in between days

表参道で働くシニアのブログ

もしもビートルズのアルバムが『サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド〈デラックス・エディション〉』みたいにCD再発されていたら?

先週、こんな記事を書いた。

もしもビートルズのアルバムが『プリーズ・プリーズ・ミー +5』みたいな形でCD再発されていたら? - in between days

この記事では1966年の『リボルバー』まで7枚目のオリジナルアルバムについて、ほかのバンドでよくあるようなボーナストラック付きでCD再発されていたら? という設定で、アルバムと同時期に録音された音源をパストマスターズやアンソロジーから集めてみた。

ビートルズのいまの再発形態はスタンダード感があってよいんだけど、「このころのビートルズはどんなんだっけ?」ってのをまとめて聴くのがちょっと面倒っていうのもあるので、PCに取り込んだりした音源でプレイリスト作ってみると便利ではっていう趣旨でした。

そして今回はその続き。といっても1967年以降のビートルズはちょいとやっかいで、というのは、前年にライブ活動を止めてしまってスタジオの活動をメインにしてしまったので、とにかく未発表音源が多い。だからボーナストラックというより、各アルバムにボーナスディスクがついた「デラックス・エディション」になりそう。こんなかんじ。

My Generation

My Generation

もうひとつ、とにかくスタジオしかやることがないので、のべつまくなしに録音してる。そのためリリースが録音とズレてることがあって、どの時期にいれていいのか悩ましい曲がいくつかある。

1967年と1969年のビートルズの録音とリリースの問題

1966年末から1969年(正確には70年頭)にかけて、ビートルズは主に5回のレコーディングセッションをもっている。

  1. 1966年末から1967年頭:アルバム「サージェント・ペパーズ……」のセッション
  2. 1967年4月以降:映画「マジカル・ミステリー・ツアー」と映画「イエローサブマリン」のサウンドトラック、そしていくつかのシングルのためのセッション
  3. 1968年5月から:アルバム「ザ・ビートルズホワイトアルバム)」のセッション
  4. 1969年1月:いわゆる「ゲット・バック」セッション
  5. 1969年2月以降:アルバム「アビーロード」のセッション
  6. (1970年頭:アルバム「レット・イット・ビー」のための追加レコーディング)

1968年はホワイトアルバムで一貫しているので問題ないのだけど、67年と69年はそれぞれに面倒さがある

  1. 67年:サージェント・ペパーズ周りのシングルやサントラ収録曲の扱い
    • アルバムに先行するシングル「ストロベリー・フィールズ・フォーエバー/ペニー・レイン」が、次のアルバム「マジカル・ミステリー・ツアー」のB面に収録されている
    • イエローサブマリンのサウンドトラックには新曲が4曲しか収録されてないうえ、1967年のさまざまなセッションからつまみ食いするように収録されている
    • この2枚のサントラの現行の形式を優先するのかどうか?
  2. 69年:ゲット・バック・セッションとアルバム『レット・イット・ビー』の関係

このあたりをどう考えるかでいくつか違った「デラックス・エディション」ができるだろうけど、エイヤっと組んでみました。賛否ありそうだけど、まあ遊びということで。

Sgt. Pepper's Lonely Hearts Club Band +15

サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド(紙ジャケット仕様)

サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド(紙ジャケット仕様)

この名盤は、アルバムの雰囲気を崩さないよう1枚目は上記のオリジナルそのまま。

ディスク2として、次の全15曲入りのボーナスディスクを付けるのでどうだろう。

Magical Mystery Tour (US) より

  • 1. Strawberry Fields Forever [single, 1967]
  • 2. Penny Lane [single, 1967]

この2曲はアルバムに先行して録音・リリースされたシングルで、アルバムのセッションの一環でもあったようなので、ここにまとめてしまったほうがよさそう。じゃあ『マジカル……』がどうなってるかは、このあとで。

