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表参道で働くシニアのブログ

平成の最後に千葉でたくさんの浮世絵とドラッカーの水墨画

ブログに書く順が前後したが、千葉市美術館の「メアリー・エインズワース浮世絵コレクション」を平成の最後に見てきた。

オーバリン大学 アレン・メモリアル美術館所蔵 メアリー・エインズワース浮世絵コレクション -初期浮世絵から北斎・広重まで

米国のメアリー・エインズワースさんが明治末から収集し母校に寄贈した1,500点の浮世絵から、選りすぐった200点が来日。展示替えもなく一気にズラッと並んでいて嬉しいが、全部を見て回るのはけっこうたいへん。

副題を「初期浮世絵から北斎・広重まで」というように、前半がほぼ18世紀後半の美人画や役者絵で、それこそ菱川師宣から鈴木春信・鳥居清長・勝川春草・喜多川歌麿などが100枚強。写楽も1枚あった。

後半になるとほぼすべて葛飾北斎・歌川国芳・歌川広重による19世紀前半の風景画であり、富嶽三十六景・諸国名橋奇覧・詩哥写真鏡・東海道五拾三次・近江八景・名所江戸百景などが(揃いではないが)ずらりと並んでいる。とくに2フロアある千葉市美術館の下の階(常設展示を除く)すべてを広重が占拠しているのは圧巻だった。

とはいえ北斎は大規模な展示があったばかりだし、国芳・広重も展示される機会が少ない作家ではないこともあり、個人的には浮世絵の初期作品をまとめて見ることができたことが面白く、この文化がどのように始まり、広まっていったのかをもっと知りたいという気持ちになった。

辻惟雄さんが10年前に出した新書を最近読んだのだが、菱川師宣には岩佐又兵衛の影響があるようで、一方で北斎などの風景画の前史としては西洋絵画の遠近法を取り入れた眼鏡絵・浮絵があり、歴史は複雑につながっているのだなとおもった。

浮世絵をつくった男の謎 岩佐又兵衛 (文春新書)

浮世絵をつくった男の謎 岩佐又兵衛 (文春新書)

そして同じ順路で常設展示の「ピーター・ドラッカー・コレクション水墨画名品展」も。
千葉市美術館所蔵作品展 受託記念 ピーター・ドラッカー・コレクション水墨画名品展

これは高校野球の女子マネージャーが読むと仮定されることで知られる「マネジメントの父」ことドラッガーさんがかなりの親日家で、日本絵画の200点近いコレクションを有していたものをある日本の企業(どこ?)が取得し、かつて「ドラッカー・コレクション珠玉の水墨画」展を開催したこともある千葉市美術館に寄託した中から展示されている。

ちなみに2015年の展示はこんなかんじだったそうだ。

ドラッカー・コレクション 珠玉の水墨画 | 取材レポート | インターネットミュージアム

かなり独自の感性で室町時代の山水図を中心にコレクションされていて、寡聞にして知らない作家ばかりだと思っていたら花鳥図になって雪村周継《叭々鳥図》がかなりよいなあとおもっていたら、いきなりの白隠慧鶴《達磨図》から仙厓さん連続。

実は前日に府中のへそまがり展の後期展示を見てきたばかりで、ほとんどが展示替えになっていた仙厓を堪能してきたところだったので、浮世絵を見に来たと思ったら、いつの間にか禅画を見せられていた。何を言っているのかわからねーと(略

話は変わるけれど、へそまがり展は前後期を通してやはり寒山拾得と布袋と達磨の充実がすごく、風外本高のアバンギャルドさもかなりのもので、禅画だけの展示であるとか、寒山拾得だけの展示とかも見たいものだとおもった。

話は戻って、ドラッカーコレクションには又兵衛・若冲・蕭白・蘆雪といった奇想系や、池大雅・与謝蕪村・谷文晁など文人画も出ていて、異様に見どころのある充実した展示でよかった。千葉市美術館は同居していた役場が移転して展示フロアも拡張されるそうで、こういった所蔵作品もよく展示されるのだろうか。

千葉市、中央区役所を複合施設に移転(潜望展望):日本経済新聞

マネジメント[エッセンシャル版] - 基本と原則

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