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表参道で働くシニアのブログ

アニメ「時をかける少女」と東京国立博物館によるバーチャル展「アノニマス ―逸名の名画―」の展示作品をまとめてみた

アニメーション映画「時をかける少女」と東京国立博物館(トーハク)によるコラボレーション企画、バーチャル特別展「アノニマス ―逸名の名画―」が2021年2月末まで開催されています。

バーチャル特別展「アノニマス - 逸名の名画 -」

さっそくチケットを買ってバーチャルSNSにログインしてみると、仮想空間に建てられた東京国立博物館の本館前に立っていて、正面玄関をくぐって階段を登った中二階の展示室が会場。

「時をかける少女」のストーリーで重要な意味を持つ美術作品「白梅二椿菊図」(実存しない、映画内のみ登場)や、国宝「孔雀明王像」「玄奘三蔵像」(以上、東京国立博物館蔵)など、作者が不明とされながらも、名品として脈々と受け継がれてきた作品を集めました。

東京国立博物館 - 時をかける少女 バーチャル特別展「アノニマス-逸名の名画-」

集められたのは平安から江戸時代までの名作に、実存しない映画上の名品をあわせた計18作品。中二階の扉の向こうに展示室は実存しないんじゃないか(たぶん特別室の上の回廊に出るのでは?)とおもうんだけど、国宝が5点に重要文化財が7点と出展作は豪華だし逸名(作者が不明)というコンセプトもしっかりしていて、リアルに面白そう。

何より出展作がいちいち気が利いていて、平安・鎌倉・室町・江戸と時代も分散され、舟木本洛中洛外図や佐竹本三十六歌仙絵といった有名作品が出ていたり、近世日本絵画のパッケージ展示として興味深い。

東京国立博物館が「バーチャルトーハク」を開設。特別展「アノニマス ―逸名の名画―」で『時をかける少女』の展覧会を再現|美術手帖

バーチャルトーハク内では画面サイズや操作性の限界もあって作品の解説もじっくりと読みづらかったので、展示のパンフレットみたいに作品をまとめてみました。リアルに展示で見たことがある作品には自分のコメントもちょっと載せてます。どうぞお楽しみください。

※作品番号や解説はSNS内の掲示に準拠しています(公式サイトの特別展の紹介にはこのリストで★を付けた作品がなく、番号も一部ずれている)が、並びは少しアレンジしました。解説のテキストが名品ギャラリーColBase(国立博物館所蔵品統合検索システム)と同一の作品はサイトからの引用としています。画像はほぼColBaseのものです。

No. 1 国宝 孔雀明王像

毒龍、害虫を食べる孔雀を神格化した四臂(しひ)の明王だが、忿怒相ではなく菩薩相をとり孔雀に乗る。華麗な彩色と繊細な截金文様が見られ、着衣には照隈(てりくま)が施される。祈雨や攘災のために修する孔雀経法(東密の秘法)の本尊。四隅の宝瓶と真正面向きの明王と孔雀を画面一杯に描き、空海が唐から請来した原本に基づく古様な曼荼羅的構成を伝える。

東京国立博物館 - コレクション 名品ギャラリー 館蔵品一覧 孔雀明王像

孔雀明王像(くじゃくみょうおうぞう) - ColBase

戦前には横浜の「三溪園」で知られる実業家の原三渓が所有しており、横浜美術館の原三渓展に出ていたのを見ましたが、色あせているところをじっと見ているとさまざまな色彩が浮かび上がってきて、制作当初はさぞやきらびやかだったろうことがうかがえた。

員数 1幅
材質・形状 絹本着色
寸法 縦147.9 × 横98.9 cm
時代・年代 平安時代・12世紀
列品番号 A11529

e国宝 - 孔雀明王像
国宝|孔雀明王像[東京国立博物館]平安時代-1951年国宝指定 | WANDER 国宝

No. 2 国宝 普賢菩薩像

『法華経』普賢勧発品に説く、法華経信者を守るために出現した六牙の白象に乗る普賢菩薩の独尊像。繊細な隈を施した菩薩の肉身を異例の細墨線でくくり、着衣・荘厳具などには金箔や銀泥を用いる。天台宗の法華三昧堂で毎月修された普賢講の本尊として制作されたか、あるいは女人成仏を願った平安時代後期の女性貴族の念持仏と考えられよう。

