、たてもの、日常品

のこぎりすごくよい。

神戸にある竹中大工道具館でも2021年に開催されるらしい。竹中工務店とはかなりつながりがある方のようだった。

竹中大工道具館 | フィリップ・ワイズベッカーが見た日本―大工道具、たてもの、日常品

フィリップ・ワイズベッカーが見た日本(ギャラリー エー クワッド)

ポーラミュージアムアネックス展2020 透過と抵抗

ポーラ美術振興財団による助成作家による成果展の後期。銀座のポーラミュージアムアネックスによるで11月15日まで。

ポーラ ミュージアム アネックス|POLA MUSEUM ANNEX 過去の展覧会 詳細

光をかんじさせる作品が多かった。


Ba de ya - Osamu Mori / 森 靖

馬喰町のギャラリーPARCELで11月7日まで開催されていた木彫の展示。

Ba de ya | PARCEL

とにかくこの巨大なエルビス像のインパクトと迫力がありすぎて、これ無料で見てるのいいのかな? ってなる。

ENCOUNTERS

六本木に新しくできたギャラリーANBのオープニング展。あやちょ(和田彩花)のインスタで作品を見かけて「これ何だろう?」とおもってたら記事が見つかったので見てきた。

ANB Tokyo オープニング展「ENCOUNTERS」|六本木未来会議

ANB Tokyo オープニング展「ENCOUNTERS」 | ANB Tokyo

室内に土が盛られてるのインパクトあった。

オープニング展に26組のアーティストが集結。六本木の新アートコンプレックス「ANB Tokyo」が目指すものとは?|美術手帖

MANGA都市TOKYO ニッポンのマンガ・アニメ・ゲーム・特撮2020

フランスで好評だった展示の巡回で、国立新美術館で11月3日まで開催されていた。最近のアニメやマンガはほとんと見てなくて、シン・ゴジラも見てないしなあとおもってたんだけど、行ってみたら印象がちがっていて、これは「マンガ・アニメ・ゲーム・特撮」の展示であると同時に「TOKYO」についての展示でもあって、その東京というところで十分に興味深い展示だった。

MANGA都市TOKYO

作品としては80年代のあたりが自分にはやはり原体験になってるところがあって、TO-Yの原画を見てたら隣からPYS・Sが流れてきたときはアガりました(シティハンターの主題歌)

MANGA都市TOKYO ニッポンのマンガ・アニメ・ゲーム・特撮2020|国立新美術館

何より巨大なジオラマがすごくて、これだけ見ていて見飽きない。双眼鏡を持っていっててほんとによかった。小名木川のまっすぐ直線に掘られたいかにも運河なかんじとか。

よく見ないとわからないけどちゃんと高低差が付けられていて、たぶん平面と同縮尺なんじゃないかとおもったけど、東京とはすなわち台地と谷の都市であるので、高さはもっと強調してもよかったなあとおもった。あと北区のほうにも回り込みたかったし、東京駅周辺がよく見えないのでキャットウォーク的に上からの目線でも見たかった。

作品の話に戻ると『リバーズエッジ』の原画にはグッとくるものがあったけれど、これって「東京」じゃないよなっておもった。というよりこれまでさんざん「TOKYO」そのものを描いてきた岡崎京子がはじめて外を向いたというか、都心に背を向けて郊外と対峙した作品じゃないかとおもう。もっと東京をしっかり描いてる重要な岡崎作品はいくらもあるよね。それこそ『東京ガールズブラボー』とか。『ジオラマボーイ パノラマガール』とか『セカンド・バージン』とか。

藝大コレクション展 2020 藝大年代記(クロニクル)

毎年開催されている東京藝術大学の所蔵作品展。2020年は9月26日から10月25日まで開催。

藝大コレクション展 2020 藝大年代記

前にもここで見た《序の舞》が目玉かなとおもうんだけど、いつも「うまいというのは分かるが、何が面白いのかさっぱりわからない」という気持ちになる。わりと日本の近代日本画とか近代工芸とか見るといつもそうおもう。狩野芳崖《悲母観音》とかはアニメっぽいなーって印象があって、それが何であってどこから来るのかをずっと考えてる

四代田辺竹雲斎展覧会「CHIKUUNSAI Ⅳ ∞」

銀座蔦屋書店の売り場の真ん中にある展示スペースで10月18日まで開催祭されていた。

四代田辺竹雲斎展覧会「CHIKUUNSAI Ⅳ ∞」 | 銀座 蔦屋書店

これも工芸ってことになるのかな。巨大であるが野蛮さよりも落ち着いて見える。

桃山 天下人の100年

日本美術が室町末から江戸初期まで100年。これぞトーハクというか、そこらじゅう国宝や重文だらけで、ふつうなら目玉になりそうな、例えば俵屋宗達と本阿弥光悦のコラボ《鶴図下絵和歌巻》なんかがふつうに置いてあるんだけど、岩佐又兵衛《報国祭礼図屏風》みたいな細部を注視しないといけない作品にみんなかかりっきりになってるような展示。体力も気力も使う。洛中洛外図だけであわせていくつ出てたんだろう?

東京国立博物館 - 展示 日本の考古・特別展(平成館) 特別展「桃山―天下人の100年」

上に書いた「MANGA都市TOKYO」で20世紀末の日本のポップカルチャーが東京という都市ごと展示されてたとするなら、その400年前のポップカルチャーが「京」という都ごと展示されていたというかんじかもしれない。

インスタに投稿したこれは撮影スポットにあったレプリカ。

東博で特別展「桃山-天下人の100年」が開催。華麗な桃山文化に約230件の優品で迫る