もう大晦日なのに今年見た展示はまだ11月。11展示なのは偶然です。
- ハプスブルク展(国立西洋美術館)
- 窓展 窓をめぐるアートと建築の旅(東京国立近代美術館)
- 黄瀬戸・瀬戸黒・志野・織部 美濃の茶陶(サントリー美術館)
- ラスト・ウキヨエ(太田記念美術館)
- 鏑木清方 幻の《築地明石町》特別公開(東京国立近代美術館)
- 正倉院の世界(東京国立博物館 平成館)
- 人、神、自然 ザ・アール・サーニ・コレクションの名品が語る古代世界(東京国立博物館 東洋館)
- イメージの洞窟 意識の源を探る(東京写真美術館)
- 北斎 視覚のマジック 小布施・北斎館名品展(すみだ北斎美術館)
- 大浮世絵展(江戸東京博物館)
- 18世紀ソウルの日常 ユマンジュ日記の世界(江戸東京博物館)
ハプスブルク展(国立西洋美術館)
日本とオーストリアの友好150周年を記念して、ウィーン美術史美術館(Kunsthistorisches Museum)からハプスブルク家関連のコレクションが来日。ベラスケスによる《青いドレスの王女マルガリータ・テレサ》ほか。
窓展 窓をめぐるアートと建築の旅(東京国立近代美術館)
絵画の四角いキャンバスさらにその周りを飾る額縁は、絵の中の世界と現実とを分ける窓だと見ることができる。そういう芸術が内包する窓っぽさを突き詰めた展示。さまざまな写真や絵画、映像のほか、窓が作品の一部となっている現代アートまで幅広く展示されていて、多くの作品が撮影可だった。
つい先日、東京ステーションギャラリーで見たばかりの岸田劉生《麗子五歳之像》と再会。
ジェイムズ・キャッスル(James Castle)というアウトサイダーアーチスト。小品ながら心に残る作品だった。2015年に小山登美夫ギャラリーで展覧会があったらしい。
▶ ジェイムズ・キャッスル 展 – Tomio Koyama Gallery
タデウシュ・カントル《「死の教室」より ベンチに座る少年》。このように重い「窓」もあれば、バカバカしい印象の「窓」もあり、その構成が面白かった。
部屋全体をピンホールカメラに見立てた山中信夫の写真作品。ピンホールカメラなので屋外の映像は逆さまに投影されているが、室内のものの影が正立していて不思議な空間になっている。
これに影響を受けたというホンマタカシによる富嶽三十六景の1枚。富士山が見えるいろいろな部屋で撮影したなかの1枚だそう。
展示室の最後がゲルハルト・リヒター《8枚のガラス》で、混んでいる展示はうんざりだが、これだけは動いている人が多いほうが面白い。そして屋外作品の藤本壮介《窓に住む家/窓のない家》 は、外から見た印象と中に入ってみた印象がずいぶん違って面白かった。
黄瀬戸・瀬戸黒・志野・織部 美濃の茶陶(サントリー美術館)
改修工事でしばらくお休み(2020年の再開に向けてそういう美術館多い)になる六本木のサントリー美術館で全国から桃山時代の美濃焼きの名品にフォーカスした展示。全国の美術館、さらに個人像も含めて名品が数多く集まったようだけど、茶器のことはよくわからないのでひとつ勉強という気持ちでしげしげと眺める。
サントリー芸術財団50周年 黄瀬戸・瀬戸黒・志野・織部 -美濃の茶陶 サントリー美術館
志野茶碗《銘 卯花墻》はなるほどこれが国宝かと見入ってしまった。三井記念美術館の所蔵で、いまやってる「国宝 雪松図と明治天皇への献茶」展にも出てるはず。
ラスト・ウキヨエ(太田記念美術館)
最後の浮世絵師といえば、明治前期に活躍した血みどろの無残絵で知られる月岡芳年か、西洋の風景画の遠近や陰影を取り入れた光線画の小林清親、もしくは何でも書けぬものなしの河鍋暁斎というのが定説だけれど、さらにそのあと明治後期や大正期の浮世絵を特集した展示。洋画家、悳俊彦(いさお・としひこ)氏のコレクションによるものという。
初代歌川豊国から歌川国芳、さらに月岡芳年からその弟子へとつながる系譜、国芳の兄弟子にあたる歌川国貞の門人だった豊原国周から楊洲周延らにつながる系譜、浮世絵の師弟ではないところから出てきた尾形月耕に始める系譜、それ以外の作家(小林清親もここに入る)という構成。
