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表参道で働くシニアのブログ

どこまでも人工的なのに、のどかで寂れている筑波大学学生宿舎の不思議な立地とアート《礼和元年5月に見た14の展示》

礼和・ウィーン・国宝・世紀末・大火・バーグ・茶会・開港・ファムファタル・筑波大学夏景色。そんな5月でした。

ウィーン・モダン クリムト、シーレ 世紀末への道(国立新美術館)

この春から世紀末ウィーンに関連した展示がいくつか東京でまとまって開催されているなかでも一番の総合展だった「ウィーン・モダン」展。ゴールデンウィーク中にもかかわらずけっこうゆったり見られた感想はこちらに書きました。

国立新美術館で8月5日まで。そのあと大阪に巡回します。

information or inspiration? 左脳と右脳でたのしむ日本の美(サントリー美術館)

思ってたんとちょっと違ってそれだけ楽しめた展示。人によって好きなひととそうでもない人が分かれそう。あの壁面解説の文字数をカタログに完全収録されてたらすごかったけど、さすがにそれはなかった。

世紀末ウィーンのグラフィック(目黒区美術館)

京都国立近代美術館が2015年に収蔵したグラフィック作品等で企画した展示の巡回で、2019年前半の世紀末ウィーン連続展示では一番の資料展。アパレル会社のキャビンを創業した平明暘(ひらあき・いずる)氏のコレクションとのこと。

京都国立近代美術館所蔵 世紀末ウィーンのグラフィック | 目黒区美術館

グスタフ・クリムトも参加したウィーン分離派の機関紙やポスター、さまざまな図案・版画・装丁など、世紀末芸術らしい装飾に満ちたグラフィックが大量に。コロマン・モーザー、カール・モルなど。


日を紡ぐ 日本美術の名品(東京国立博物館)

国宝8点・重文14点を含むコンパクトで豪華な展示。平成31年の国宝・重文の新指定もあわせて

世紀末ウィーンの展示を続けて見たあとだとアールヌーボーかな? と思っちゃう松林桂月《溪山春色》。

二日間だけの両国橋ワンダーランド(回向院)

明暦の大火をきっかけに架橋された両国橋が今年で360年。そのたもとの回向院には鳥居清長の墓所があるということで、8年前から日本画の展示会を開催しているとのこと

「二日間だけの 両国橋ワンダーランド」展 | 回向院 | インターネットミュージアム

渓斎英泉の江戸八景《両国橋の夕照》では遠近でパースが露骨に異なっていておもしろかった。あと渡辺省亭の美人画が出ていたのだけど、このひと美人画も書いたんだね。


束芋「透明な歪み」(ポーラミュージアムアネックス)

独特なアニメーション作品の束芋だけど、油絵の展示は初とのこと。ストーリーを想起させる絵が並んでいて、どうもすべてに原作があるらしいのだけれどそれが伏せられているので解決されない不安感が持続するような展示。

ポーラ ミュージアム アネックス|POLA MUSEUM ANNEX 過去の展覧会 詳細

束芋が個展「透明な歪み」を開催。自身初となる油絵を含む新作約10点を発表|MAGAZINE | 美術手帖

印象派への旅 海運王の夢 バレル・コレクション(Bunkamura ザ・ミュージアム)

印象派と銘打っているが、実際の展示は「への」が効いていて、バルビゾン派であったりオランダのハーグ派に属する作家の作品が多い。バレルは英国グラスゴーの貿易商とのことだけど、海運でオランダとつながりが深かったことがうかがえる。

Bunkamura30周年記念 印象派への旅 海運王の夢 バレル・コレクション | ザ・ミュージアム | Bunkamura

全体に小品が多く、ルノアールやモネなどの静物画がよかった。後半の川辺や外洋を描いたセクションでは、同時期に新宿でやってたドービニーの作品もいくつか出ていた。

日本財団 DIVERSITY IN THE ARTS 公募展 | 展覧会情報 | ギャラリー | Bunkamura

同時期に、たまたま1階のギャラリーでは「日本財団 DIVERSITY IN THE ARTS 公募展」で障害者のアート作品が展示されていた。

いくつかすごくよいものがあった。

Meet the Collection アートと人と、美術館(横浜美術館)

開館30周年を記念した収蔵品による大規模な展示。日本画、現代美術、写真、版画、彫刻などなどが「バラエティ豊か」とサイトには書いてあるけれど、これ全体として脈絡は何なんやろ? という作品がこれでもかと並べられている。

横浜美術館開館30周年記念 Meet the Collection ―アートと人と、美術館 | 横浜美術館

どうやら地元の名士の寄贈であったり特定ジャンルに収集活動によったりで、さまざまな文脈にまたがるコレクションが形成されたということらしい。

ゲスト・アーティストの淺井裕介が部屋ごとペイントした《いのちの木》がおもしろかった。

ロビーにも。

クリムト展 ウィーンと日本 1900(東京都美術館)