東京国立博物館 - コレクション 名品ギャラリー 館蔵品一覧 普賢菩薩像(ふげんぼさつぞう)

白象に乗った普賢菩薩は、平安時代中期以降に女性の信仰をとくに集めたとのことで、数年前の特別展「名作誕生 つながる日本美術」でも特集されてました。

特別展「名作誕生─つながる日本美術」 | インターネットミュージアム
名作誕生展 前期のみどころ! - 東京国立博物館 1089ブログ

員数 1幅
材質・形状 絹本着色
寸法 縦159.1 × 横74.5 cm
時代・年代 平安時代・12世紀
列品番号 A1

e国宝 - 普賢菩薩像
国宝|普賢菩薩像[東京国立博物館] | WANDER 国宝

No. 3 重文 仏涅槃図

沙羅双樹のそばの宝台上で、両手を体側につけて右脇を下にして体をまっすぐ伸ばした釈迦の入滅の情景を描く。中央に大きく描かれた釈迦の線描は柔らかで流麗であるのに対し、周囲で悲嘆する会衆は肥痩のある線で描かれ、動物の数も増え、鎌倉時代の図像に近づいている。涅槃図は、旧暦2月15日の涅槃会の本尊として数多く描かれた。

東京国立博物館 - コレクション 名品ギャラリー 絵画 仏涅槃図

涅槃図は数多く作られていますが、平安時代のものは、横長の画面に釈迦をクロースアップして描くのが特徴です。その場面に立ち会っているような臨場感があります。

仏涅槃図(ぶつねはんず)
員数 1幅
材質・形状 絹本着色
寸法 縦155.1 × 横202.8 cm
時代・年代 平安時代・12世紀
列品番号 A10599

e国宝 - 仏涅槃図

No. 4 国宝 扇面法華経冊子

扇型の紙面に装飾を施し、その上に法華経を書写して中央で綴じた冊子本。大阪・四天王寺に伝来した10帖のうちの1帖。料紙は墨流しや金銀の各種の箔片をまいた装飾により善美が尽されている。絵は貴族や庶民の風俗など世俗的な題材が描かれる。平安時代の貴族趣味を反映して盛行した装飾経の代表作。

東京国立博物館 - コレクション 名品ギャラリー 館蔵品一覧 扇面法華経冊子

平安時代、貴族たちの間で、美しい装飾を施した料紙に法華経を書写し、さまざまに趣向を凝らしたいわゆる「装飾経」が盛んにつくられました。この冊子もその一つです。

扇面法華経冊子(せんめんほけきょうさっし) - ColBase
員数 1帖
材質・形状 紙本着色
寸法 縦25.5 × 上弦26.2 cm
時代・年代 平安時代・12世紀
列品番号 A7

e国宝 - 扇面法華経冊子
国宝|扇面法華経冊子[東京国立博物館] | WANDER 国宝
扇面法華経冊子 - Wikipedia

No. 6 国宝 餓鬼草紙 ★

すべての生き物は6つの冥界を輪廻するという六道思想を反映した六道絵の一つ。餓鬼道に堕ちた餓鬼たちのおぞましい姿が赤裸々に描出される。詞書を失うが、『正法念処経』餓鬼品に説くところを描いたものと思われる。人間界に出没する憐れな姿や灼熱・飢餓に苦しむ様を、闊達な描線で生き生きととらえている。

東京国立博物館 - コレクション 名品ギャラリー 館蔵品一覧 餓鬼草紙(がきぞうし)

平安時代末の浄土信仰を背景に制作されたこの絵巻には、不気味な餓鬼達の様子が細かく描写されています。

餓鬼草紙 - ColBase
員数 1巻
材質・形状 紙本着色
寸法 縦26.9 × 横380.2 cm
時代・年代 平安時代・12世紀
列品番号 A10476

暑い夏にぞくっと楽しむ 国宝「餓鬼草紙」鑑賞入門 - 東京国立博物館 1089ブログ

※《餓鬼草紙》の制作年代はSNS内の解説では「鎌倉時代・13世紀」ですが、サイトでは上記のように平安時代とあります。ここではサイトに従い、作品番号順を入れ替えて紹介します。