Yellow Submarine (soundtrack) より

  • 3. Only a Northern Song

イエローサブマリン』も思い切って分解しました。同じ時期の録音を集めるというコンセプトでやろうとすると、こうならざるをえない。

現在はこういうリミックス・アルバムも出てるし、自分でプレイリスト作って聴く分には、もとのサントラのフォーマットにこだわらなくてもよいかも。

Yellow Submarine Songtrack

Yellow Submarine Songtrack

Anthology 2より

4曲目以降はアンソロジーから未発表音源を12曲。

  • 4. Strawberry Fields Forever [demo sequence] [mono]
  • 5. Strawberry Fields Forever [take 1]
  • 6. Strawberry Fields Forever [take 7 & edit piece] [mono]
  • 7. Penny Lane [take 9 horn overdub]
  • 8. A Day in the Life [takes 1, 2, 6 & orchestra]
  • 9. Good Morning Good Morning [take 8]
  • 10. Only a Northern Song [takes 3 & 12]
  • 11. Being for the Benefit of Mr. Kite! [takes 1 & 2]
  • 12. Being for the Benefit of Mr. Kite! [take 7 & effects tape]
  • 13. Lucy in the Sky with Diamonds [takes 6, 7 & 8]
  • 14. Within You Without You [Harrison]
  • 15. Sgt. Pepper's Lonely Hearts Club Band (Reprise) [take 5] [mono]

アンソロジー 2

アンソロジー 2

以上が「サージェント・ペパーズ……」のボーナスディスクです。

Magical Mystery Tour +18

マジカル・ミステリー・ツアー(紙ジャケット仕様)

マジカル・ミステリー・ツアー(紙ジャケット仕様)

『マジカル・ミステリー・ツアー』も2枚組に。とはいえ、ボーナストラックが「+18」とは妙に多いなと感じる方もいるでしょう。

はい。これは英国オリジナル2枚組EPに収録された6曲をベースにして、全24曲。

Magical Mystery Tour EP (UK) より

  • 1. Magical Mystery Tour
  • 2. The Fool on the Hill
  • 3. Flying
  • 4. Blue Jay Way
  • 5. Your Mother Should Know
  • 6. I Am the Walrus [single b-side, 1967]

オリジナルのサウンドトラックとしてリリースされたのが、この6曲。現行CDの形態にもなっているUS盤アルバムのA面にあたる。

Magical Mystery Tour (US) より

  • 7. Hello, Goodbye [single a-side, 1967]
  • 8. Baby, You're a Rich Man [single b-side, 1967]
  • 9. All You Need Is Love [single a-side, 1967]

続いて、そのUS盤アルバムのB面に収録されていたシングル曲のうち、先の「サージェント……」に送った2曲を除いて。

Past Mastersより

  • 10. Lady Madonna [single a-side, 1968]
  • 11. The Inner Light [single b-side, 1968]
  • 12. Across the Universe [from the World Wildlife Fund charity album]

加えて同時期録音のシングル曲。「アクロス・ザ・ユニバース」は「レット・イット・ビー」ではなく、1969年のチャリティアルバムのバージョン。録音時期にあわせるとここになるみたい。この名曲が録音から2年寝かされてたってすごい。

で、ここでディスクを分割するとよさそうです。以降がディスク2。

Yellow Submarine (soundtrack) より

さっきも書いたように録音時期でまとめるため「イエローサブマリン」は消失、分割。

イエロー・サブマリン(紙ジャケット仕様)

イエロー・サブマリン(紙ジャケット仕様)

Anthology 2より

未発表音源は8曲。

  • 16. You Know My Name (Look Up the Number) [long]
  • 17. I Am the Walrus [take 16]
  • 18. The Fool on the Hill [demo] [mono]
  • 19. Your Mother Should Know [take 27]
  • 20. The Fool on the Hill [take 4]
  • 21. Hello, Goodbye [take 16 and overdubs]
  • 22. Lady Madonna [takes 3 & 4]
  • 23. Across the Universe [take 2]

再びPast Mastersより

  • 24. You Know My Name (Look Up the Number) [single b-side, 1970] [mono]

