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表参道で働くシニアのブログ

駅舎とデパートを密結合させすぎた80年越しの負債を返済する渋谷駅 ─ 井の頭線と銀座線の連絡通路をめぐって


銀座線の渋谷駅が新しくなりました。なんといってもホームが広い。柱もなくガラスと鉄のモダンな作りで「世界の車窓から」で見るヨーロッパの駅みたい。でも、違和感がすごい。上の写真も終電間際にスマホで撮ったんだけど、なんかイメージボードみたい。現実味があまりない。

銀座線といえば日本でいちばん古い戦前からの地下鉄だけに、どの駅ももれなく狭い。なので広いホームに銀座線の車両が停まってても、なんだか銀座線じゃないみたいだ。

銀座線が井の頭線からさらに遠くなった

「渋谷を使わない星に行く」「もとに戻して」新しくなった銀座線渋谷駅で初の通勤ラッシュ! - Togetter

新しくなったのはいいけど乗り換えがよくないという話があって、とくに井の頭線からの乗り換えがたいへんらしい。

井の頭線から銀座線って、旧ホームだと明日への神話の広場から左手の階段を上がって神戸屋キッチンのほうから来る人が多かったんでしょうか? いまの動線だと、東急東横店西館を横切って右に折れて蕎麦屋の横の階段を登った3階の乗り換えコンコースでJR中央改札からも出てきた人とかちあってしまう。

自分はJRからの乗り換えで、ピークタイムも外れてるせいか混雑はそんなでもないけれど、思ってたより遠い。今まで改札の目の前に車両のドアがあったのが、改札通って少し歩いてようやく車両の端なので、電車が見えてからもうちょっと歩く。頭端式って遠いんだなって実感した。

これがもうちょっとすると、埼京線のホーム移動をにらんで、JRの中央東改札ができるみたいなので、中央改札前の混雑も少しは改善するかもしれない。

東急東横店西館を壊したら連絡通路どうなるの?

井の頭線から銀座線の連絡通路はいま東急東横店の西館を突っ切っているけど、西館と南館は3月31日に営業を終えてそれから解体されるので、連絡通路も仮設に移動することになるはず。

たぶん西館の南側を迂回してるこの足場の上に連絡通路ができるんじゃないだろうか? という予想をひとつ書いておくことにする。

井の頭線の改札側からだと、岡本太郎《明日への神話》の先で右に折れて西館の敷地を反時計方向に回り込み、モヤイ像の上あたりから連絡階段の正面あたりに、以前にジューススタンドや、その前にはマネケンがあったとこから突っ込むんじゃないかというイメージなんだけど、外れてたら、ごめんなさい。

その突っ込む先の南館も壊すはずなので、南館を壊してから仮設の連絡通路ができるのかも?

というような工事の「やりくり」を予想するのがとても好きだ。という話は以前にも書いた。渋谷駅は同時多発的に工事が進んでるので、日々の発見がほんとうに多い現場になっている。


2027年に井の頭線から銀座線の乗り換えはどうなる?

渋谷駅はまだまだ四方八方に工事を残していて、井の頭線からの連絡通路を含めた西館跡地や、スクランブルスクエア東館の新築、JR山手線のホーム改良などなど全部が完了するのは、7年後の2027年ということ。

その2027年に完成した渋谷駅で、いま不便だと不人気な井の頭線から銀座線への乗り換えがどうなるか? 完成予想図がJR東日本の発表資料で2015年にもう出ているので見てみましょう。

JR渋谷駅改良工事の本体工事着手について - 2015年7月14日 -東日本旅客鉄道株式会社(PDF)

この図の赤い矢印が該当の動線のようで、どうやら今と基本的には変わってなくて、銀座線の入出庫の線路の下をくぐり、階段を登って3階の乗り換えコンコースに至るようだ。

ただ3階のコンコースやアプローチの階段は今よりかなり広くなってるみたいだし、通路や階段の向きも調整されてそうな印象がある。もっと詳しい図もあった*1

渋谷駅周辺のネットワーク図(提供:東京急行電鉄株式会社)

アーバン・コアでつなぐ、「人の動き」と「街の多様性」【前編】 | Insights | NIKKEN SEKKEI LTD

この図で個人的にグッと来るのは、マークシティの3階から神戸屋キッチンや銀座線乗車ホームにつながっていた通路。正面の西館がなくなると行き場がなるなるので、右に折れて階段を登って銀座線の入出庫線の上に出て、銀座線渋谷駅のM字型アーチの上にできるスカイデッキと直結してそのままヒカリエ4階に行ける。

これだけだと嬉しいのかどうかわからないけれど、さらに銀座線の上をそのまま歩いて、宮益坂の上まで出れるという。つまり、道玄坂の上にあるマークシティの入口から入って、渋谷の谷を降りないでそのまま宮益坂の上に到達できるらしい。

これってほんとにすごい話じゃないかと思うんですよ。渋谷の地形を考えたときに、谷に降りないで坂の両端を行き来できるって!