No. 5 重文 華厳五十五所絵巻断簡 文殊

『華厳経』の「入法界品」に説かれる、善財童子の求法の旅(のべ55人の聖者を訪ねる)を描いた絵巻。もとは1巻の巻物であったが切断され、現在東大寺に37段分、藤田美術館に10段分、当館に2段分、その他計54段分が現存する。軽快な描線と上品な彩色が特徴で、清澄な画風はひたむきな童子の旅を主題とした内容ともよく調和している。各図の賛は、宋の楊傑の『華厳経入法界品賛』による。

東京国立博物館 - コレクション 名品ギャラリー 館蔵品一覧 華厳五十五所絵巻断簡(文殊)

華厳五十五所絵巻(文殊菩薩) - ColBase
員数 1幅
材質・形状 紙本着色
寸法 縦28.5 × 横25.6 cm
時代・年代 鎌倉時代・13世紀
列品番号 A10494

同じ絵巻の「普賢菩薩」の断簡もトーハクに所蔵されています。

華厳五十五所絵巻断簡(普賢菩薩) - ColBase

No. 7 重文 佐竹本三十六歌仙絵 住吉明神

『三十六人撰』にもとづく三十六歌仙を一歌仙一図の絵姿に描き、それぞれの略伝と詠歌を添えた上下2巻の巻物であった。和歌神・住吉明神の社頭を描いた一図がもと下巻巻頭にあったところから、上巻冒頭には玉津島神社社頭の図があったとみなす説がある。佐竹家から出たのち、切断分割された。ほとんどの歌仙は背景を一切描かず、顔の表現に力が注がれ、似絵の流行を反映している。

東京国立博物館 - コレクション 名品ギャラリー 館蔵品一覧 佐竹本三十六歌仙絵 住吉明神

佐竹本中唯一人物ではなく景観を描く。海岸線を強調した社域に社殿や鳥居、樹木、舟、橋などが描かれる。今日とは異なる住吉大社の様相であるが、視点をかなり高くとった鳥瞰的な景観描写は、佐竹本そのものの制作年代や作画の場を知る手がかりとなる。

佐竹本三十六歌仙絵 住吉大明神 - ColBase

もとは清和源氏の流れを汲む大名の佐竹家に伝来した巻物で、維新後に実業家の手に渡り、第一次世界大戦後の不況に伴う売立てで、料紙ごとに分割された。住吉明神はその後に「電力の鬼」こと松永安左エ門の所蔵からトーハクに寄贈された。詳細はトーハクのブログなどを参照。

断簡―掛軸になった絵巻―(2)「断簡」に秘められたドラマ - 東京国立博物館 1089ブログ
佐竹本三十六歌仙絵巻 - Wikipedia

断簡37点のうち31点が揃った京都国立博物館の展示が2019年にあったけど、無理しても見ておくべきだったかもと今になっておもう。

特別展 流転100年 佐竹本三十六歌仙絵と王朝の美 | 京都国立博物館 | Kyoto National Museum

員数 1幅
材質・形状 紙本着色
寸法 縦35.4 × 横96.3 cm
時代・年代 鎌倉時代・13世紀
列品番号 A10570

No. 8 重文 玄奘三蔵像

唐時代の僧侶、玄奘三蔵(?~664)は、インドに渡り膨大な経典類を中国にもたらした。大きな笈(おい)に多数の経巻をつめて背負い、髑髏の首飾りをつけて、経文を唱えながら歩む姿が、大般若会(だいはんにゃえ)の本尊・釈迦三尊十六善神像にも描かれるが、単独像は珍しい。

玄奘三蔵像 - ColBase

立体感を引き出す顔の陰影表現からは、日本に大量にもたらされた中国浙江省・寧波(ニンポー)で描かれた仏画表現の影響がうかがえます。

員数 1幅
材質・形状 絹本着色
寸法 縦135.1 × 横59.9 cm
時代・年代 鎌倉時代・14世紀
列品番号 A10600

e国宝 - 玄奘三蔵像

No. 9 阿弥陀聖衆来迎図

来迎とは、臨終の時に阿弥陀仏が極楽浄土に往生させるために迎えにくることである。阿弥陀聖衆来迎図は阿弥陀如来が多くの菩薩をともなって、極楽浄土から雲に乗って臨終の者のところに現れるようすを描いたもの。まさに命の終わろうとする時に、心の不安と動揺を絶ち、安らかに死を迎えさせるためのものである。