最後に1970年のシングル「レット・イット・ビー」のB面曲。録音はこの時期。トラック16が編集前のバージョンらしい。

The Beatles (White Album) +29

ザ・ビートルズ(紙ジャケット仕様)

ザ・ビートルズ(紙ジャケット仕様)

これはシンプル。同じセッションから2枚組のアルバムと1枚のシングルがリリースされているので、シングルのA、B面をそれぞれアルバムの1、2枚目の最後にボーナストラックとして追加。

disc 1

  • 18. Hey Jude [single a-side, 1968] (Past Mastersより)

disc 2

  • 14. Revolution [single b-side, 1968] (Past Mastersより)

disc 3

  • Anthology 3の1枚目

27トラックすべてがこのセッションからの未発表音源。

アンソロジー 3

アンソロジー 3

Get Back +13

さあ問題のゲット・バック・セッションですが、いろいろ悩んで『レット・イット・ビー』とは別モノということにしました。ビーチボーイズの「スマイル」と「スマイリー・スマイル」というか、ちょっと違うか。

Past Mastersより

  • 1. Get Back [single a-side, 1969]
  • 2. Don't Let Me Down [single b-side, 1969]

このシングルさえリリースされていなければ、すべて『レット・イット・ビー』の未発表音源としちゃってもいいのかもしれないけど、リアルタイムでセッションの成果がリリースされている以上、なんか考えないといけないかなと。

パスト・マスターズ(紙ジャケット仕様)

パスト・マスターズ(紙ジャケット仕様)

Anthology 3より

いうことで、シングルのボーナストラックに、同セッションの音源を12曲。

  • 3. She Came in Through the Bathroom Window [rehearsal] [1969-01-22]
  • 4. Dig a Pony [1969-01-22]
  • 5. I've Got a Feeling [1969-01-24]
  • 6. Two of Us [1969-01-24]
  • 7. For You Blue [1969-01-25]
  • 8. Let It Be [1969-01-25]
  • 9. medley: Rip It Up / Shake, Rattle and Roll / Blue Suede Shoes [1969-01-26]
  • 10. The Long and Winding Road [original Glyn Johns mix] [1969-01-26]
  • 11. Oh! Darling [1969-01-27]
  • 12. Teddy Boy [1969-01-28]
  • 13. Mailman, Bring Me No More Blues [1969-01-29]
  • 14. Get Back [1969-01-30 on the Rooftop]

再びPast Mastersより

  • 15. Let It Be [single, 1970] (Past Mastersより)

シングルの「レット・イット・ビー」はアルバムと一緒にしてもよかったんだけど、今回は録音時期にあわせてこちらにいれた。

Abbey Road +11

アビイ・ロード(紙ジャケット仕様)

アビイ・ロード(紙ジャケット仕様)

怒涛のメドレーで終わる『アビーロード』もオリジナルの雰囲気を壊さないよう、1枚目はオリジナルで。

ボーナスディスクは次の11曲入りに。

Past Mastersより

  • 1. The Ballad of John and Yoko [single a-side, 1969]
  • 2. Old Brown Shoe [single b-side, 1969]

同アルバムの収録曲は2月から録音されているけど、本格的なセッションは7月から。その直前にレコーディングされたシングル。

Anthology 3より

そしてその時期の未発表音源を9曲。

  • 3. Old Brown Shoe [demo]
  • 4. Octopus's Garden [takes 2 & 8]
  • 5. Maxwell's Silver Hammer [take 5]
  • 6. Something [demo] [mono]
  • 7. Come Together [take 1]
  • 8. Come and Get It [demo]
  • 9. Ain't She Sweet [jam]
  • 10. Because [a cappella]
  • 11. The End [remix]

Let It Be +1

レット・イット・ビー(紙ジャケット仕様)

レット・イット・ビー(紙ジャケット仕様)

最後の『レット・イット・ビー』はフィル・スペクターが手がけたということでこのままに。

ボーナストラックを追加するなら、1970年に入って録音されたこの1曲。

  • 14. I Me Mine [take 16] [1970-01-03] (Anthology 3より)

ということでこれは「デラックス」ではなかったけど、言うほど「ネイキッド」ではないこれがまるまる追加ディスクみたいなものかもしれない。

余談 The Beatles Bootleg Recordings シリーズ?