【完全保存版】地下の魔窟「渋谷駅」を完全攻略〜最短乗換ルートつき〜

渋谷駅は谷地をさらに掘っているので、地下5階にある東横線・副都心線のホームから地上3階の銀座線まで、今すでに8層構造になってるらしい。その上さらにスカイデッキができるので、合わせて9層になる。

そうなると縦の移動も複雑化しそうだけれど、改札外はすべてアーバンコアに集約することで、動線を三次元的なマトリックスに整理しようということが計画されている。

「アーバンコアって、何だ?」 渋谷の「谷地形」を克服する仕掛け

実際、スクランブルスクエアのアーバンコアができたときにめっちゃ便利っておもったけど、あれがあちこちにできるらしい。

渋谷の分断を解消するカギ、「アーバン・コア」とはなにか

西館から連絡通路は迂回できても銀座線の入出庫線は動かせない

渋谷駅の今後の工事の「やりくり」で気になるのは、やはり西館をいつどのように壊していくかということ。ただ壊せばよいというわけではなくて、マークシティにある銀座線の車庫に車両が出入りするための入出庫線は残しておかなくてはいけない。

銀座線渋谷駅の奥はこうなっていた!! 360°動画で疑似体験! | 銀座線リニューアル情報サイト

この動画でいう冒頭8秒くらいまでが西館の中にある入出庫線なんですけど、この線路を同じ高さでそのまま残しながら、周りの建物は全部壊すということになるので、これはけっこうたいへんな工事じゃないかとおもうのだ。

新しい銀座線渋谷駅側でも東横店東館を壊したあと橋脚を建て替えていたけれど、似たようなことを今度は西館跡地でやることになる。西館を壊しながら入出庫線を同じ高さで支える橋脚を立てなければならない。

ケンプラッツの記事に西館の跡地には2本の橋脚が立つということで図面が掲載されているのだけど、これを見ると地下にフードショーがあるあたりにも橋脚が立つように見える。しかし、フードショーは4月以降も営業を続けるはずで、このあたりもどう「やりくり」されるのだろうか?

それにしても、この記事が2013年で、このとき「動かす」って書いてあることが、7年後にようやく「動いた」わけで、次に山手線まですべて完了するのがまた7年後というのも意外と遠くないのかもしれない。いや、遠いな。

東横のれん街の移動とフードショーの拡張

東急東横店、86年の歴史に幕 来年3月で営業終了、東急フードショー・東横のれん街は継続へ - シブヤ経済新聞

フードショーの話をもう少しすると、西館・南館が営業を終了しても地下の食料品街は4月以降も営業を続けるということは、2919年の夏の段階で発表されていた。

渋谷ヒカリエに「東横のれん街」移転へ 地下フードフロア再編 - シブヤ経済新聞

一方で先日、東横のれん街が4月16日ヒカリエに移転するということが発表されて、その中でさりげなくこんなことが書かれている。

「東横店 東急フードショー」(地下1階)は4月1日以降、「渋谷 東急フードショー」に名称を変え、現「東横のれん街」跡に7月、拡大オープンする予定。

ということは、玉突き的な移動でもって、閉鎖される西館からフードショーがマークシティに移り、マークシティーから「東横のれん街」がヒカリエに移って西館の地下は橋脚の土台になってしまうのか? それとも「拡大」とあるようにいまのフードショーも残ってひとつながりの大きな食料品外になるのか。

西館の解体はオリンピック後という記事もあったし、夏になればわかるのだろう。

ところで「東横のれん街」がヒカリエ側に移動すると遠くなって不便という声も聞くんだけど、そもそも「東横」を冠した食品街なのだから、井の頭線の地下にあるよりは東横線(副都心線)の改札を出てすぐの方が名称としては合ってそうだ。


デパートを南に駅を西に移動して五島慶太の呪縛がいま解ける

銀座線の駅が東に移動した話に戻ると、ここで合わせて考えたいのが、11月にオープンしたスクランブルスクエア東棟も旧東急デパート東館から見ると南に移動しているということ。

渋谷スクランブルスクエア、開業4日間で33万人 渋谷スカイも好調 - シブヤ経済新聞

これまで一体だった銀座線渋谷駅と東横デパートが、こうやって分離されることになる。この分離こそが、長きにわたる渋谷駅の工事の要だったのではないだろうか。

そもそも銀座線が東急デパートのど真ん中に駅を構えたのは強盗、もとい五島慶太が地下鉄もデパートも強行的に手に入れて合体させて1938年12月に開業したということだから、まる81年その場所にあり続けたことになる。駅とデパートと連絡通路を密結合することは、当初はとてもよいアイデアだったはず。

しかし、このモノリシックな構造物は、けっこうメンテナンスが難しかったのではないだろうか? それは、いつまでもずっと狭かった銀座線のあのホームにも現れているし、デパートの構造を変えなければ駅の完全なバリヤフリー化も難しかったかもしれない。逆にデパートが老朽化してきたからといって、おいそれと建て替えるわけにもいかない。

まず東横線を地下化しつつ暗渠化されてる渋谷川の流れを変えて敷地を確保し、デパートの代わりとなる商業ビルを建設する。あわせて駅も表参道側に移動して、デパートから追い出してしまう。

そして、残ったデパートをさあ壊すぞ←イマココ

だからJRも含めて駅ごとぜんぶ再開発するぞという機会じゃないととても取りかかれなかったし、これでようやく80年越しの構造的な負債が解消されるのだろうかとおもうと、あの不便な連絡通路を歩くときにも感慨深くなろうというものです。

まあ不便ですが。

あれから20年…渋谷駅周辺再開発ストーリー「渋谷がオトナになる日」 - シブヤ経済新聞

渋谷駅周辺の20年にわたる再開発ストーリーはすごいし、まだ7年続くとおもうと驚きますね。それでは、JR埼京線のホームが移転したきとにまたお会いしましょう!

*1:この図はこの記事でしか見かけてないのだけれど、出典はどこなのだろう? 記事の掲載は2019年の春ごろのようだ