この作品はトーハク内に解説が見当たらず、上記の解説はSNSから書き起こしました。図版は公式のツイートを貼り付けておきます。

員数 2幅
材質・形状 絹本着色
寸法 縦129.3 × 横158.4 cm
時代・年代 鎌倉時代・14世紀
列品番号 A11974

C0054757 阿弥陀聖衆来迎図 - 東京国立博物館 画像検索

員数が2幅なのは《諸尊集会図》と対幅のためらしいです。

C0054753 諸尊集会図 - 東京国立博物館 画像検索
諸尊集会図 - ColBase

No. 10 摩尼宝珠曼荼羅図

摩尼宝珠は龍王の脳から出たとされる玉で、あらゆる願いをかなえるといい、密教で篤く信仰された。2層の楼閣の中にある緑色の3つの玉がそれである。その下方の2匹の龍王、頭上に9面を表わす難陀(なんだ、右)、7面を表わす跋難陀(ばつなんだ、左)がこれを護持する。

摩尼宝珠曼荼羅図(まにほうじゅまんだらず) - ColBase
員数 1幅
材質・形状 絹本着色
寸法 縦79.9 × 横48.0 cm
時代・年代 鎌倉時代・14世紀
列品番号 A111

いろいろな龍に会えます(特集陳列「天翔ける龍」4) - 東京国立博物館 1089ブログ

No. 11 重文 土蜘蛛草紙

平安時代中期の武将・源頼光とその郎等・渡辺綱が京都洛北に住まう土蜘蛛を退治する物語。あばら家を舞台に次々に登場する妖怪たちはどれも個性豊か。画中の襖絵などもしっかりと描かれており、本格的なやまと絵絵師によって制作されたことがうかがわれる。

土蜘蛛草紙 つちぐもぞうし - ColBase

物語の詳細はウィキペディアなどを参照。

土蜘蛛草紙 - Wikipedia

員数 1巻
材質・形状 紙本着色
寸法 縦29.2 × 横975.7 cm
時代・年代 鎌倉時代・14世紀
列品番号 A18

e国宝 - 土蜘蛛草紙絵巻

No. 13 竹生島祭礼図

弁才天信仰の盛んな琵琶湖の竹生島に鎮座する都久布須麻神社(つくぶすま)。その神宮寺(じんぐうじ)で行なわれる蓮華会(れんげえ)の様子を描いた祭礼図。舞楽や船上のにぎわいなど、祭の熱気が伝わってくるようである。風俗描写もまことに丁寧で、画面右上には桜の花も咲きほこっている。

竹生島祭礼図(ちくぶしまさいれいず) - ColBase
員数 1幅
材質・形状 紙本着色
寸法 縦81.8 × 横89.1 cm
時代・年代 室町時代・16世紀
列品番号 A44

No. 14 重文 浜松図屏風

金の切箔を敷き詰めた輝く洲浜では、向って右から左へと四季が移ろい、その間を鳥たちが生き生きと飛び交い、さえずっている。遠方の浜辺では、漁や狩をする人々が遠望され、随所にたなびく金雲が、本作品の詩的な情趣を高めている。

浜松図屏風(はままつずびょうぶ) - ColBase
員数 6曲1双
材質・形状 紙本着色
寸法 各 縦106.0 × 横312.0 cm
時代・年代 室町時代・16世紀
列品番号 A11553

東京国立博物館 - コレクション 名品ギャラリー 館蔵品一覧 浜松図屏風(はままつずびょうぶ)
e国宝 - 浜松図屏風
”メジャーリーグ”昇格への長い道のり -特集「室町時代のやまと絵」のみどころ- - 東京国立博物館 1089ブログ