ビートルズの未発表音源といえば、昨年末突如として『The Beatles Bootleg Recordings 1963』と題した59曲がiTunesストアだけで販売開始された。EUで著作権保護期間が切れてしまうことへの対策らしい。

ビートルズのアウトテイク集『The Beatles Bootleg Recordings 1963』がiTunesにて配信開始 - amass

ということは、同じ理屈で年内に『The Beatles Bootleg Recordings 1964』がリリースされてしかるべきともおもえるのですが、実際のところどうなんでしょう?

そして、もし順にリリースされていくなら、2019年には「ゲット・バック」セッションの全音源が公式リリースされることになるのでしょうか? 興味深いです。

iTunes - ミュージック - ビートルズ「The Beatles Bootleg Recordings 1963」

バイラルメディアの炎上からおもうことは「Webディレクターのための編集入門」というドキュメントがあったほうがいいんだろうなということ

2014年をふりかえって、Web界隈では「バイラルメディア」って言葉をよく聞いた。

しかも、年頭はまだ「海外で話題の新しいメディア形態」というポジティブな扱いだったきがするんだけど、雨後のタケノコのように国産バイラルメディアが登場して、そのいくつかがパクり記事やデマ記事を拡散・炎上して「バイラルメディアはゴミか?」という評価にまで急降下するというアクロバティックな展開には、個人的に流行語Web大賞あげてもいいくらいなんじゃないかとおもう。

こういったバイラルメディアのパクりやデマ記事の問題は、おそらくだけどそれぞれの媒体にちゃんとした編集者がいないのか、いたとしても何らかの理由でちゃんと機能していないのが原因だろうなと思っている。いや、とくに編集者という職務じゃなくてもいいのだけど、ようは「編集」という作業がされていないってことなんだろうとおもう。

そもそも「編集という作業」といま何気なく書いたけど、実のところ読んでいるみなさんがそれでどういう「作業」を思い浮かべているのかよくわからないし、統一されたイメージはきっとないんだろうな、という気がしている。実際のところ、編集者って仕事は、よくある職業のわりに、やってることはブラックボックスというか、ある業界に閉じているようにおもう。ある業界っていうか、出版なんだけど。

文章を直したり、見出しを付けたりって仕事がそうだと思っているひともあるだろう。

以前に、バイラルメディアについてのパネルディスカッションで、あるキュレーションメディアを運営しているひとが、ライターが増えてきたので彼らを組織して進捗を管理するために経験ある編集者を雇った、というようなことを言ってたけど、そういう側面もあるだろう。

同じように「バイラルメディアには編集者は不要だ?」という議論も、そのセミナーではされていたようにおもう。

編集者が必要か不要かは別として、ひとつ間違いない事実は、「メディア」という種類のWebサイトを運営するのであれば、そこに「編集」という業務は必ずついて回るということだ。

それは、Webサイトを作る際に、デザイナーはいないかもしれないけど誰かはデザインをしなくてはいけないように、プログラマーがいなくても、ソーシャルメディア連携をやるためにスクリプトを書いたり誰かがしなくてはいけないように、メディアを運営するならば、そこに記事があるならば、記事の掲載に際してなんらかの判断をする必要があって、それは「編集」という仕事なのだ。

だから、バイラルメディアにだって、編集者は不要なのかもしれないけど(雇う予算がないとか?)、編集という業務を担当する誰か、は必ず必要になる。そして、往々にしてスタートアップでは、Webディレクターがいろいろな職を兼任しなければならないことがあり、だから、そういう職業のひとのために、別に編集なんてやりたくもなんともなかったんだけど、やらざるを得なくなったひとのための「編集入門」というドキュメントが必要なんだろうな、とおもった。

