ここのところビートルズをまとめて聴く機会があって、さすがビートルズだなと感心したのは、アルバム未収録曲や未発表曲がアルバムそのものとは別にまとめられているということ。これが正規の作品の正式なリリースである、という形が決められてて、ずっとそのスタイルに従って再発が続けられている。
ふつうはCD再発となると未発表音源がボーナストラックで追加されて、それも再発のたびに増えて、xx周年記念盤やら「デラックス・エディション」やらとなると追加トラックのほうが多いなんてこともある。La'sとかね。
ビートルズと同時期に活躍したキンクスだってこんなかんじだったりする。
マスウェル・ヒルビリーズ+13<デラックス・エディション>(紙ジャケット仕様)
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とはいえ、これにはこれでよいところがあって、同じ曲のバージョン違いを聴き比べるのにCDを入れ替えなくて済む。なにより、同じセッションで収録されたアルバム未収録シングルやB面曲はまとめて聴いたほうが、そのころグループがどういう方向性だったのかがわかりやすい。
ということで、いまならPCに取り込んで勝手にプレイリストを作ってしまえば年代順に並べられるわけだから、作ってみました『プリーズ・プリーズ・ミー +5』をはじめとする、ボーナストラック付きのビートルズのアルバムを。
ただし、1966年までですが、どうぞ!
■ Please Please Me +5
1963年にリリースされたビートルズのファーストアルバム。1962年中に録音された2枚の既発シングルAB面4曲を除き、すべて2月11日のわずか1日で10曲が録音されている。
追加トラックのない正規のスタイルのアルバムはこちらのCDで聴ける(紙ジャケ再発ってちょっと前に出てなかったっけ?)。
- アーティスト: ザ・ビートルズ
- 出版社/メーカー: ユニバーサル ミュージック
- 発売日: 2014/12/17
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これにどういうトラックを追加すればいいか、アルバム未収録曲を集めた『パストマスターズ』と、未発表のアウトテイクなどを集めた「アンソロジー」シリーズからピックアップしてみる。
アルバム用レコーディングからのアウトテイクはなくて、先行するシングルおよびオーディションのための3回のレコーディングから、次の計5曲がボーナストラックだ。デビューシングルの「ラブ・ミー・ドゥ」が計3テイク、それぞれ録音日とドラマー違いで聴き比べられる。
Past Masters より
- 15. Love Me Do [single, 1962] [with Ringo Starr] [mono]
アルバムには、プロデューサーのジョージ・マーティンが立てたセッションドラマーのアンディ・ホワイトが参加した9月11日の録音が収録されているが、その1周間前、正規のドラマーであるリンゴ・スターが参加した録音。シングルのファーストプレスのみに使用され、マスターは破棄されたとされる。
Anthology 1 より
- 16. Besame Mucho [with Pete Best] [mono]
- 17. Love Me Do [with Pete Best] [mono]
- 18. How Do You Do It [with Ringo Starr] [mono]
- 19. Please Please Me [with Andy White] [mono]
シングル録音の3か月前、ビートルズは1962年6月6日にアビーロードでの最初の録音を、オーディションとして行った。ドラマーはこの直後に解雇されてリンゴに交代させられるピート・ベスト。16と17がピートにとっては最後の録音ともなった。
18は、9月4日のアウトテイク。19は、11月26日にセカンドシングルとして再録音される。
■ With the Beatles +8
デビューアルバムの成功をうけて1963年後半に制作、販売されたセカンド。
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最近のCDとは違い、アナログ・レコードの時代には先行するシングルがあってもアルバムは別物として再収録しないことがよくあった。このアルバムでも、ボーナストラックはそういったアルバム未収録シングルが中心となる。
Past Masters より
- 15. From Me to You [single, 1963 A-side]
- 16. Thank You Girl [single, 1963 B-side]
- 17. She Loves You [single, 1963 A-side]
- 18. I'll Get You [single, 1963 B-side]
- 19. I Want to Hold Your Hand [single, 1963 A-side]
- 20. This Boy [single, 1963 B-side]
「フロム・ミー・トゥ・ユー」は3月、「シー・ラブズ・ユー」は7月、「抱きしめたい」は10月のレコーディングで、すべてAB面が同日に1日で録音されている。
Anthology 1 より
- 21. One After 909 [sequence] [mono]
- 22. One After 909 [outtake] [mono]
「フロム・ミー・トゥ・ユー」セッションのアウトテイクで、後にゲット・バック・セッションで再び取り上げられ『レット・イット・ビー』に収録される。
■ A Hard Day's Night +12
1964年に録音、発売された3枚目のアルバム。前半(A面)は同タイトルの初主演映画『ビートルズがやって来るヤァ!ヤァ!ヤァ!』のサントラ。
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Past Masters より
- 14. Komm, Gib Mir Deine Hand (I Want to Hold Your Hand) [Deutsche]
- 15. Sie Leibt Dich (She Loves You) [Deutsche]
- 16. Long Tall Sally [EP, 1964] (Little Richard cover)
- 17. I Call Your Name [EP, 1964]
- 18. Slow Down [EP, 1964] (Larry Williams cover)
- 19. Matchbox [EP, 1964] (Carl Perkins cover)
14と15は、パリ滞在中の1月29日に録音されたドイツ語盤。同日にシングル「キャント・バイ・ミー・ラヴ」も録音されている。16からの4曲は、アルバムの前にリリースされたオリジナルEP収録曲。
Anthology 1 より
- 20. Can't Buy Me Love [takes 1 & 2]