No. 15 源氏物語図屏風(隠岐配流図屏風)★

この展覧会では唯一この作品のみが貸し出しで、米国テキサス州フォートワースにあるキンベル美術館(Kimbell Art Museum)の所蔵。

源氏絵は絵巻や色紙などの媒体で古くより親しまれ、室町~江戸時代には屏風形式の作品が数多く制作された。光茂が享禄4年(1531)に制作した「当麻寺縁起絵巻」(当麻寺蔵)と類似するモティーフが認められる。すなわち、本図は源氏絵屏風のなかでも初期の作品の姿を今に伝える重要な遺例と考えられるのである。「隠岐配流図屏風」は映画公開時の名称である。

源氏物語の第12帖「須磨」を描いた屏風だが、映画が公開された2006年には「隠岐配流図」と呼ばれていたようで、後鳥羽上皇もしくは後醍醐天皇の流刑を題材にした作品と考えられていたのだろうか。詳細がよくわからないので詳しい方がいたら教えてもらえると助かります。

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上記の解説は、ほぼ「大画面形式の源氏物語図屏風の成立に関する一考察[PDF]という論文に準拠しているようだ。画像はSNSのスクリーンショットより。

員数 6曲1隻
材質・形状 紙本着色
寸法 縦148 × 横348 cm
時代・年代 室町時代・16世紀

Genji in Exile at Suma | Kimbell Art Museum

No. 16 重文 聖母像(親指のマリア)

江戸幕府のキリシタン禁制令の下、最後の潜入伴天連として1708年に屋久島に上陸したイタリア人宣教師の所持品と推定されている。ドルチの原作を忠実に模して描かれた聖母像は、布教のために危険を承知で単身日本に渡った情熱的な宣教師の、日ごとの祈りの対象だったわけである。

この解説はもとになるテキストが見つからなかったので、SNS内からそのまま書き写した。ここでは下にもリンクを貼ったようなカルロ・ドルチの聖母像を「原作」としているが、ほかの解説では「よく似ている」など含みをもたせた表現になってる。

この聖母像は、キリスト教禁制下に来日したイタリア人宣教師シドッチが携えていたものです。(...) 長崎奉行所に没収され、そのまま長い間日の目を見なかったことで、ここまでの状態で残っていたのでしょう。

聖母像(親指のマリア) - ColBase

こういう日本絵画ではない作品が入っているのもよいですね。

員数 1面
材質・形状 銅板油彩
寸法 縦24.5 × 横19.4 cm
時代・年代 17世紀後期
列品番号 C698

東京国立博物館 - 展示 日本美術(本館) 親指のマリアとキリシタン遺品
特集「親指のマリアとキリシタン遺品」 - 東京国立博物館 1089ブログ

国立西洋美術館が所蔵しているカルロ・ドルチの油彩画《悲しみの聖母》はこちら。

カルロ・ドルチ | 悲しみの聖母 | 収蔵作品 | 国立西洋美術館

No. 17 国宝 洛中洛外図屏風 舟木本

京都の市中と郊外を描く洛中洛外図の一つ。右端に豊臣氏の象徴である方広寺大仏殿、左端には徳川氏の二条城を置いて対峙させる。鴨川の流れが左右の2隻を連繋し、密集する京の町が四方に広がる。各層各種の人物が生き生きと活写され、その数は2500人に及ぶ。もと滋賀の舟木家に伝来し、舟木本の名で親しまれている。

東京国立博物館 - コレクション 名品ギャラリー 館蔵品一覧 洛中洛外図屏風(舟木本)

右側の屏風の中央やや左手にかかる大きな橋を見てみましょう。これは五条大橋。お花見の帰りなのか、浮かれ騒いでいる集団が橋を渡っています。先頭では、扇や桜の枝を持った人たちが踊りくるっています。最後尾には両脇を抱えられ、酔いつぶれた男。この大騒ぎに驚いて、橋の下からは船頭さんが見上げています。遊んでいる子どもたちがいたり、喧嘩をしている人たちがいたり、一人ひとりの顔の表情に注目してみると、屏風の世界に引き込まれてしまいます。

さらに、 三十三間堂、清水寺、八坂神社、祇園祭など、今も訪ねることのできる京都の名所や行事を探してみる楽しみ方もあります。作者の岩佐又兵衛(いわさまたべえ)は安土桃山時代から江戸初期にかけて京都、福井、江戸で活躍した画家で、生き生きとした人物描写を得意としました。