日本では過去最大級のクリムト展というふれこみで、2019年前半の世紀末ウィーン連続展示では一番たくさんクリムトの作品が出ていた。油彩画で25点とのこと。

クリムト展 ウィーンと日本 1900|東京都美術館

見どころはやはり《ユディトⅠ》。そして《ベートーヴェン・フリーズ》の原寸大複製。初期の《ヘレーネ・クリムトの肖像》や風景画もよかった。

【公式】クリムト展 ウィーンと日本1900

夏休みから豊田市に巡回。

トム・サックス ティーセレモニー(東京オペラシティアートギャラリー)

「ティーセレモニー」とは茶の湯の茶会のこと。ノグチ美術館(ニューヨーク、2016年)で制作され、サンフランシスコ、ダラスと巡回した展示が来日。

トム・サックス ティーセレモニー|東京オペラシティアートギャラリー

合板をつなぎ合わせたりレディメイドによるるハンドメイドのお茶席で、これは茶道のパロディなのかなとおもってたら、ガチでかっこよかった。

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ヨーダ推しのお茶会を見てきた。なんか楽しくなった。

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すごく楽しい気持ちになった。

入って最初に目にするダンボールの庭石にやられる。

わびがある。

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横浜浮世絵〔前期〕(神奈川県立歴史博物館)

幕末、日米修好通商条約に基づいて横浜村(当時)に港ができて160年。開港からの賑わいや交通の発展など横浜の様子を描いた浮世絵を「横浜浮世絵」と呼ぶということを初めて知りました。

【特別展】横浜開港160年 横浜浮世絵 | 神奈川県立歴史博物館

係員に何やら質問していた来館者が回答を聞いて「あ、ブラタモリで見た!」と言ってたのが印象的で、なんの話かというと、最初は砂州に町を作って、その内側を埋め立てて町を拡張したってことだったかとおもいます。たしか。

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歴史と文化があった

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美術展というよりは、横浜が当時の人にどのような目で見られていたのかを見るというかんじでした。

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ギュスターヴ・モロー展 サロメと宿命の女たち(パナソニック汐留美術館)

フランス象徴主義の画家、ギュスターヴ・モローの《出現》など70作品を展示。

ギュスターヴ・モロー展 | パナソニック汐留美術館 Panasonic Shiodome Museum of Art | Panasonic

19世紀末(から20世紀初頭)のヨーロッパでファム・ファタルを装飾的に描いたという点で、月の前半にたくさん見た世紀末ウィーンのグスタフ・クリムトと国は違えど同時代性があるんだということに会場に入ってから気づいた。そりゃ当然そうなんだけど、作品を見ると実感がある。

この7月からあべのハルカス美術館に巡回しています。

ルート・ブリュック展(東京ステーションギャラリー)

フィンランドを代表するセラミック・アーティスト、ルート・ブリュック日本初の大規模展。

RUT BRYK | ルート・ブリュック展

この展示ではじめて知ったけど、すごくよかった。夕方から入ったので1時間やそこらでは時間が足らなかった。

撮影可だった上のフロアはかわいい作品が多かったけど、下のフロアはもっと幾何学的だったり地図にインスパイヤされていたりしていてクール。

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図録がふつうにアマゾンで買えて便利。

確かにキャシャーキャシャーとスマホの撮影音が鳴り響いてたのが残念だった。

とうことで、撮影可の美術展に行くなら無音カメラアプリを入れておくとよさそうです。

‎「Microsoft Pix カメラ」をApp Storeで

iPhoneならMicrosoft Pix

Open Camera - Google Play のアプリ

AndroidではOpen Cameraが定番とのこと。

2020年にかけて伊丹、岐阜、久留米、新潟と巡回。

平砂アートムーヴメント2019

筑波大学で今は利用されていない学生宿舎を会場にした展示。

筑波大の閉鎖した宿舎でアート展示 「作家同士もコミュニケーションを」 - つくば経済新聞

5月後半のすごく天気のよい日だったせいかもしれないけれど、とてものどかで、寂れていて、そして徹底して人工的な空間だった。人工的×のどかな空間ってそうそうあるもんじゃない。

部屋が五角形でバス・トイレ共同ということで住みにくさばかり強調される建物だけど、こうして半廃墟化した外観にはすでにアートっぽさがある。

展示は、部屋それぞれが一組の展示に使われていて、3階まで何十もの部屋を順に開けて鑑賞して次に移るということの繰り返し。全部を回るのはちょっとたいへん。平日だったけど、人はそれなりに訪れてたようだった。

わかりにくいけど屋上空間を生かした作品。

トイレにも。

いろいろな方向の展示があって面白かったけれど、どうしても会場が持つ「今は使われていない学生宿舎のひと部屋」というストーリーには引っ張られてしまうね。

最終日がちょうど宿舎祭だったらしい。歩いて中央図書館まで往復したらめちゃくちゃ疲れた。

最後の照明によるインスタレーションまで見ていたのは数人でした。