それにしてもこの本を出してからの2年間でFreeBSDを巡る状況は大きく変わった。というとちょっと語弊がある。状況が変わったのは、インターネットのいわゆる「ラスト・ワン・マイル」であって、つまり劇的に速くなってきている。
2年前に徹底入門を改訂したころには、まだDSLを導入しているのは先進的な人であって、それも今ほど太い線ではなかったはず。一般的にはまだまだISDNや電話回線のアナログモデムで接続していたのが大多数だったのではないだろうか。
そういった前提で書かれているこの本は、だから「なるべくネット資源を使わない」ようにしようとしている。それだけではなくって、古き良きUNIX文化の伝統である、マシン資源を浪費しないこと、つまりディスクは貴重であり、CPUは大切であり、メモリをいかに効率的に活用するかといったことに心がけることが良い管理者であるということだ。
そのため、改訂版徹底活用でも旧版と同じようにpackagesを基本的に大活用することになっている。portsからmakeすれば最新版を入れられるが、それはネットから最新のports.tgzとdistfileをゲットしなければならないことを意味し、また何かの弾みでX上のアプリをmakeしようものなら依存性の関係でXそのものまで最新版をmakeし始めて一体何時間で終わるのかー! という時代である。make worldなぞは決死の覚悟をもって臨むものであった。
ところが今はどうだろう。FreeBSDを入れようかと考えるくらいの物好きならたいていADSLだろうし、光を引いてる人だって珍しくはない。ディスクはバカのように安くなった。パーティションを切り分けるのがまったく無意味に思えるほどである。CPUに至ってはアレだ、もう何倍速くなった? make worldだろうがXだろうが数時間で終わってしまうんじゃないだろうか。
そういう物理的に恵まれて物量作戦的なチカラワザが効くようになってくれば、もういちいちpackagesを選んだりするのは面倒だということである。おそらく2004年流ののFreeBSDのインストール・管理はこんな具合に回線の太さとCPUの速さにあかせて、例え家庭用途であろうと、一昔前の管理者なら眉をひそめるこのようなチカラワザで進行するのではないあろうか。
- 適当に雑誌付録CD-ROMから最新かその前あたりの4-RELEASEを突っ込む。
- パーティションは面倒なので/とswapだけ。
- Xは入れない(どうせ後からports-currentをmakeするので)
- ネットワークなどひととおり設定したらリブート
- net/cvsupをmake install clean
- make.confにCVS関連の設定をして/usr/srcでmake update buildworld
- make updateついでにportsもports-currentになるように設定
- 問題なければmake installworld
- 最新の4-RELEASEから4-STABLEへならmargemasterは不要なはず
- カーネルのconfigを書いてmake buildkernel installkernel
- リブートする
- sysutil/portsupgradeをmake install clean
- 以後は必要なprtsをportinstallでインストール
- 不要になったらpkg_deinstall -Rで依存関係ごと削除
- 日々のOSの更新もCVSとmakeでガシガシ
- 定期的にmake update world kernel; portsupgrade -a
すごいなあ、と思った。