洛中洛外図屏風(舟木本) - ColBase

何点か残されている室町から江戸初期の洛中洛外図屏風のうち、織田信長から上杉謙信に贈られたという狩野永徳筆によるいわゆる「上杉本」と並ぶ名品で、ともに国宝に指定されている。先日の「桃山」展に出ていて、見ればすぐわかる又兵衛らしさあふれる人物描写がたいへん魅力的な作品。

洛中洛外図 - Wikipedia

員数 6曲1双
材質・形状 紙本金地着色
寸法 各 縦162.7 × 横342.4 cm
時代・年代 江戸時代・17世紀
列品番号 A11168

e国宝 - 洛中洛外図屏風(舟木本)

ところで、作者が確定している作品が「アノニマス」展に出品されているのはおかしな話だけど、先ほどの《源氏物語屏風》と同様に映画公開後の事情がある。2006年当時には、岩佐又兵衛の権威でもある辻惟雄先生が「又兵衛に先行する前派によるもの」説に固執していたこともあって、逸名の作品とされていたようだ。

映画公開後の2008年刊行の著作『岩佐又兵衛 浮世絵をつくった男の謎(文春新書)で辻先生が考えを改めたあと、作者が確定されたとして作品は国宝になったプレスリリース[PDF]参照)。SNSの解説でも上記の名品ギャラリーの説明に次の1文が追加されている。

近年の研究の進展により、岩佐又兵衛の筆によるものと確定した。

新版 奇想の系譜

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  • 作者:惟雄, 辻
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No. 18 花車図屏風 ★

絢爛に金で装飾された花車5両それぞれに藤、牡丹、杜若(かきつばた)、紫陽花、菊など、四季の花々を載せている。花車図は江戸時代はじめ、大名家の間で人気のあったモティーフで、主に狩野派の絵師たちによって描かれた。

花車図屏風 - ColBase
員数 6曲1双
材質・形状 紙本金地着色
寸法 各 縦154.5 横364.2 cm
時代・年代 江戸時代・18世紀
列品番号 A1459

No. 12 白梅ニ椿菊図 ★

そして最後に肝心の《白梅ニ椿菊図(はくばいにつばききくず)》である。これだけはリアルの東京国立博物館のサイトに解説がないので、バーチャルトーハクの展示から書き起こしてみる。

天空から舞い降りた神の力に寄って、春秋の花々が咲きほこっている。仏画とも花鳥画ともとらえきれない絵画作品である。材質は、室町時代の日本絵画に用いられたものと判断されるが、同時代絵画の表現スタイルからは、一線を画した作品である。

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SNSのスクリーンショットより。近世の日本画にしては抽象的にすぎるようにおもうが、おそらくこれまでまったく知られていない絵師による抽象表現がすでに室町に試されていたのだが、先鋭すぎて当時はまったく評価されず数百年にわたって秘匿されていたものが近年になって見つかったということではないだろうか。できれば雑に出張鑑定でどこかの市民会館に出てきて、田中大さんが法外な値を付けてたりしてほしい。

一部の文字が読みづらかったのだけど、年代は15世紀とされていたとおもう。応仁の乱ということだろう。寸法は、近くにあった《摩尼宝珠曼荼羅図》より一回り小さいので縦70cmくらいだろうか。スクショを見直しておもったけど、日本の伝統絵画なのに表装ではなく額装されているのも、来歴の不思議さを表しているようだ。

員数 1面
材質・形状 絹本着色
寸法
時代・年代 室町時代・15世紀

作中世界の設定や関係者の発言をもとにしたちゃんと考察したブログがあって参考になります。

『時をかける少女』 ≪白梅ニ椿菊図≫について - noumos blog

ちなみにリアルなトーハク(東京国立博物館)では、丑年にちなんだ「博物館に初もうで」という展示を開催中。17日までは国宝《松林図屏風》も展示されています。年末の「桃山」展に出てたので、年始はないのかとおもっていたけれど今年もこれで年が始まりそうです。

東京国立博物館 - 催し物 イベント 博物館に初もうで