いずれも明治という時代性を感じさせてそういう意味では面白いのだけど、作品としてのインパクトでは冒頭にゲスト参加的に出ている暁斎がもっとも強く、芳年はさすがによいなあという感想になってしまうので、なかなか難しい。
小原祥邨、川瀬巴水、吉田博といった新版画、風景版画は出ておらず。小林清親も光線画ではなく戦争画だったが、これは意外と面白かった。
鏑木清方 幻の《築地明石町》特別公開(東京国立近代美術館)
3作品あわせて5億4000万円の絵とはどういうものだろうとおもって見に行った。もっとも先月は123億のバスキアを見てきたわけだけど。
44年ぶりに発見。鏑木清方の名作《築地明石町》など3作品を東京国立近代美術館が新収蔵、公開へ|美術手帖
それでまあ感想としてはいつもどおり「近代の日本画はよくわからない」ということで帰ってきた。もちろん上手いし、手間がかかっているし、めちゃくちゃしっかり書かれていることはわかるんだけど、どこを面白く感じればいいのかがわからないというか、フュージョン系のジャズを聞いてるときみたいなかんじというか。
正倉院の世界(東京国立博物館 平成館)
後期展示。この展覧会そのものの目玉は前期に出ていた《螺鈿紫檀五絃琵琶》だと思うのだけれど、後期はササン朝ペルシアの《白瑠璃碗》だろうか。6世紀のガラスの器がいちども土に埋もれることなく、当時の輝きを残したまま現存しているのはやはりすごい。服飾品や布地もじっくりと見た
人、神、自然 ザ・アール・サーニ・コレクションの名品が語る古代世界(東京国立博物館 東洋館)
正倉院とあわせて、世界中の古代文明の工芸品。
東京国立博物館 - 展示 アジアギャラリー(東洋館) 特別展「人、神、自然-ザ・アール・サーニ・コレクションの名品が語る古代世界-」
カタールの王族、シェイク・ハマド・ビン・アブドラ・アール・サーニ殿下による収集品とのこと。
イメージの洞窟 意識の源を探る(東京写真美術館)
洞窟をモチーフや暗喩にした写真や映像作品を集めた展示。オサム・ジェームス・中川の〈ガマ〉シリーズがよかった。
フィオナ・タンの映像作品《近い将来からのたより》は部屋が混んでいたので最後に入ったのだけど、もっと早くからいて何度か繰り返して見ればよかった。
北斎 視覚のマジック 小布施・北斎館名品展(すみだ北斎美術館)
長野県小布施町の北斎館から祭屋台天井絵《鳳凰》《男浪》が来ているというので見に行ってきました。すみだ北斎美術館はなにげに初めて。天井絵はさすがに晩年の北斎という奇抜さにあふれていて、六本木の北斎展でも見た肉筆画《富士越龍》も来ていたけど、魔除けとして毎日書いたという〈日新除魔〉が素朴によかった。
常設展も、仕掛けのほうが話題になっていてどうかとおもっていたけれど、意外とよかった。富嶽三十六景は今年ちょっと見すぎてるきがする。
大浮世絵展(江戸東京博物館)
春に千葉美術館で見た「メアリー・エインズワース浮世絵コレクション」展は初期の作品が充実していたけれど、この展示では錦絵が登場してからのいわゆるご存知「ザ・ウキヨエ」という中からさらに、喜多川歌麿の美人絵、東洲斎写楽の役者絵、北斎と広重の風景、国芳の奇想と人気浮世絵師ばかりを集めていて、豪華といえば豪華だけど、歌川派から国芳だけでいいのかな? という気持ちになる。
所蔵先を見ると、ミネアポリス美術館、大英博物館、メトロポリタン美術館、シカゴ美術館、ギメ東洋美術館(パリ)、ベルギー王立美術歴史博物館、ボストン美術館と欧米各地から集められている。写楽をこれだけまとめて見たのは初めてで嬉しかった。赤富士は今日2回目。
18世紀ソウルの日常 ユマンジュ日記の世界(江戸東京博物館)
大浮世絵展を見に来たら常設展示室で面白そうな企画展をやっていたのであわせて見てきた。 18世紀後半の李氏朝鮮の士人の暮らしが垣間見れて興味深かった。