で、この原稿は最初、そういう人が読むべき「編集の入門書」を5冊紹介します! みたいな、ありがちなライフハック系の記事として公開するつもりだった。なんだけど、いろいろ探してみても、どうやら、そういうドキュメントは無いらしいということに気がついた。

いや、あるよ! というひとはぜひコメントやブックマークコメントで、不肖ワタクシにご指摘いただけるとほんとに助かります。

たしかに、ちょっと「編集」でAmazonなりを検索すれば、たくさんの本が出てくる。でも、だいたいそういう本は、これまで編集者が対象としてきた「雑誌」や「書籍」といった媒体に、物理的にも業界構造的にもものすごく依存した書かれ方をしていて、Webディレクターに読ませるのに、校正記号の使い方とか載っててもなーとか、ゴシップを取材するときの心得とかあってもなーとか、「何にでも興味を持つことです」みたいな漠然とした精神論を語られてもなーというかんじになってしまう。

そもそも、編集者や元編集者が書く編集の本は、やっぱりカッコつけているというか、編集という仕事はかっこよくて素晴らしくてクリエイティブなんだぜ、っていうことをアピールしまくっている、意識が高いものになりがちなんだけど、いま必要とされているのは、もっともっと泥臭いドキュメントなんだとおもう。

つまり、バイラルメディアとかが扱う領域は、ご存知のように真偽も作者も不明なコンテンツをドヤドヤっと紹介してバズらせて広告でマネタイズしようみたいな鉄火場で、そこにあるのは、なんとかしてただのデマ記事やらパクり記事やらではなく、いちおうは紹介記事であってウソは書いてない体裁を整えて、記事としての質さえ問わなければ問題はないという形で公開するという最低のラインが求められているはずである。

そんなことは誰だってできるだろう、という気もするんだけど、いや実際のところ誰にもはできなかった、というのがこの2014年のいくつかの炎上から学べることであって、そもそも「記事の体裁を整える」といえるために最低限なにをしないといけないのか、という基本中の基本について、改めて考えなければならないのではないかと思った。

自分をふりかえってみると、編集という仕事をどうやって覚えたのかというと、ほぼOJTであって、先輩編集者について見よう見まねでやってみて、ダメ出しされて、やり直して、怒られて、学習して、という繰り返しだったようにおもう。編集者という職種は、意外にも未だに広範囲にわたって、徒弟制なのだとおもう。

編集という職業が、参入の難しい「出版」という業界に閉じているうちは、それでもよかった。しかし、いまや、昨日までWeb広告の営業をしてました、というような若手社員が提出した事業案が認められてスモールスタートでメディアが立ち上がったりってことが普通にあちこちでありそうなご時世になってしまっている。

出版が好きだったり、もともと編集者になりたかったりする人なら、なんらか自分で教科書見つけるだろう。そうでなく、ふつうに個人ブロガーとかWebディレクターに編集の職務が課せられる時代であるにもかかわらず、そこで読まれるべきテキストは何もない。

凄い編集者になるためにではなくて、普通にやっておかないといけないことが意外と共有されてないのではないか、「編集」っていう仕事を編集職じゃないひとに説明しようとしているのに、説明する言葉がないのではないか、ということに気がついて愕然としていたら年の瀬を迎えていたというキツネにつつまれたような気分です(意図した誤用)。

Webメディアの状況を見るにつけ、編集を職業にしてきた人が学んできた暗黙知の固まりの中から「記事を出稿するひと」ならばマスターしておかなればいけない知見を抽出して、一般に広く共有できるようにしておかないと、編集って職種が持ってたなにか(それがもしあるとしたらだが)が、なしくずしてきにロストしてしまうのだろうなとおもう。

で、まあ、こんだけ書くヒマがあるなら、お前やれよ、っておもった人もけっこういるかもしれないけど、逆にそういう危機感を共有している編集職のひととか、そういうドキュメントあったら読みたいっていうWebディレクターの人っているんかなあ? という疑問もあって、あまり人と共有できそうもない問題意識なので、とりあえず問題意識だけ共有してみる。

