板橋区立美術館で、2020年7月11日から8月10日まで館蔵品展「狩野派学習帳」を開催しています。
副題に「今こそ江戸絵画の正統(メインストリーム)に学ぼう」とあるように江戸時代の(奇想ではない)保守本流をコンパクトに概観できる展示で、板橋区立美術館は決して交通の便がいい施設じゃないんですけど、成増からバスで10分揺られて行ってよかった! しかも館蔵品展なので無料でした。
狩野派って、日本絵画史上最大の絵師集団などと言われますが、画派初期の正信・元信、安土桃山文化を担った永徳、そして江戸幕府の御用絵師としての地位を確立した探幽、あたりまで分かるものの、あとはかなりふんわりした印象だったので、しっかり流れを追って解説されたいなーと常々おもっていたのでした。
狩野典信〈唐子遊図屏風〉です。三の丸尚蔵館にある狩野探幽〈唐子遊図屏風〉の構図をそのまま参照して描かれた、狩野派の伝統に則った画題とのこと。
同じく典信〈大黒図〉で、これは探幽以前の力強い作風を学んだもの。このように伝統に学びつつ少しずつ当世風の工夫をしていたということでした。
さて、打って変わってこちらは狩野派の系譜ではありますが、増上寺の五百羅漢図で知られる逸見一信〈源平合戦図屏風〉で、河鍋暁斎とともに狩野派末裔の奇想というべきひとです。この大作が裸展示されていてこれも目玉のひとつでした。
これは扇の的が見事に射られるように那須与一の場面ですね。
こちらは平敦盛の最後。追いかけるのが熊谷直実。
同じ屏風の裏に描かれているのが〈龍虎図屏風〉です。
裸展示なのでグッと寄れます。なかなか迫力がある。
新収蔵作品にも一信が2作品。こちらが〈布袋唐子図〉です。一信は五百羅漢図の印象が強すぎるので、こうしてほかの作品が見れるのは嬉しいです。作品が少なく、海外の美術館収蔵も多くて、国内でもそう見れないようですから、こうしてまとまって見ることができてよかったです。
もちろん正信〈連地蟹図〉や探幽〈富士山図屏風〉、常信〈四季花鳥図〉など、狩野派らしい作品もあり全33作品が堪能できる美術展でした。勉強になりました。