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表参道で働くシニアのブログ

応挙の幽霊・岸駒の虎 ─ 円朝忌と円山四条派のすべて

とにかく厳しい残暑の昼日中、汗だくだくになりながら山手線は日暮里の駅から10分ほど歩いてたどりついた本堂の左側の一室、数十点の掛け軸が並んでおり、そのすべてが幽霊。

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幽霊を見に来た

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近代落語の祖にして自ら創作した「真景累ヶ淵」などの怪談話も得意とした三遊亭圓朝は、また幽霊画のコレクターとしても知られており、墓所である谷中の全生庵が所蔵するコレクションが毎年夏に一般公開される。それを初めて見てきたのだけれど、お盆の時期だったためかかなりの人で賑わっていた。後で気づいたのだが圓朝の命日だったらしい。

www.yureiga.com

公式サイトに出ているチラシの幽霊は、伝・円山応挙。いまの幽霊に足がない幽霊のは応挙の絵にならったためという説もあるほどだが、意外なことに真筆と認められるものは青森とカリフォルニアにある2点のみで、ここで見れた幽霊もかなり上手な模写なのかもしれないとのこと。とはいえ、素人目にはわからない。

幽霊名画集―全生庵蔵・三遊亭円朝コレクション (ちくま学芸文庫)

幽霊名画集―全生庵蔵・三遊亭円朝コレクション (ちくま学芸文庫)

入ってすぐ目に止まったのが河鍋暁斎、並びが中村芳中、渡辺省亭の幽霊はさすがに上手い。今村紫紅、鏑木清方、菊池容斎、伊藤晴雨。月岡芳年《宿屋女郎図》は幽霊ではないけれど真に迫る。圓朝と同年代の作家が多いようだが、気になる画家が多くて嬉しくなる。

伝・高橋由一《幽冥無実之図》は日本初の洋画家が書いた日本画という珍しさもあるが、他の幽霊にはない西洋画らしい陰影をかんじた。

okyokindai2019.exhibit.jp

その足で、またアスファルトの照り返しの中を10分ほど歩いて、同じ上野台地にある東京藝術大学大学美術館「円山応挙から近代京都画壇へ」展に。ここでまた円山応挙を見る。

見ものはやはり大乗寺の障壁画で、応挙《松に孔雀図》は金地に墨一色とのことなのだが、背景が金色であるためか松の枝は青く、幹の根元は茶色く見える。孔雀もカラフルに見えてくるのでおもしろい。

円山応挙《江口君図》には、つい先ほど全正庵で見た幽霊画に似たような気品があったような気がするなあという思いながら見た。白象に乗っているのは普賢菩薩信仰の現れとのこと。

会場でいちばん「これはすごい」と見入ったのが、木島櫻谷《山水図》で、六曲一双の屏風なのだが、とにかく大きい。8面の襖絵より大きいのではないか。ここまで大きいと間仕切りとしての役割を果たすものなのかわからないけれど、急にこの作家が気になってきた。

タイトルに入れたのだけど、東京・京都と見た横山華山展でよく名前が出てきた岸駒の有名な「虎」を見ることができたのも嬉しかった。

そういえば応挙の弟子ということで長沢芦雪がいくつも出ていたのだけれど、さすがに円山派の展示となると奇想の要素は少なめの作品が選ばれていたのか、平成の終わりに都立美術館や府中市美術館で見てきた芦雪とはまた趣が違った。勝手な印象だけど、円山応挙を5代目柳家小さんとして、芦雪が談志で、呉春が小三治というように見えた(呉春は応挙の弟子ではなかったらしいけど、画壇の後継として)

円山応挙から近代京都画壇へ

円山応挙から近代京都画壇へ

東京会場の作品リストに掲載された105点のうち、通期展示は11点のみ(うち3点は場面変えなどあり)で、ほとんどが入れ替わるので9月に入ってからまた来ようとおもう。作品番号は124まであったので、どうやら巡回先の京都国立博物館にしか出ない絵も19点あるようだ。

近世、近代日本画の歴史を一気にたどる『円山応挙から近代京都画壇へ』。 | カーサ ブルータス Casa BRUTUS