というか、実際にそういう文書、書こうとすると、体で覚えてることを言語化するみたいな作業になって、ほんと「あれ? オレ、どうやって編集してんだっけ?」みたいになって、それはそれで困っている。ただの老害っぽい。

たのしい編集 本づくりの基礎技術─編集、DTP、校正、装幀

たのしい編集 本づくりの基礎技術─編集、DTP、校正、装幀

もしもビートルズのアルバムが『プリーズ・プリーズ・ミー +5』みたいな形でCD再発されていたら?

ここのところビートルズをまとめて聴く機会があって、さすがビートルズだなと感心したのは、アルバム未収録曲や未発表曲がアルバムそのものとは別にまとめられているということ。これが正規の作品の正式なリリースである、という形が決められてて、ずっとそのスタイルに従って再発が続けられている。

ふつうはCD再発となると未発表音源がボーナストラックで追加されて、それも再発のたびに増えて、xx周年記念盤やら「デラックス・エディション」やらとなると追加トラックのほうが多いなんてこともある。La'sとかね。

ビートルズと同時期に活躍したキンクスだってこんなかんじだったりする。

とはいえ、これにはこれでよいところがあって、同じ曲のバージョン違いを聴き比べるのにCDを入れ替えなくて済む。なにより、同じセッションで収録されたアルバム未収録シングルやB面曲はまとめて聴いたほうが、そのころグループがどういう方向性だったのかがわかりやすい。

ということで、いまならPCに取り込んで勝手にプレイリストを作ってしまえば年代順に並べられるわけだから、作ってみました『プリーズ・プリーズ・ミー +5』をはじめとする、ボーナストラック付きのビートルズのアルバムを。

ただし、1966年までですが、どうぞ!

■ Please Please Me +5

1963年にリリースされたビートルズのファーストアルバム。1962年中に録音された2枚の既発シングルAB面4曲を除き、すべて2月11日のわずか1日で10曲が録音されている。

追加トラックのない正規のスタイルのアルバムはこちらのCDで聴ける(紙ジャケ再発ってちょっと前に出てなかったっけ?)

プリーズ・プリーズ・ミー(紙ジャケット仕様)

プリーズ・プリーズ・ミー(紙ジャケット仕様)

これにどういうトラックを追加すればいいか、アルバム未収録曲を集めた『パストマスターズ』と、未発表のアウトテイクなどを集めた「アンソロジー」シリーズからピックアップしてみる。

アルバム用レコーディングからのアウトテイクはなくて、先行するシングルおよびオーディションのための3回のレコーディングから、次の計5曲がボーナストラックだ。デビューシングルの「ラブ・ミー・ドゥ」が計3テイク、それぞれ録音日とドラマー違いで聴き比べられる。

Past Masters より

アルバムには、プロデューサーのジョージ・マーティンが立てたセッションドラマーのアンディ・ホワイトが参加した9月11日の録音が収録されているが、その1周間前、正規のドラマーであるリンゴ・スターが参加した録音。シングルのファーストプレスのみに使用され、マスターは破棄されたとされる。

Anthology 1 より

  • 16. Besame Mucho [with Pete Best] [mono]
  • 17. Love Me Do [with Pete Best] [mono]
  • 18. How Do You Do It [with Ringo Starr] [mono]
  • 19. Please Please Me [with Andy White] [mono]

シングル録音の3か月前、ビートルズは1962年6月6日にアビーロードでの最初の録音を、オーディションとして行った。ドラマーはこの直後に解雇されてリンゴに交代させられるピート・ベスト。16と17がピートにとっては最後の録音ともなった。

18は、9月4日のアウトテイク。19は、11月26日にセカンドシングルとして再録音される。

■ With the Beatles +8

デビューアルバムの成功をうけて1963年後半に制作、販売されたセカンド。

ウィズ・ザ・ビートルズ(紙ジャケット仕様)

