昨年末、講談社のサイトに「なぜ中国人留学生は、日本人から『中国の歴史』を学ぶのか」という記事が掲載されていた。
2004年から2005年にかけて講談社から全12巻で刊行された「中国の歴史」シリーズが文庫化されるにあたって宣伝を兼ねた記事のようだったけど、なかでこういった発言が目を引いた。
日本人にとって中国の歴史というのは基本的に王朝の交替史で、その間に農民一揆とか反乱が起きてという、単純なタテ軸だけで認識されてきたわけです。
しかし、このシリーズは王朝交替史を否定してはいないけれども、その王朝と王朝の間にある、あるいは王朝の外にある多様な要素を取り込みながら、それぞれの新しい時代像を描きだしている。
さらにこうも書かれている。
日本にとって中国史というのは、「外国の歴史」ではないんですね。
日本、中国、朝鮮などを含んだ大きな地域の歴史として語られるべきだからです。
これはまさに自分が読むべき中国の歴史書じゃないかとおもった。
このブログはこのところ半分くらいが「美術展を見に行きました」の記録になっている。そのなかでも日本の近世以前の作品を鑑賞していると、その文化的な源流がやはり中国にあるということがわかってくる。そうなるとやはり中国文化の歴史を知っておかないといけないのではないか。
美術展に通っていて面白いのは、たまたま目にした作品から今まで興味がなかった文化への扉が開くようなときで、中国の書画については石川九楊『書家101』を読んだときにも、中国の書家は熾烈な競争を強いられる官僚だということを知って作品の見方が変わったりした。
そして、いま日本で広くベースとなっている茶の湯や禅を基本とした文化は、そのルーツを宋の士大夫の文化とするらしい。となるとまず読むべきは、全12巻あるなかでも第7巻ということになるだろう。タイトルも「思想と宗教」とまさに王朝交代史だけではないことをうかがわせる。
『中国の歴史7 中国思想と宗教の奔流 宋朝』講談社学術文庫|講談社BOOK倶楽部
第7巻は全10章で各5節からなり、本文の記述によると易に用いられる筮竹にちなんだ章立てになっているらしい。第1章が唐末から五代を経て宋の建国まで、以降第3章までが北宋、4章が南宋といわゆる王朝史が書かれる。5章からが思想や文化の話となって、読みたかった書画骨董の話は第8章に含まれる。9章が生活、そして10章でまた王朝史に戻り、モンゴルが侵攻してくる。
- 作者:小島 毅
- 発売日: 2005/07/21
- メディア: 単行本
日本よりも厳しい競争環境に身を置く宋の士大夫、つまり近世中国の官僚たちのリアルな姿をうかがえたことで、作品への向かい方も変わってきそうだった。
中国の歴史7 中国思想と宗教の奔流 宋朝 (講談社学術文庫)
- 作者:小島 毅
- 発売日: 2021/01/12
- メディア: 文庫