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表参道で働くシニアのブログ

赤めだか/立川談春

雨の中を本屋に出かけてぶらぶらと雑誌を見ていたらブルータスの新しい号に談春が出てて、ブルータスが前にやった落語特集はもう箸にも棒にもかからない最悪に酷いもんだったがこの記事は面白くて、どうやら談春がen-taxi誌で書いてた自叙だかエッセイだか分類はやっかいだがとにかく突き放した文体がすごく面白い文章がまとまって本になったのをインタビューされてたようだけどこの1ページのほかには読むべきところの無いような雑誌を買うのもいかがなものかと引き続き本屋をぶらぶら流していたら、サブカルチャーのコーナーでくだんのエッセイ集だか自叙伝だか私小説だかの単行本を見かけた。文芸書じゃなくて「芸能人(落語家)の本」扱いになってたのな。

赤めだか

赤めだか

ブルータスの記事では「談志と小さん」について書いてるのが読みどころだというんでそれを探したらいちばん最後に載ってて、ちょうどいいやと軽い気持ちで読みはじめたらこれがもうとんでもない顛末のとんでもない愛憎と矜持が錯綜する伊達と酔狂と思惑の賜物で下手な宣伝文句じゃないが「泣きながら一気に読みました」というか立ち読みなんで泣かないように我慢したが、とにかく落語を少しでも愛するものなら全員が読むべきである。最後の談志のセリフを読んで泣くべきである。とにかくも本屋の片隅で立ち読みしながら文字通り感動でうち震えたわけで、これはご祝儀を払わなければ嘘になってしまうので立ち読みで済ませるつもりだったところをその本をつかんでレジまで行って金を払った。

テレビドラマだかテレビ小説だかのおかげで落語ブームだそうだが、そういうところでは語られない、落語というものの奥深さ、奥が抜けて底なしになった深さがここにはある。ビートたけしがオールナイトニッポンでこそ表現できたある種のアナーキズム、アトランタ五輪男子マラソンの裏でやけくそのように超長尺を一挙放送されたダウンタウン松本人志「トカゲのおっさん」の狂気、そういった人間のダークサイドを包含していることこそが日本の「お笑い」のすごさだと思うのだが、それを立川談志は「人間の業(ごう)の肯定」であると論じた。その「業」論において談志門下でももっとも突き詰めているのが談春だ。本書はそういう本である。

金を払って持って帰ってきて、まだ本屋のかけ紙をかけたままで開いていない。ほとぼりが醒めたころに積ん読の中から発掘して忘れたように読もうとおもう。

立川談春“20年目の収穫祭”

立川談春“20年目の収穫祭”

en-taxi (ODAIBA MOOK)

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