ウィズ・ザ・ビートルズ(紙ジャケット仕様)

最近のCDとは違い、アナログ・レコードの時代には先行するシングルがあってもアルバムは別物として再収録しないことがよくあった。このアルバムでも、ボーナストラックはそういったアルバム未収録シングルが中心となる。

Past Masters より

  • 15. From Me to You [single, 1963 A-side]
  • 16. Thank You Girl [single, 1963 B-side]
  • 17. She Loves You [single, 1963 A-side]
  • 18. I'll Get You [single, 1963 B-side]
  • 19. I Want to Hold Your Hand [single, 1963 A-side]
  • 20. This Boy [single, 1963 B-side]

「フロム・ミー・トゥ・ユー」は3月、「シー・ラブズ・ユー」は7月、「抱きしめたい」は10月のレコーディングで、すべてAB面が同日に1日で録音されている。

Anthology 1 より

  • 21. One After 909 [sequence] [mono]
  • 22. One After 909 [outtake] [mono]

「フロム・ミー・トゥ・ユー」セッションのアウトテイクで、後にゲット・バック・セッションで再び取り上げられ『レット・イット・ビー』に収録される。

■ A Hard Day's Night +12

1964年に録音、発売された3枚目のアルバム。前半(A面)は同タイトルの初主演映画『ビートルズがやって来るヤァ!ヤァ!ヤァ!』のサントラ。

ハード・デイズ・ナイト(紙ジャケット仕様)

ハード・デイズ・ナイト(紙ジャケット仕様)

Past Masters より

  • 14. Komm, Gib Mir Deine Hand (I Want to Hold Your Hand) [Deutsche]
  • 15. Sie Leibt Dich (She Loves You) [Deutsche]
  • 16. Long Tall Sally [EP, 1964] (Little Richard cover)
  • 17. I Call Your Name [EP, 1964]
  • 18. Slow Down [EP, 1964] (Larry Williams cover)
  • 19. Matchbox [EP, 1964] (Carl Perkins cover)

14と15は、パリ滞在中の1月29日に録音されたドイツ語盤。同日にシングル「キャント・バイ・ミー・ラヴ」も録音されている。16からの4曲は、アルバムの前にリリースされたオリジナルEP収録曲。

Anthology 1 より

  • 20. Can't Buy Me Love [takes 1 & 2]
  • 21. You Can't Do That [take 6]
  • 22. And I Love Her [take 2]
  • 23. A Hard Day's Night [take 1]
  • 24. I'll Be Back [take 2]
  • 25. I'll Be Back [take 3]

すべてアルバム収録曲のテイク違い。

Beatles for Sale +10

1964年のクリスマスシーズンにリリースされた4枚目。シングル曲は収録されていない。

ビートルズ・フォー・セール(紙ジャケット仕様)

ビートルズ・フォー・セール(紙ジャケット仕様)

Past Masters より

  • 15. I Feel Fine [single, 1964 A-side]
  • 16. She's a Woman [single, 1964 B-side]

アルバムに先行してリリースされたシングルのAB面。

Anthology 1 より

  • 17. You Know What to Do [demo]
  • 18. No Reply [demo]
  • 19. Mr. Moonlight [take 1 & 4]
  • 20. Leave My Kitten Alone [take 5]
  • 21. No Reply [take 2]
  • 22. Eight Days a Week [false starts]
  • 23. Eight Days a Week [take 5]
  • 24. Kansas City / Hey-Hey-Hey-Hey! [take 2]

アルバム収録曲のデモおよびアウトテイク。デモは、先のアルバムの録音が終了した数日後に早くもレコーディングされている。

■ Help! +10

1965年8月リリースの5枚目。A面は同タイトルの主演映画『4人はアイドル』のサントラ。

ヘルプ!(紙ジャケット仕様)

ヘルプ!(紙ジャケット仕様)

