美術展には、とにかく名作名品を見るための展示と、様式や時代背景について広く学ぶような総合展的なものがある。これは後者。礼和になってはじめて訪れたのは、六本木の国立新美術館ではじまったばかりの「ウィーン・モダン」展。雨が降っていたこともあってか、ゴールデンウィーク中にしては集客もぼちぼちでゆったりと見られた。
クリムトとシーレの名前が副題についていて、チラシにも載ってるグスタフ・クリムト《エミーリエ・フレーゲの肖像》(下記写真)やエゴン・シーレ《自画像》が見どころではあるけれど、全体としてはどちらの作家も出ている作品には素描などが多く、油絵作品はともに数点というところ。
ウィーン・ミュージアムの改修工事を機に、18世紀末から20世紀初頭までの芸術・デザイン・グラフィック・インテリア・建築・服飾・音楽などさまざまなジャンルの品々が来日していて、1世紀にわたるウィーンという都市における文化の変遷を見ることができる。
クリムトやシーレを見るつもり満々で行くと肩すかしかもしれないけど、出ていたなかではシーレの《ひまわり》がよかった。解説ではゴッホに言及されていたけれど、日本画のような縦長のキャンパスに描かれていたこともあって、たまたま最近の「北斎展」で見た肉筆画の《向日葵図》を思い起こさせた。
クリムトやウィーン分離派の絵画については都立美術館で「クリムト展」をやっていて、それを補完する展覧会といえるかもしれない。公式の出品目録を見ておくと雰囲気がわかったりわからなかったりするかも。
出品目録(PDF)
それにしても、十二音技法で知られる作曲家シェーンベルクの肖像画ならまだしもシェーンベルク自身が描いた油彩画が何点も出ていたのはどうなんだろう。一方で、ウィーン工房の作品としてグラフィックやポストカードがたくさん展示されていて、時間もあまりなくしっかり見れなかったんだけど、あとで展示リストを見ていたらエゴン・シーレがデザインのポストカードがあり、ちゃんと見ていなくて残念。
展示リストの番号が妙に飛び飛びになっていたのだけど、カタログをみると連番で作品が掲載されていて、どうも8月から国立国際美術館で開催される大阪展では、主要作品を除いて大幅に展示替えされるようだ。クリムトの初期作品で寓意画のための原画もいくつか東京展には出ていなかったらしい。それは見たかったなあ。
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