- 21. You Can't Do That [take 6]
- 22. And I Love Her [take 2]
- 23. A Hard Day's Night [take 1]
- 24. I'll Be Back [take 2]
- 25. I'll Be Back [take 3]
すべてアルバム収録曲のテイク違い。
■ Beatles for Sale +10
1964年のクリスマスシーズンにリリースされた4枚目。シングル曲は収録されていない。
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Past Masters より
- 15. I Feel Fine [single, 1964 A-side]
- 16. She's a Woman [single, 1964 B-side]
アルバムに先行してリリースされたシングルのAB面。
Anthology 1 より
- 17. You Know What to Do [demo]
- 18. No Reply [demo]
- 19. Mr. Moonlight [take 1 & 4]
- 20. Leave My Kitten Alone [take 5]
- 21. No Reply [take 2]
- 22. Eight Days a Week [false starts]
- 23. Eight Days a Week [take 5]
- 24. Kansas City / Hey-Hey-Hey-Hey! [take 2]
アルバム収録曲のデモおよびアウトテイク。デモは、先のアルバムの録音が終了した数日後に早くもレコーディングされている。
■ Help! +10
1965年8月リリースの5枚目。A面は同タイトルの主演映画『4人はアイドル』のサントラ。
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Past Masters より
- 15. Bad Boy [US album, 1965] (Larry Williams cover)
- 16. Yes It Is [single, 1965 B-side]
- 17. I'm Down [single, 1965 B-side]
16はシングル「涙の乗車券」の、17は「ヘルプ!」のB面曲。こういうカップリング曲を合わせて聞けるのがボーナストラックの醍醐味だろう。15は米国盤アルバム『Beatles VI』に収録された。
Anthology 2 より
- 18. Yes It Is [takes 2 & 14]
- 19. I'm Down [take 1]
- 20. You've Got to Hide Your Love Away [takes 1, 2 & 5] [mono]
- 21. If You've Got Trouble [take 1]
- 22. That Means a Lot [take 1]
- 23. Yesterday [take 1]
- 24. It's Only Love [takes 2 &3]
アルバムおよびシングルのアウトテイク。
■ Rubber Soul +5
1965年のクリスマスシーズンにリリースされた6枚目のアルバム。シタールを取り入れるなど、音楽的な変化が現れはじめたレコードとして知られるが、ほとんどの曲が10月半ばの短い期間に集中して録音されたためか、ボーナストラックは少ない。
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Past Masters より
- 15. Day Tripper [single, 1965]
- 16. We Can Work It Out [single, 1965]
アルバムと同セッションの録音だが、アルバムには未収録の両A面シングル。「デイ・トリッパー」は「ノルウェーの森」と同時期の曲というのがわかるのがなんとなく嬉しい。
Anthology 2 より
- 17. Norwegian Wood (This Bird Has Flown) [take 1]
- 18. I'm Looking Through You [take 1]
- 19. 12-Bar Original [edited Take 2]
17と18はアルバムのアウトテイク。19は完全未発表のインスト曲。
■ Revolver +9
1966年録音、リリースの7枚目。ビートルズがライブ活動を止めた年でもある。2年後に映画タイトル曲となる「イエロー・サブマリン」が収録されている。
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Past Masters より
- 15. Paperback Writer [single, 1966 A-side]
- 16. Rain [single, 1966 B-side]
こちらも同時期録音ながらアルバム未収録のシングル。「ペイパーバック・ライター」は「トゥモロー・ネバー・ノウズ」と同時期。
Anthology 2 より
- 17. Tomorrow Never Knows [take 1]
- 18. Got to Get You into My Life [take 5] [mono]
- 19. And Your Bird Can Sing [take 2]
- 20. Taxman [take 11]
- 21. Eleanor Rigby [take 14] [strings only]
- 22. I'm Only Sleeping [rehearsal]
- 23. I'm Only Sleeping [take 1]
アルバムからのアウトテイク。
最後に
この記事で挙げたアルバム未収録曲は『パストマスターズ』から。
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未発表曲は『アンソロジー1』と『アンソロジー2』に収録されていたもの。
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アンソロジーには上記のほかデビュー前の音源や、デビュー後のライブ音源なども含まれていて、ライブのみを集めるとちょうどCD 1枚分に収まってこれもいいかんじ。
以上、ただまとめてみただけの記事ですが、アルバム単位ではなく録音時期でくくって聴いてみるもの普段とはまた違った趣がありました。もっとも、こういう本も出てることだし、ファンの方なら言われるまでもなくやってることではあるんでしょうが……。
- 作者: マーク・ルーイスン,内田久美子
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「ストロベリー・フィールズ・フォーエヴァー / ペニー・レイン」以降の自由すぎるビートルズの「デラックス・エディション」については、みなさんもよかったら考えてみてください。