Past Masters より

  • 15. Bad Boy [US album, 1965] (Larry Williams cover)
  • 16. Yes It Is [single, 1965 B-side]
  • 17. I'm Down [single, 1965 B-side]

16はシングル「涙の乗車券」の、17は「ヘルプ!」のB面曲。こういうカップリング曲を合わせて聞けるのがボーナストラックの醍醐味だろう。15は米国盤アルバム『Beatles VI』に収録された。

Anthology 2 より

  • 18. Yes It Is [takes 2 & 14]
  • 19. I'm Down [take 1]
  • 20. You've Got to Hide Your Love Away [takes 1, 2 & 5] [mono]
  • 21. If You've Got Trouble [take 1]
  • 22. That Means a Lot [take 1]
  • 23. Yesterday [take 1]
  • 24. It's Only Love [takes 2 &3]

アルバムおよびシングルのアウトテイク。

■ Rubber Soul +5

1965年のクリスマスシーズンにリリースされた6枚目のアルバム。シタールを取り入れるなど、音楽的な変化が現れはじめたレコードとして知られるが、ほとんどの曲が10月半ばの短い期間に集中して録音されたためか、ボーナストラックは少ない。

ラバー・ソウル(紙ジャケット仕様)

ラバー・ソウル(紙ジャケット仕様)

Past Masters より

  • 15. Day Tripper [single, 1965]
  • 16. We Can Work It Out [single, 1965]

アルバムと同セッションの録音だが、アルバムには未収録の両A面シングル。「デイ・トリッパー」は「ノルウェーの森」と同時期の曲というのがわかるのがなんとなく嬉しい。

Anthology 2 より

  • 17. Norwegian Wood (This Bird Has Flown) [take 1]
  • 18. I'm Looking Through You [take 1]
  • 19. 12-Bar Original [edited Take 2]

17と18はアルバムのアウトテイク。19は完全未発表のインスト曲。

■ Revolver +9

1966年録音、リリースの7枚目。ビートルズがライブ活動を止めた年でもある。2年後に映画タイトル曲となる「イエロー・サブマリン」が収録されている。

リボルバー(紙ジャケット仕様)

リボルバー(紙ジャケット仕様)

Past Masters より

  • 15. Paperback Writer [single, 1966 A-side]
  • 16. Rain [single, 1966 B-side]

こちらも同時期録音ながらアルバム未収録のシングル。「ペイパーバック・ライター」は「トゥモロー・ネバー・ノウズ」と同時期。

Anthology 2 より

  • 17. Tomorrow Never Knows [take 1]
  • 18. Got to Get You into My Life [take 5] [mono]
  • 19. And Your Bird Can Sing [take 2]
  • 20. Taxman [take 11]
  • 21. Eleanor Rigby [take 14] [strings only]
  • 22. I'm Only Sleeping [rehearsal]
  • 23. I'm Only Sleeping [take 1]

アルバムからのアウトテイク。

最後に

この記事で挙げたアルバム未収録曲は『パストマスターズ』から。

パスト・マスターズ(紙ジャケット仕様)

パスト・マスターズ(紙ジャケット仕様)

未発表曲は『アンソロジー1』と『アンソロジー2』に収録されていたもの。

アンソロジー 1

アンソロジー 1

アンソロジー 2

アンソロジー 2

アンソロジーには上記のほかデビュー前の音源や、デビュー後のライブ音源なども含まれていて、ライブのみを集めるとちょうどCD 1枚分に収まってこれもいいかんじ。

以上、ただまとめてみただけの記事ですが、アルバム単位ではなく録音時期でくくって聴いてみるもの普段とはまた違った趣がありました。もっとも、こういう本も出てることだし、ファンの方なら言われるまでもなくやってることではあるんでしょうが……。

ザ・ビートルズ レコーディング・セッションズ完全版

ザ・ビートルズ レコーディング・セッションズ完全版

「ストロベリー・フィールズ・フォーエヴァー / ペニー・レイン」以降の自由すぎるビートルズの「デラックス・エディション」については、みなさんもよかったら考えてみてください。